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オットー・フォン・ハイデッカーはゲーム脳。  作者: 王石 勉
第一章.チュートリアル
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6.初めての戦闘

何故かマイヤー先生が暇請いを出してきた。

質問内容が経済活動や政治に成ってきた為に教えることが出来なくなったとの申し出だ。

未だ早いがもう教えることは無いらしい。

「マイヤー先生ありがとうございました。このオットー。先生から学んだコトを決して忘れません。」

ごつくなった両手でマイヤー先生の華奢な手を握る。

あの見上げていたマイヤー先生が随分と小さくなった。

「オットー質問に答えてあげられなくてごめんなさい。でも、あまり周りのみんなを心配させるようなコトはしないで。」

「解かりました。このオットー、皆を守る為にこの鍛えた体を使います。」

自分の胸を拳で力強く叩く。

ドスンと言う低い音が部屋に響く。

何故か皆ビビッている。

みんな細いな。それでは戦争で生き残れないぞ?

マイヤー先生が居なくなった後。

親父に魔法の使える家庭教師を探してくれと頼んだがあまり乗り気ではない様子だ。



久しぶりに帰って来た上の兄貴が驚いていた。

「オットーでかくなったな…。」

「はっ、兄上達の活躍に負けないように体を鍛えたのです。」

拳を見せる。驚く兄。

「オットー将来、何になるつもりだ?」

「はい!魔法使いです。」

「いや、魔法使いは身体を鍛える必要は無いだろ?」

「心技一体これが魔法の基礎です。」

「そうなのか?オットー。」

「はい、しかし本のみの学習では魔法の何たるかは解かりません。早く魔法学校に上がれる歳に成りたいです。」

「ああ、そうか。父上に話しておこう。」

「ありがとうございます。兄上、ときに帝国の動向はどうなっているのでしょうか?」

帝国の状態はついに今の皇帝に健康問題が出て国内の貴族の間で暗殺や謀略が渦巻いているらしい。

兄貴は多くは言わなかったが帝国内のハト派(親王国派)の貴族は苦境らしい。

どうやらタカ派(外征組)の貴族が押す皇太子が即位する様子だ。

やはり、帝国は数年以内に攻めて来る様だ。

まさにゲームだな。


ついに親父が森に入るコトを許可してくれた。

親父が手配した猟師2人と共に森に入る。

この日の為に用意したマシェットとボウナイフ。

水筒と弓も在る。

「ぼっちゃん準備はよろしいのですか?」

年配の猟師が毛皮の帽子を取り頭を下げた。バーンと言う男だ。

「ああ、今日はよろしく頼む。」

若い男も頭を下げる。タッポだったかな?

「犬もゲームマスターも無しなんですが本当に大丈夫ですかい?」

犬は獲物を追い立てる為、ゲームマスターは猟の全体をコントロールする人で獲物を放す場合もある。

主に貴族が猟を楽しむ為に狩猟ゲーム猟師頭マスターのコトだ。

まあ、釣堀の接待釣みたいなものだ。

「ああ、要らない。今日はフィールドを歩き回って地形を確認する。まあ、獲物が居れば御の字だ。」

「はいわかりました、大丈夫ですか?かなり足元が悪くなりますが。」

「ああ、問題ない、出来れば足跡の読み方も教えてくれ。喰える木の実もな。」

「はあ、よろしいですけど…。」

「まあ、気にするな。喰いっぱぐれたら山に篭る。その時の練習だ。はっはっはっ。」

笑ってごまかす。

「では行きましょう、ぼっちゃんは付いてきて下さい。」

「おう、任せろ。」

猟師二人について歩く。

時々止まって物音を聞き森を進む。

道なき道だ。

「ぼっちゃんコレが鹿の足跡です。親一匹に子供が3匹です。たぶん一昨日の晩のモノです。」

「なるほど(わからん)」

「ぼっちゃんコレが食べれる木の実で、こっちが食べると腹を下す木の実です。」

「ほうほう、違いが解からんな。(サーチ)」

「かじって酸っぱいのが食べられるほうです。」

「美味くないのか?」

「はい、唾で喉を潤す以外にあまり食べません。」

すばらしい。どんどんMAPが埋まっていく。

あ、また木の実ゲット。

「ぼっちゃんこういう木が無い平地のくぼみは大概湿地ですから気をつけて下さい。季節によっては池になったり。草が生い茂っている場合もあります。」

「なるほど。」

「こういう場所の水は飲めません。沸かしてもダメな時も在ります。」

「そういうものか。」

「はい、基本的に山では沢、森では泉と川の水しか飲めません。ソレも沸かした方が良いです。水溜りや木の洞の水は絶対飲んではいけません毒です。」

「なるほろ(ぼりぼり)スッパー。」

いろいろ歩き回った。

狩猟がメインでなく森の散策がメインになった。

途中の泉と危険な場所を教えてもらった。

森のMAPは1/5ぐらいだな。(ぼりぼり)

「むっ!!」

茂みの向こうに何か居る。

MAPに反応が出た。

無言で若い猟師に方向を示す。

「…。」

流石本職、弓を構えて音を立てずに移動する。

確認したらしい。コチラに目線で合図、コチラも頷く。(もちろん何の意味か解からない。)

音も無く弓を引き絞り。

放つ。

茂みの向うで何かが暴れる音がする。

結構大型だ。

次の弓を構える猟師。

しかし、構えを止める。

「ぼっちゃん。鹿です、若いヤツですが良く解かりましたね。」

「ああ、気配がな。」

「おい、タッポ!!お前が討ったらイカンだろぼっちゃんの獲物を!!」

「ああ、仕方ない、場所が悪かった。弓を構えるチャンスが無かったんだ、こういう時もある。しかし肉は分けてくれるのだろ?」

「もちろんです。」

親方が答える。

さすが本職、一発で矢が心臓と肺を貫いている。

俺が討っても半矢になるだろう。

矢負いのケダモノが森を歩くのはかわいそうだからな。

イケブクロと言う場所では溢れているらしい、痛々しい話だ。

「まあ、なんにしても手ぶらで帰ったと言うコトは無くなった。コレで面目は立つ。」

笑顔の猟師たち。

「さあ、処理します。あちらでお休み下さい。」

「解体のしかたも教えてくれ。ああ、見ているダケだがな。今は肉が惜しい。」

「あの、取ったばかりでは血と腸を抜くだけです。解体は小屋に帰ってからになります。」

タッポが教えてくれる。

「なるほど。そういうモノか…。」

「まあ、現場で解体する者もありますが。この大きさだと持ち帰った方が皮も綺麗に肉も多く取れます。」

「では、処理の方法を教えてくれ。」

死んだ新鮮な鹿が木に吊るされている。

つぶらな瞳がコチラを見ている。

「一歳ぐらいのオスの鹿ですね、角の大きさで解かります。」

「う~んナイフのグリップになるか?」

「小型のナイフなら使えると思います。そのまま削ってペーパーナイフにしても良いかもしれません。」

テキパキと猟師が血ヌキと内臓を抜いている。

「たぶんこの色のレバーなら火を通して食べれると思います。食べれないレバーは艶が無くまだら模様や白い斑点があります。」

なるほど肝炎か寄生虫か。

大事に油紙に包んでいる年配の猟師。

「ココは食べれないのか?」

横隔膜を指差す。

「ああ、その幕は固くて食べられません。かなり煮込むと食べれれるのですが。」

あまり美味くないらしい。

圧力鍋が有れば筋肉の煮込みみたいになるのだが…。


処理も終わったので木の幹に両足を縛り猟師二人で担ぐ。

手伝おうかと言ったが。滅相も無い。と固辞された。

いい鍛錬になりそうなんだが…。

町に向かう。

皆、笑いながら森を進む。

MAPに光点が浮かぶ。2、3…。5匹だ。

前方に3後方に2、囲まれた。

なんだ。鹿より小さい。

皮手袋の感触を確かめ腕を上げて合図する。

猟師二人は驚いて鹿を下ろす。

「前に3後ろに2だ。」

「ぼっちゃん。ココは我々で。逃げてください。」

「先回りできるのだ、逃げ切れない。」

「五匹ならたぶん狼です囲まれたら終わりです。」

「なるほど。肉は喰えないが皮が取れるな。」

「ぼっちゃんに何か有ったら我々は。」

MAPの光点が動いた。叫ぶ。

「来るぞ!!タッポ!!弓を使え!!」

タッポが後ろに向かって弓を討つ。

バーンはあわてて前に弓を構える。

俺は左手の袖にナイフの柄を入れてナイフを抜いて構える。

即席の盾だ、もちろん気休めにしかならない。

後ろでケダモノの叫び声がするタッポが当てたらしい。

バーンの弓が放たれるが狼が避けた。

良いぞ。タイミングがズレた。

先頭の狼が口を開け俺の喉に向かって飛び上がって来た。

左手の拳で狼の口の中を殴る。

狼は口を閉じて対抗するが喉ががら空きだ。

右手のナイフで喉を刺し切る。

まずは一匹。

隙を突いて二匹同時に攻撃してきた。

未だ放さない左手の狼を振り回しけん制する。

後ろにはのたうち回っている狼一匹。

タッポとバーンは山刃を抜いて残り一匹で手一杯だ。

左手装備の狼の重さに芯がずれる。

ソレも見逃さない狼は続けざまに懐に飛び込もうとする。

「くっ!!」

頭を出した狼を蹴り上げる。

負け犬の様に鳴きながら転がる狼。

続けて飛び込んできた狼にナイフを投げた。

身を捩り回避する狼。

左手装備の狼が解除された。どうやらやっと力尽きたらしい。

マシェットを抜き狼に向き直る。

後ろでも負け犬の断末魔。

さあ、どうする?

一匹狼が突進してくるがマシェット一閃で片付ける。

蹴り上げた狼が居ない。逃亡した様子だ。

「大丈夫ですかぼっちゃん!!」

「ああ、大丈夫だ、皮手袋のおかげで擦り傷も無い。それからぼっちゃんは止めてくれ。」

「スゴイ!!灰色狼を一人で三匹も相手にするなんて。」

「ありがとうタッポ。お前の一撃で随分楽になった。」

タッポと握手する。

アゴをさすりながら答えるバーン。

灰色狼グレイウルフが倒せれば猟師一人前なんですがねえ。」

「そうなのか?」

ナイフを拾う。

「ええ、猟師は始めて倒したグレイウルフで帽子を作るんです。その後はベストですかね。」

「そうか、一匹逃げたから俺は2匹か…。俺のベストには足りないな。」

「差し出しますが?」

神妙に答えるタッポ。

「だめだ、だめだ、俺の腹ではベストを作るのに4匹では足りないぞ?」

腹を叩いて音を出す。低い。森に響く音だ。

猟師の笑い声が森に響く。

鹿と狼4匹を持って猟師小屋に向かう。

解体を見学して。

皮を剥ぎ取るのも教えてもらう。

丁度、猟師二人で倒した狼はズタズタだったので俺の練習台になった。

あまり喋らないと思っていたタッポは随分と饒舌になった。

タッポが弓で倒した狼は帽子に加工するらしい。

「コレでボクも一人前の猟師です。」

弓は上手いのにソレだけではいけないのが猟師の世界らしい。

ついでに俺が倒した狼も帽子に加工してもらうことにした。

出来たら屋敷に届けてくれるらしい。


日が傾き始めたので肉を貰って別れた。

「オットー様。コレもお持ち帰り下さい。」

バーンが渡したのは鹿の角だった。若い鹿の枝分かれの無い角2本。

「良いのか?」

「ハンティングトロフィーにお使い下さい。」

猟師小屋の中には立派な角が壁に並んでいる。

「そうか。遠慮なく貰っておく。」

意気揚々と屋敷に戦利品を持って帰った。

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― 新着の感想 ―
肉体言語だけで和解できるとはな!
[良い点] 久しぶりになるひと編を読もうとしたら、内容を全て忘れていました(汗) おさらいの為に2週目に突入。 凄い面白い作品なのは覚えてます
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