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55.サングレア

「では肉料理からです。皿が熱くなっていますのでご注意下さい。」

全員の全ての皿が揃った。

陶器のスキレット鍋の中は赤い、オイルが分離して沸騰している。

スキレットの下の木の受け皿が焦げているのでかなり熱いようだ。

トマトの赤さと煮立ったオイル。その中に具である鹿の心臓&頬肉のスライスが見えている。

付属の木の皿にはパンが3つと小さいココットの中にルピア色のパテが一つ、ハーブが乗りバターナイフが添えてある。

他の皿はパンが2つなので大盛りだけパンも増量なのかもしれない。

パンが丸くなく平たい円形で白い。そして焦げ目が付いて焼き立てだ。

何も乗っていないピザか円形のナンみたいだ。ピタパンかもしれない。

魚は定番の白身の天ぷらに赤いソースと乾燥ハーブ。イモの素揚げが添えてある。

そしてボウルに山盛り刻みキャベツ酢漬け、トングが刺さっている。

自分で欲しいだけ取ればいいのか?

「えーっと。」

「変わったパンだな。」

「焼きたてだぞ。」

「へえ、旨そうじゃないか。」

「おい、グラスよこせ。」

率先してグラスにワイン、いや、サングレアの水割りを注いで廻す。

皆に行き渡る。

「おい、ロビン、お前が音頭を取れ。お前がセレブだ。」

コイツが店を選んだのだから面倒は押し付ける。

「え、あ、ハイでは私。ロビン・シュタイナーが音頭を取らせて頂きます。豊穣の女神ディアナに感謝を。」

皆が黙祷を捧げるが俺は疑問に思う。

何で農薬?

よし、食べよう。

フェルッポはイキナリ酒(的なモノ)を呑む。

マルコはトングでゴッソリキャベツを掴み皿に盛る。

肉食男子乳タイプ兄弟はイキナリ、スキレットから肉をフォークで刺し口に入れている。

熱いだろ?未だ?

ほら、言わんこっちゃ無い。悶絶し始めた。

俺はパンをむしって。スキレットの油に突っ込む。

油を吸ったヌラヌラしたパンを口に運ぶ。

うん、麦(炭水化物)と油はサイコー!!

「なにか。血生臭いな」

「そうか?マルコこんなものだぞ?」

肉食男子カールが答える。

「ふん、まあまあ新鮮な鹿だ。たぶん雄だな。」

うん、臭みが少し有るが血だけの物は無い。

「オットーも解かるのか?」

ジョンが聞いてくる。

「俺は肉が喰いたくて自分で獲ってたからな。」

「へー、オットーはハンティングするのかい?」

アレックスは白身の天ぷらの小骨と格闘している様子だ。

「まあまあだな。俺は弓の腕が悪くてな。」

「オットーに苦手なモノがあるなんて意外だ。」

フェルッポがパンにパテを塗りながら答える。魚が進んでないぞ?

「ああ、俺は弓が苦手だ。一緒に入っていた猟師が走るグレイウルフを一撃で急所に当てる腕だった。」

「ほう、スゴイな。」

「ソレはナカナカだ。」

心臓ハツに舌鼓を打つカールとジョン、どうやら狩猟は経験者のようだ。

動物の内臓に忌避感は無いらしい。

「いろいろ教えてもらったが、全く俺は追いつけなかった。精々、ナイフでグレイウルフを3匹同時に戦うダケだ。」

「いや、グレイウルフはムリだろ?」

「魔法でか?」

カールとジョンが驚いている。

「いや、ナイフと山刃で2匹やったが1匹逃げた」

あの森でグレイウルフの襲撃を受けたのは後にも先にもアレだけだった。

コチラから襲撃したコトは有った。圧勝だが。

黙ってお互いの顔を見合わせる乳タイプ兄弟。

マルコがパンを千切りながら尋ねた。

「内の家(領内)でもグレイウルフが街道に出たら大騒ぎなんだぞ?そんなに沢山居たのか?」

「ああ、身体を大きくするためには肉を食べる必要がある。親父に許可を貰って頻繁に猟師と森に入っていたんだ。流石に森の中では狼も熊も居るよ。」

家の食事に不満は無かったが、俺の死んだ母親が肉嫌いで母親に付いて来た料理人がソレに習っていたので結果、野菜中心の食事になっていたらしい。

もちろん親父は肉好きだったそうだが、仕事の先でも食べられるので文句は言わなかったそうだ。

まあ、猟に出るようになって随分後に聞かされた。

早く改善しろよと当時は思った。

「へー、グレイウルフか…見てみたいな。」

「弟よ。ソレは大概は死ぬ時に見る話だぞ。」

いやいや狼ぐらいで死ぬなよ。フェレッポのヤツ狼も好きなのか?

「フェレッポ、倒した狼は帽子に加工した、後で見せてやる。」

「え?やった!!」

「単独で狼が倒せる猟師か…。家は森が近いからなあ。狼には散々やられたよ。」

ジョンが呟く。

領主としては森に頻繁に猟に出ないと、熊や狼が溢れて人里に出るので定期的な山狩りや狩猟団を配置するのは義務の内だ。

「ああ、うちからも何度か人を出していたな。」

カールが昔を思い出した様子だ。

まあ、領地が隣りなら被害が飛び火するから切実なんだろう。

「まあ、森の中は実際危険だからな。俺も地形を調べてから猟をした。二人がかりだったが熊も倒した。」

俺が前衛で猟師のタッポが弓で後衛だったが。

「熊もか?信じられんな。いや悪く思わないでくれ。昔、小さい村が熊一匹で全滅したんだ。」

マルコが言う。

「魔法を当てれば木端微塵だぞ?まあ、肉や毛皮が必要だから魔法は使わなかったが。ああ、コレがその時の熊の爪だ。」

収納から熊の爪を取り出しマルコに渡す。

毛皮の肉もタッポに渡したから記念は爪しかない。

「コレが熊か…。」

「兄さん僕にも見せてよ。」

「おいおい、熊まで倒すのか?」

「ちょっと家の領内に遊びに来て欲しいぐらいだな。」

「僕も昔狩猟に出たコトは在るケド。キジしか取れなかったよ。」

場違いなコトを言うアレックス、お前の狩猟は放した動物を狩るゲームのほうだろ?

「臓物関係は猟師ぐらいしか食べれない。レバーも処理しないと臭い。ココの店は新鮮な肉を使っているんだな。」

「えっ、そうなんですか?」

シティーボーイのロビンがびっくりする。

「この、飲み物おいしい。」

少し顔が赤いフェルッポ。

「レバーパテ、意外においしいな。少し塩味がキツイが。」

ゴッソリ、パンにパテを盛っているアレックス。塗りすぎだ。もっと薄く塗れ。

「キャベツ酢漬け、ちょっと辛いな。」

「唐辛子が良く効いている。酒のつまみ用だな。」

食事が進み最後にお茶が出て終わった。

コッソリ、店員に金貨1枚を渡してお釣りを受け取る。

お席で精算方式らしい。

小銭ゲット。半銀貨と銀貨二枚と小銅貨数枚。

店を出る。

「おい、一人いくらだったんだ?」

ジョンが細かいところを気にする。

「ああ、俺の奢りだ。心配するな、意外に高く剣が売れたからな。」

「えー良いの?」

お酒が回って陽気なフェルッポ。そういえばパカパカ呑んでたなコイツ。

「弟よ飲みすぎだ。」

「まあ、実際旨かったからな。」

カールは気に入った様子だ。

「悪くなかった、また来てもいいな。」

アレックスは何時も悪くないだ…。

「まあ、ロビンはムリヤリ参加させたから賃金替わりだ。」

領民喰わせるのも貴族の仕事だ。

「あの、申し訳ありませんでした。」

どの申し訳か不明だが頷いておく。

「よっし!!次の店だ!!どこ?」

陽気なフェルッポ。

「ああ、地金屋だな。」

「あの、ハイデッカー様、地金屋はその…。治安の悪い町にありまして…。」

「大丈夫だ。ロビン望むところだ。チンピラ狩りだ。」

拳を見せる。

「おいおい、危ない所は止めてくれ。」

「そうだな。」

カール&ジョンは安全に気を使っている様子だ。

軍人ポイな。

「面白そうだね。」

何時も能天気なアレックス。

「兄さん見てみたい。」

「弟よ、危険な場所には行かないのが正解だ。」

二つに割れた半々だ。ロビンは案内なので数に入れない。

仕方が無いな。

「カール、ジョン、近くには女が買える店があるぞ。」(ボソッ)

「うむ、しかし、偵察は必要だな。」

「ああ、貴族は社会に精通しなければ。」

あっさり翻った。流石精通すべき男たちだ。

「ではロビン案内しろ。俺が先頭を行く。カール、ジョン後衛を詰めてくれ。アレックスとフェルッポがフラフラ誘われないように監視しろ。」

「「解かった!!」」

快い返事の乳兄弟。そんなに…。まあ、興味はあるよな。

「オットー。大丈夫なのか?」

心配性のマルコ。

「イザとなったらけんと魔法で制圧する。家でもやったからな。」(家臣相手に。)

「剣じゃないのか?」

「ソレだと死人が出る。大量にな。」

「あの、ハイデッカー様、穏便にお願いします。クセが有るだけで話せば分かる人達です。」

「ああ、そうだな(拳で)話をすれば大概は分かり合えるものだ。」

「オットーは頼りになるな。」

アレックスがマルコに言う。

「ああそうだな。」

マルコはコメカミを揉みながら答えた。

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