48.武器屋
ぞろぞろと男数人で町を歩く。
よし、尾行は居ない。
襲撃者もない。
安い店の武器屋に付くと。
収納から鋼の剣を4本出して肩に掛ける。
店内に入ると客は2、3人居た、皆冒険者の様子だ。
いや、一人だけ御夫人が包丁の前で真剣に悩んでいる。
店のカウンターで暇そうなガチムチノースリーブ親父がいる。
「へーここが武器屋か…」
アレックスが興味深そうに店内を見渡す。
「ああそうだ。安物で飾りが無くて使い潰しが出来る剣しか置いていない。」
「よう、学生、また冷やかしか?ひどい物言いだが一応高くて良い剣も置いて在るぞ。」
「誰にとって良い剣かが解からないが、金持ってるヤツで良い剣が必要なの居るか?」
「そういう客を連れて来いよ。サービスしてやるぜ。」
「聞いたコトは無いな。おう、買取を頼む。やってるんだろ?」
カウンターに剣を四本置く。
「どれどれ。ああ、この前買ったヤツか?もう打ち直したのか?」
「抜いてみろよ。」
「おい、こりゃあ。」
「鋼の剣だ、材質が違う、幾つか打ったヤツの中で拵が使えるヤツを組み合わせた。」
「なるほど。こりゃあ良い地金だ。お前が打ったのか?」
「まあな…。しかし皮細工は出来ないから鞘と外装を使いまわしてこのとおりだ。」
「まあ、確かにな。この鞘では高そうには見えないな。」
「どうだ?幾らで買い取る?冒険者ならコレくらいのモノには金を惜しまないだろ?」
「う~ん。1本。金貨10枚だな。」
「話にならんな。」
「おいおい。無名の鋼の剣だぞ。そんなモンに金貨10枚出すヤツはそういないぜ。」
「王都だから羽振りの良いのも居るだろう。そういうヤツで解かるヤツに売りつけろ。」
「おい、俺に売ってくれよ。」
カールが横槍を入れる。
「カール。お前にはもっと良いヤツが打てたらやるからしばらく我慢しろ。」
エンチャント付きの魔法剣をつくってやるからな。
「オットー本当か?」
「俺にも打ってくれよ!!」
「ジョン。俺はレイピアは打てない。普通のソードになるぞ。」
「「それでもいいぜ!!」」
「だそうだ、欲しがるヤツは居るんだ。浸炭じゃなくて総鋼の剣だ。」
「え?」
驚く親父。
なんだよ、見て解からないのか?
「固い。曲がらない。鎧も貫く剣だ。まあ、もう少し柔らかい方が人間を切断するのには良いが。」
「まさか…。」
「売り上戸はこんな物だ。実際は鋭利さに偏っているから鎧を切ったら刃こぼれするだろうがな。」
「おい、僕にも売ってくれよ!!」
フェルッポ、お前はスクロール買うんだろ?
「サーベルなら今度な良いのが出来たらやるよ。オヤジ。1本ダメにしていいなら、ソコの鎧を貫いて見せるぜ。」
親指でカウンターの隣りのフルプレートを指す。
「おいおい、その鎧は売り物で帝国軍の鎧だ。」
「へえ~それはスゴイな。」
サーチする、うん、ブリキだな、厚い所でも2mm無い。たぶん浸炭圧延鋼板だ、圧延した鉄板を加工して浸炭処理している。
やはり刃で切るコトは難しそうだ。
一人二人ならドンと来いだが、乱戦なら何らかの手段が必要だ。考えよう。
「で、幾らで買う?」
「1本金貨15だ、それ以上は出せない。」
「まあ、良いだろう。精々高く売ってくれ。買うヤツが居たら又持ってくる。その時はもっと良い値で買ってくれ。」
ゼニを受け取る。
へっへっへっ毎度あーり、金子60枚なり。
無論顔には出さない。
さも当たり前の様に懐にしまう。
「おい、オットー、コレはどうだろ?」
ジョンが壁に飾ってある剣を指差す。
赤い羅紗の額に飾ってある。
サーチする。
ダメだ地金が悪い。硫黄が多い。鋼なのに混ぜ物が多すぎる。
「ゴミだ。三度打ち合えば折れる。」
「おいおい、ひでえ物言いだな。ソレはそれなりの名工の作だぞ。」
親父が言うがこの店はダメだ。
節穴だ。
「地金が悪い。固いかも知れんが脆い、粘りが無い鉄だ。こんなゴミは使い道が無い。精々飾りだ。」
「そうなのか?」
「俺なら素手で折れる。」
「あら、お兄さん。刃物に詳しいの?」
メガネの年配前御夫人が声を掛けてきた。
平民だが身なりが良いのでそれなりの家の方だろう。
「まあ、多少、刃物を打つので。」
打ってないけど作っているから。
「あら、心強いわ。長年使った包丁がダメになってしまって新しい物が欲しいんだけどイマイチ決心が付かなくて。」
「ほう、どんな包丁の替わりですか?」
「こんな形だったんだけど…。」
牛刀っぽい形だ。
「なるほど。地金なら。コレが一番良いです鍛造です。こっちも鍛造ですが錆び難いです。こっちは重いので切り易いですが疲れ安いです。コレは柔らかいから止めましょう。コレは良く切れますが手入れが難しいです。」
「あらあら、じゃあ、コレにするわ。」
御夫人が錆び難い包丁を買ってホクホク顔で店を出て行った。
「おい、ボウズ、商売にならないぞ?」
呆れた顔の親父がカウンターに肘を着いて頬に拳を置いている。
「解かったよ、何か買っていくぜ。」
ワゴン売りの樽へ進む。
サーチしながら適当に10本選ぶ。
「まあ、こんな所だな。」
大銀貨一枚だ。
「相変わらずだな。又コレを打ち直しするのか?」
「まあ、地金にしか使えないがな。」
「まともな地金を買ったらどうだ?」
「売ってくれればな。新参者にまともな地金売ってくれる金物屋が居るとは思えない。まあ、こうやって古い鉄くずから打った方が速い。」
「難儀なヤツだ。」
「よっし。用事は終わった行くぞ!!」
「まて、オットー。コレどう思う?」
今度はカールが引っかかっている。
壁に掛ったシースナイフだ。柄は鹿の角で出来ているようだ。
サーチする。俺は刃物鑑定士では無いのだが…。
「地金も悪くない。鍛造で肉厚で丈夫だ。獲物を捌くのにも戦闘にも使える。まあ、後は握り具合だけだな。」
「店主。手に取って良いか?」
親父が手を振っている。態度から好きにしろと言う感じだ。まあ、呆れているんだろ。
「握った時に、親指の位置とひとさし指&中指がしっくり来るか。小指がはみ出る様だとダメだ。」
カールが手に取ってグリップを確かめている。
悪く無さそうだ。
値段は、高いな、金貨5枚だ。
「うーむ、良いけど、ちょっとなあ、高いな。」
「良い物は高いぞ~。」
親父が茶々を入れる。
まあ、実際、丁寧に作ってある。
実用品ならそんな物だろう。
大事に使えば一生使える物だ。
「うーむ。」
「オイ親父、安くしろ。」
悩むカールが動かないので親父にねじ込む。
「オイオイ、お前解かってるだろ!!値段相当の品だ。」
「まあ、そうだな。この店数少ない値段相当の品だ。」
「あ!ナニが言いたい坊主!!」
「ソコの一番高い剣だが…。」
「ああ!!解かった!!止めろ!!金貨4だそれ以下は作ったヤツへの冒涜だ!!それ以上は下げない!!」
「だそうだ、どうする?カール?」
「買うよ。」
「おう、親父よかったな売り上げが増えたぞ。」
「ああ。全くお前が居ると商売にならない疫病神だ。ココで装備していくかい?」
「ブッハ!!」
「あ?どうした?ボウズ?」
「オットーどうかしたのか?」
「いや、タダのクシャミだ…。」
油断したこんな所で…。やはりゲームなんだろうか?




