45.ゴーレム
教室を出るとマイト先輩も出て来た。
無事に課題を提出できた様子だ。
「ハイデッカー様どちらへ?」
「ああ、昼飯だ。食堂でツレが待ってる。」
「じゃあ、ボクも一緒に良いかな?」
「問題ないと思うぞ。」
下級食堂に向かうと。
ベスタとマルカ&エミリーそしてどうでも良いミソッカス共が居た、ロビンは居ない様子だ。
「オットー。ドコ行ってたんだ?」
アレックスが声をかける。
「お前ら。今日はどうしたんだ?上級食堂は?」
「上級食堂は今日は休みだ。」
答えるカール。
「で、皆で下級食堂さ!!」
アレックスがムカつく前髪を触りながら答える。
「オットーそちらの方を紹介してくれよ。」
フェルッポが言う。そうだなコイツ等女しか紹介を求めないヤツ等しか居ないからな。
「コチラは錬金術科二年のマイト先輩。初日に俺のコートを木端微塵にした方だ。」
「スゴイな!!オットーに危害を加えて普通に二本の足で立ってるって。」
おい!ヒドイ言い方だなアレックス。
「え?オットーが外套を着ていないのはそんな理由?」
「なんだ。意味が在るのかと思ったがそんな話か。」
フルッポとマルコが呆れる。
「ああ、単純に破損したからだ、まあ、買い直すのも面倒なのでオーダーメイドが出来上がるまで外套無しだ。まあ、寒くはないからな。」
そうだ。デブには常に脂肪と言う強力な装甲をまとっている。
皆でゾロゾロ食堂に入り思い思いのモノを手に取る。
俺は、大皿とサラダ。麺を選んだ。
今日の大皿は里イモとベーコンと這い寄る芽キャベツ的な野菜の煮込みと丸パン、イモと芽キャベツがゴロゴロしている。透明な黄金スープだ。。
サラダはレタス&クレソン、ドレッシングは透明だ。ハーブの種とクラッシュナッツが乗っている。
麺料理はカリカリベーコンと這い寄る芽キャベツ的な野菜のぺペロンチーノの様なパスタだ。
しまった、ベーコンと芽キャベツか被った。
だが気にしない。
皆席に付き食事のお祈りをする。
「で?オットー、午前中はサボってドコに行ってたんだ?」
食い下がるアレックス。
「ああ、コチラのマイト先輩と一緒に錬金術の教室に参加していた。」
「錬金術もやるのかい?」
「ああ、アレックス、実は原始的なゴーレムは作れるんだ。」
「ほう、すごいな。」
マルコは大皿にちぎったパンを浸しながら驚いている。
フェルッポは念願の麺料理を旨そうに食べながらたずねる。
「ゴーレムってどんな?大きいやつ?犬?人型?」
「いや、そんなモノじゃない。魔法で決まった動きしかしないヤツだ。」
「ハイデッカー様はエンチャントもゴーレムもドコで学んだのですか?」
「独学と本。」
「「「えー。」」」
ミソッカス共が唸る。
「いやいや、教えろよ。」(アレックス)
「隠すなよオットー、教えろよ。」(マルコ)
「「何時もそれだ。」」(乳タイプ&フェルッポ)
「いやいや、ホントに見よう見まねと本なんだよ。生活魔法だけだな。魔術関係の本で家に在ったのは。貸本で古い錬金術入門を途中までしか読んでない。」
「ゴーレムってどんなの?」
フェルッポが随分とゴーレムに喰い付いて来る。
なんだフェルッポ?ゴーレム好き?
「見るか?フェルッポ。」
「ウン見たい。」
「ほい。」
テーブルの上に心臓の模型を置く。(ビクンビクン)
全員の手が止まる。(ビクンビクン)
「え?何これ?」(ビクンビクン)
フェルッポが明らかに落胆した顔だ。
期待した物と違ったモノが出て来た様な表情だ。
「ああ、心臓の模型。」(ビクンビクン)
「え。ヤダキモイ。」(ビクンビクン)
エミリーは非常に嫌毛な顔をしている。
「「…」」(ビクンビクン)
無表情でハイライトが無くなる奴隷達。まあ、一時期は部屋がコレで足の踏み場も無かったからなあ。
「そうだろ本モノと寸分たがわないからな。色以外は。材質は粘土だ。」(ビクンビクン)
「なんでこんな物作ったんだ?」(ビクンビクン)
ジョンが嫌そうな表情だ。あまり内臓好きく無いのか?
「これは、元は何の動物だ?」(ビクンビクン)
カールが質問してきた。
「え?人間、成人女性、」(ビクンビクン)
「オットー、犯罪はしていないよね?」(ビクンビクン)
アレックスが真剣な顔をして訪ねてきた。
「ああ、治癒魔法とは治癒対象物、つまり人間の構造を良く理解しないと効果が薄い。」(ビクンビクン)
「俺が聞いた治癒魔法とは違うな。」(ビクンビクン)
カールがお茶を飲みながらたずねる。
「いや、俺は自分の怪我を治す為に治癒魔法を独自に編み出した、教会の治癒とは良く知らんのだ。」(ビクンビクン)
「治癒魔法を…独自…。」(ビクンビクン)
マイト先輩が愕然としている。俺なんか変なコト言ったか?
「俺の治癒魔法は人間の構造を良く理解した上でパンをこねる魔法を応用して”丹田とチャクラ”を活性化させて治癒する方法だ。」(ビクンビクン)
「え?今何ていった?何を活性化させるって?」(ビクンビクン)
マルコが聞いてくる。おかしいな。
「”丹田とチャクラ”」(ビクンビクン)
「その、”TANDE…TOTYA”ってなんだ?」(ビクンビクン)
マルコが発音できなかった様子だ。そうか。ココだけ日本語なんだ。気をつけよう。
「ああ、そうだな、破損した人間の一部の肉と骨をパン生地の様に練ってくっ付ける方法だ。もちろん練った後は元に戻さなくてはいけない。それには元の状態と機能を知る必要がある。」(ビクンビクン)
収納からカットウェイモデルの心臓を出して隣に置く。コレなら弁の動きも良く見える。(ビビクンビビクン)
机の上のゴーレムを見て皆が眉を潜める。
「ねえ、コレって?本当にこう動いてるの?」(ビビクンビビクン)
フェルッポが訪ねてきた。
「ああ、そうだな。個人に多少の差は在るが概ね人間の心臓はこんな感じだぞ。動いている時はな。」(ビビクンビビクン)
「そうなのか…。でもどうやって調べたの?」(ビビクンビビクン)
何故か皆がフェルッポの顔を見ている。
「サーチだ。」(ビビクンビビクン)
「え?サーチ?」(ビビクンビビクン)
「サーチの魔法を使って生きている人間の輪切りの絵を見て立体模型を作るんだ。」(ビビクンビビクン)
「ジョン、サーチってそんな魔法だったか?」(ビビクンビビクン)
乳タイプがノッポの乳タイプにたずねる。
「カール、オットーに俺達の常識は通用しない。もう何が在っても驚くな…。」(ビビクンビビクン)
「あの、ハイデッカー様、食事が進まないのでソレを片付けてください。」(ビビクンビビクンビビクンビビクン)
エミリーが強い調子で抗議する。
「おお、すまんな。」(ビビクンビビクンビビクンビビクン)
収納すると。皆がタメ息を付いた。いや、安堵の嘆息か?
「つまり、オットーは治癒魔法が使えるんだ。」
アレックスがイモを咀嚼しながら質問してきた。
「まあな。骨折ぐらいなら一瞬で直るぞ。生活魔法のおかげだ。」
「えー、パン生地と同じレベルで怪我は治して欲しくないな。」
フェルッポが最後の麺と格闘している。フォークだと使い難いよね。やっぱり箸だろ?
「まあ、治ってしまえば意外とあまり気にしないぞ。」
手から出た水飲んでるぐらいだからな。




