44.錬金術クラス
さて、今日の午後は半ドンだ。
何時もより早く起きて寮の中庭に向かう。
もう既に刀を振るう者。ランニングをする者とまばらだが人が居る。
日課の鍛錬を再開する。
柔軟体操から受身練習、エビ
芝生が在るので非常に楽だ。地面でやると痛いからな。
皆が困惑の様子で見ているが問題ない。
家でもうなれた。
困った。
丁度良い岩が無い。
邪魔にならない所に魔法で勝手にカベを作る。
時間まで殴る、偶に蹴りの練習もする。
なんだ。しばらくサボるとやっぱり判るな。
そろそろ上がるか。
カベを粉砕して(物理)潰れたマメを治して汗を拭く。
気が付くと寮の窓から全寮生がコチラを見ていた。
しまった。明日からは静かにカベを殴ろう。
そそくさと部屋に帰り。
メイドさんズに身体を拭いてもらう。
明日の休みは皆で町に繰り出すことになっている。
全員私服だ。
…灰色のコートは止めておこう。
明日は武器屋で武器を売って遊ぶ金に換えなければ…。
よし、午後から鋼ロンダだ!!。
校門を潜りロリと別れて教室へ向かう。
「ううっ~教室、教室。」
今教室を求めて全力疾走している俺は魔法学校に通うごく一般的な男の子。
強いて違うところをあげるとするならば錬金術に興味が在るってことか菜~。
名前はオットー。
そんなわけで通学路にある校庭にやって来たのだ。
ふと見るとベンチに一人の若い男が座っていた。
ウホッ!マイト先輩。(ハッ)
そう思っていると突然その男の子は俺の見ている目の前でコートのボタンをはずしはじめたのだ…!
「ハイデッカー様、約束の魔法インクが出来ましたのでお渡しします。」
「ああ、マイト先輩ありがとうございます。提出は間に合いましたか?」
「ああ、昨日提出して合格を貰ったよ…。ごめん、徹夜で仕上げたので昨日はそのまま帰って寝てしまったんだ。」
「それはおめでとうございます。正直来週でも問題ありませんでしたがよろしかったのですか?」
「ああ、今日は外せない授業が有ってどうしても出なければならなかったんだ。ついでに渡せて良かったよ。」
そうか、錬金術の授業か…。正直そっちも面白そうだな…。
「マイト先輩、その授業、俺も参加してもよろしいですか?」
「ええっそれはフラン先生に聞いてみないと…。」
「ああ、ご安心下さい。校長より全てのクラスの授業に参加して良いコトの言質をとっています。」
「え?あの、それって?」
「まあ、大丈夫でしょう。行きましょう錬金術クラスへ。」
魔法インクの壷を収納して、マイト先輩を引き立て練金術クラスに行く。
教室内に入ると何か薄暗い。
何となくヤサグレた印象のある教室だ。おかしい、構造は魔法科の教室と変わりないハズなんだ。
「ああ、適当に座って良いよ。決まってないから。」
「はい、」
マイト先輩の隣りに座り。教室を見渡す、席はガラガラで座る生徒も何故かみな顔色が悪い。
始業のベルは鳴りしばらくして教室のドアが開く。
フラン先生が入ってくる。前とは違いの明るい色の淡色ワンピースに教師コートを着ている。
「ハイハーイ。授業を始めますよ~、出席を取ります居ない人は手を上げてください~。」
いや、それはムリだろ。心の中だけでツッこむ。
「えーっとそれでは…。あれ?新しい人が見えますね?自己紹介お願いシャッス。」
指摘されたので席を立って答える。
「魔法科クラスのオットー・フォン・ハイデッカーです、一応校長から自由にどのクラスを受講して良いと許可を貰っています。若輩者ですがご指導願います。」
「え~?あ、ホントだ。」
フラン先生が名簿本のページを何枚かめくり納得する。
「エーッとでは授業を開始します。昨日は魔法文字の基礎を学習したのでので。応用であるエンチャントの基礎から始めます。」
うーん。やはり魔法陣は何らかのフローチャトーによるプログラムの様子だ。
魔法文字を決められた手順で彫り記述するらしい、
プログラムの宣言文に近い記述が在る。
ただ、C言語のように入れ子構造はできないようだ。
コレはだらだら長い記述になるな…。
やはり、シーケンサー的な繰り返しプログラムに近い。
割り込みも無い、ウォッチドッグも無い。
暴走を止めるHALTは必要だろ…。
「…と言うわけで。残りの時間で何らかのエンチャント道具の提出で本日の出席単位とします。あと一時間で何か作ってね~。」
「よっし!!」
マイト先輩は机の上にカバンを出して何か道具を広げている。
「あの、マイト先輩?何をするんですか?」
「ああ、期日以内に講義の課題を出さないと単位が貰えないんだ。」
「なるほど…。」
「オットー君、キミも何か提出してね~♪。でないとペナルティあげちゃう。」
オイひどいなフラン先生。
昼飯に間に合わないだろ?
仕方ないので銅のマグを一個取り出し表面に単安定マルチバイブレーターの回路を組み…。
いや、ソレだと安定が悪いな、二つの発振数の違う振動回路を作る、そのほうが低い発振でも問題ないハズだ。
50Khzぐらいで共振するようにパラメータを設定する。
うん、振幅も良い。
魔力で水を入れて魔力を通す。
イイ感じに波立つ。
「センセー出来ました~。」
その場で手を上げる。
「はいは~い速いのね?ナニができたの~?」
女性から速いと指摘されるのは股間に係る。
だが貴族はうろたえない。
「ああ、めが…。いえ。指輪洗浄機??」
「め?指輪がどうなるの?」
「ココに指輪を入れてください。」
「??」
フラン先生が自分の指輪を外してマグに落とす。
「魔力を通します。」
ヴュイイイイイインと水が唸る高周波が発生して水が波立つ。指輪を中心に水が濁る。
「魔力を停止させて取り出し水で流すと綺麗になります。」
「なんで!!!」
酷く驚いてツッコミを入れるフラン先生。
「えーっと?魔法?」
「いや!!そんなんじゃなくて!!どんな理由?」
いや、タダのメガネ洗浄機だろ?ナニか驚くこと在るか?
「イヤイヤ。魔法の力で汚れが落ちます。」
「そうじゃなくて!!魔法は解かるの!!何で汚れが落ちるの!!」
なんだったっけ?マイクロバブル?説明は難しいだろ?
思わず首をひねる。
「ああーっ!どうして!!こうなるの?」
髪の毛をかきむしるフラン先生。
先生髪はもっと大事にしないと後で悔しますよ。
「え?泡の力?」
「あわ!!どうして!!!」
昼のチャイムが鳴る。
「フラン先生、昼なので退出してよろしいでしょうか?提出物はコレを出します。」
マグをサーチしてブツブツ話すフラン先生を尻目に教室を出る。




