39.家宝は寝て待て。
「なあ、このぼろいカップ、ドコで手に入れたんだよ。」
能天気なアレックスの声
「ああ?それ、意外に高いから大事に扱えよ。」
「うそだろwこんなに古いカップだぜ!!」
人差し指でマグの取っ手に指を入れてクルクル回すアレックス。
「アレックスさまソレは一個銀貨一枚です。」
ロビン君がフォローする、でも金額は言わなくてもいいよ。
「え?マジ!!」
「そうだぞアレックス。しかもソレは今では製造していない。ソレを超えるものはミスリルしかない。」
「まじかよ!!コレ!家の家宝にする!!」
叫ぶカール。
「カール、それ、只の銅のコップだぜ?」
興奮するカールにうんざりする。ジョン。
「家の家宝なんて爺さんの使ってた腐った革盾しかないんだ。せいぜい大銅貨二枚だぜ!俺の家でミスリルなんて持てやしない。ミスリルの手前の聖杯なら誰にも文句言わせないぜw」
「聖杯なあ?」
胡散臭そうにマグを眺めるマルコ。
俺はジョンを見る。
困った顔をしたジョンは、カールに言う。
「カール、ソレは只の銅のマグカップだ。」
結局俺がアクセル役でジョンがブレーキだ。
「そうだぞカール。お前の爺さんが革盾を家宝に出来たのも爺さんの働きが有っての事だ。お前が何か成さないと、ソレは銅のマグのままだぞ。」
決意したカールは一生走り続けるだろう。
何処かで死の穴が無い限りは。
寮に帰り。
夕食を取り。
部屋でロリのコピー本をよむ。
もう読みきった。
明日の午後は実習だ。
放課後の図書室実習も無い。
何となく、悲鳴を上げる黒髪ロリがマルカを抱きしめている。姿がフラッシュバックする。
あと、俺を睨むジョンの目。
俺は何の選択を失敗したんだろう?
マルカとベスタが帰って来た。
どうやらミッソカス共がラウンジの丸テーブルを囲んでカップに向かってブツブツ呟いていたらしい。
あいつ等なんでそんなに勉強熱心なんだ?
マルカが”明日は黒髪ロリと二人で昼食を取ります。”
と言ってきた。
まあ、トモダチが出来たんだから仕方ないだろう。
しかし、心配だ。
ベスタに昼食の護衛を頼む。大銅貨4枚を渡す。
ドコの世界にもバカはいるからな。




