番外地:帝国編9
(´・ω・`)13日の金曜日投稿。
私は何故生きているんだろう?
何故かそう思うコトが多くなった。
お母様も、ミカも、タニアも死んでしまった。
薄汚れた何処かの村に何時ものように裸足で立たされている。
布着れ一枚身に着けて、晒された引き攣る肌に刺さる視線が酷く私を惨めな気分にさせる。
過ぎ去る人たちは怒った様な視線を浴びせかけている。
このまま私は土の中で消えてしまうのだろうか?
裸足で立つ、埋まった足先、泥を見る。
気が付くと。
大きなブーツが有った。
視線を上げると。
大きな男の人だ。
こんなに大きな人は見たことが無い。
怖い、目が私を見ている。
まるで…。私を見透かしている様な気がする。
人を人と思っていない人。
私を唯、物を見る様な視線を向けている。
「お客さん、お気に入りですか?」
怖い人が声を掛けている。
「このガキはいくらだ?」
嫌だ、行きたくない。
この人は怖い人だ。
私を殺そうとした人達は喜んだり怖がっていたりしていた。
この人の目は、物の様にしか人を見ていない。
「我々は北を目指しますのでその道すがら商品を売り、捌けない在庫は炭鉱で買ってもらいます。」
「う~ん。」
悩むふりをしている…。
嘘をついている。
男は何かを話している。
「ああ、たのむ、購入しよう。」
タニアを引きずった人は私に首輪を付けた。
付けられた首輪はタニアの物だった。
私は…。タニアに何と言えばよかったんだろう。
あの時私が代わればタニアは助かったのだろうか?
馬車の中で指を差された特、怖くて声が出せなかった。
あの森で目の合ったタニアに…。
私の他にあの騎士さんが買われた。
お母様の馬車を連れ去った人だ。
馬車を初めに覗いた女の人。
「おら、お前達の主人だ、精々可愛がって貰え。」
笑う。首輪を付けた人。
「付いて来い。」
大きな男の人はゆっくりと歩く。
痛い素足で土の上を歩く。
時々後ろを見る大きな人。
何処かの建物に入った。
お店の様。
おばさんと何かを話している。
そのまま何処かに行く大きな人。
残された私たちに、おばさんは困った顔を私に向けた。
「さあ、身体を綺麗にしましょう。こっちに来て。裏で洗ってあげる。ちょっと!早く片付けな!!見っともない!」
店の奥に向かって叫ぶおばさん。
「は、は~い。」
奥から女の子の声がする。
「古着をもって来な!。急いで。お湯も用意しな!櫛もね!!」
「は~い!!」
私と女の人はおばさんの後ろに付いて店の奥の中庭に案内された。
井戸の横でぬるま湯で洗われ、櫛で髪を梳いてもらった。
おばさんが私を布で拭いてくれる。
「ああ、酷い目に会ったんだろうけど、逆らっては行けないよ?要らない怪我をするからね。」
優しい声を掛けてくれるおばさん。
私に向けられた目は哀れみなのだと解った。
涙が出てくる。
「大丈夫、泣かないの。辛いことも生きてれば悪く無いと思える時が来るから。」
「服と下着持って来た。」
あの、声の女の子だ。
両手に畳まれた服を抱えて、何足か靴をぶら下げて来た。
「うん、ちょっと大きいかしら?コレが合いそうだね。」
次々に古着を私の身体に当てるおばさん。
「ちょっと、見てないでソッチの人のを手伝いな!!」
「はい。じゃあ、靴から。」
女の子の肩を借りて女の人の足の裏に靴を当てている。
「こんなに大事にしてくれるんだ。悪い人では無いと思うよ。気をしっかり持ってね。」
自分に言い聞かせる様に囁くおばさんは、新しいシャツを着させてくれた。
「はい、じゃあ、着替えは部屋に持ってきな!」
おばさんが選んだ服を乱暴に女の子に渡す。
「え?」
顔を赤くする女の子。
「どうせ向うで脱ぐんだ。他の客も居ないから先に服を持っていきな!!」
「え?あ。はい。」
すごすごと何処かに行く女の子。
おばさんの案内で廊下を歩く。
「あの奥の部屋だよ。間違えないで、この階に他の客は泊まってないけど…。あまり大きな声を立てないで。」
声を潜めて囁くおばさん。
「じゃあ、行ってきな。」
優しく肩と頭を抱いて背中を押し出してくれた。
「しつれいします。」
ノックをして女の人が中に入った。
ベッドに座る男の人。
怖い目のまま。
立ち上がった男の人は見上げるような大きさで。
ドアを閉め閂を掛けた。
音が響いて私を不安にさせた。
部屋を歩き前に立つ男の人。
「服を脱げ。」
怖い声。
女の人がシャツを脱ぎ始めたので私もゆっくりとシャツを脱ぐ。
私の前に立ち嘗め回す様に観察している。
なにをしているんだろう。
両手で触れるか触れないかの位置で手かざしをしている。
「口を開けろ」
大人しく従う。
その後、”足を上げろ””腕をあげろ”と言われたが特に何をしているのか判らなかった。
時々腕を組んで考えている男の人。
傷跡や髪に触れたりするが身体を見回している。
「ココか!!」
男の人の手が伸びる。
思わず叫んだ。
「いやっ!やめて!!」
節くれ立った指が…。
「や!めて」
「動くな!!命令だ!!」
怖い。
男の人は指輪を奪った。
顎を掴まれ口に指が入って来た。
思わずえづく。
苦しい。
「ふむ、コレで良いだろう。」
奪った指輪をはめる男の人。
ああ、お母様の指輪が…。
私とお母様の最後に残った物が。
血の気が引く、目が熱くなる。
男の人は私に興味を失い女の人に掛っている。
女の人は無表情にされるがまま。
「さて。」
男の人の声が部屋に響く。
これから私はどうなるのだろう。
あの騎士さん達の様な乱暴をされるのだろうか。
男の人は何処かから取り出した小瓶を呑んだ。
酷くいやらしい顔で笑う。
「いくぞ!!ヒール!ヒール!ヒール!ヒール!ヒール!ヒール!」
火傷の痕が熱くなる。
良くわからない感覚で塞がった視界が広がる。
肩で息をする男の人。
又、何処から小瓶を出した。
呑んだ後の空瓶も消える。
「動いて良いぞ。何か体に異常は無いか?」
「あ、いえ。ありません、目が見えます。」
不思議、引き攣る皮も無くなっている。
あの火傷の痕も何も無い様。
「あ、あし、足が…。」
「痛いのか?」
「いいえ大丈夫です。動きます。」
女の人の無くなった足先も元に…
「異常が出たら報告しろ。」
シャツの皮ひもを解きながら話す男の人。
指輪が結ばれ私の首に掛けられた。
「預かっていろ。身から外すな。」
「あ。はい。ありがとうございます。」
お母様の指輪だ。
帰って来た。
「さあ、服を着ろ。日が落ちるまで休め。暗くなった宿を出る。」
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「おう、戻ったぞ。」
「おかえいなさいませ。旦那様」
オットー様がお仕事から戻られた。
私は編み物の手を止める。
「皆は?」
部屋の中を見渡すオットー様。
私は王都のフランさんの御屋敷に住まわせてもらっている。
オットー様の卒業と共に私達は首輪を外された。
タニアの首輪はオットー様にお願いして貰い受けた。
オットー様は困った顔をしたが、”紋章を調べて効果を無くした後なら譲ろう。”と言われてそうされた。
今は大事に仕舞って在る。
「フランさんとイネスさんはお仕事で学園です、ベスタさんの馬車で行きました。」
「そうか…。子供達は?」
「今はおやすみです。」
「判った。起こす事は無い、後で顔を見よう。10日間休暇を貰ったが書類仕事が残っている。中2日ほど軍司令部に出頭する。」
剣を収納するオットー様。
席を立とうとすると制止された。
そのまま腰を戻す。
「あの…。」
オットー様は自分でコートを脱ぎハンガーに掛ける。
「何だ?」
厳しい目で答えるオットー様。
最近やっと解かる様になった、オットー様のあの怖い目の時は何かを考えている時。
厳しい目の時は相手の気持ちを考えようとしている時。
「この子の名前なのですが…。たぶん女の子だと思います。」
母から託された正統の指輪はこの手に在る。
私は大きくなったおなかにふれる。
前の子は元気に動いたのに、この子は優しく動く。
「そうか。」
「それで…。私が名を付けたいのですが…。」
オットー様のいつもの考えるしぐさだ。
「うーむ、そうだな。前の子には九朗と名を付けたが。かなり不評だった。俺にネーミングセンスは無いからな。良い名が有れば選んでやれ。」
「はい、では。女の子ならタニアと名づけたいと思います。」
「そうか、タニアか。良い名だ。俺は男だった時の名を考えておこう。」
「はい。お願いします。」
紋章の下のわが子を撫でる。
頑張って、タニア。
今度は良い人生を。
(#◎皿◎´)俺のネーミングセンスが最悪…。
(´・ω・`)…。(作者にネーミングセンスが無いから。)
マルカの子
長男クロー
長女タニア
次女ミカ




