359.トーナメント決勝
さて、試合が終わり控え室に戻る。
マルカとエミリーが俺の鎧を脱ぐのを手伝い。
ロビンと共に黙々と鎧を磨いている。
「オットーおめでとう。」
「ありがとうフェルッポ。遂にココまで来たな。」
「いや、初出場でココまで来るのは前例が無い。」
「まあ、そうだな。オットーらしいが。」
乳タイプ兄弟の評価は上々だ。
「さて、始まるぞ?アレックスと1位との戦いだ。」
マルコは控え室の小窓から外を見ている。
俺も椅子に腰掛け外を見る。
マルカが布巾で汗を拭いてくれる。
戦友が…。
「おい!アレックスが凄いぞ?」
カールが叫ぶ。
アレックスと1位は同じスピード系だ。
お互い速さで負けていない。
互角に戦っている様子だ。
流石高機動型アレックス。
相手が変則技を出しても対応仕切れている。
「いいぞ!頑張れアレックス。」
マルコの応援も熱が入る。
内容的には悪く無い試合運びだ。
相手の連続技を転がって逃げるアレックス。
「ああっ!」
フェルッポが叫ぶ。
しかし、受身の練習の成果で距離を取り反動を使い一瞬で立ち上がる。
どよめく観客。
相手も驚いて居るようだ。
と、言うか相手はお上品だ。
俺なら追撃して蹴る。
まあ、俺の苦手なスピード型だ、対戦相手の情報を収集する。
アレックスが勝てば無駄な努力だ。
相手の攻撃は全て捌くアレックス。
残念ながら相手も同じだ。
「コレは長丁場だな…。」
「そうだな…。」
乳タイプ兄弟の評価だ、力が拮抗している。
緊張が途切れた方が負ける。
剣が弾き合い、鉄と鉄が叩き合う音が会場を支配する。
二人の剣士の息遣いが聞こえる。
群集は無言だが興奮している様子だ。
国王も身を乗り出し観戦している。
一気に畳み掛ける1位。
圧倒され下がるアレックス。
しかし、一瞬で決着が付いた。
アレックスが相手の剣を弾いて手首を使い手元を叩く。
弾きあげられた剣はガントレットから滑り宙に浮き。
地に着くまでにアレックスの切っ先が1位のヘルムの首元で止まる。
恐らくアレックスは狙っていただろう。
搦め手で剣の跳ね飛ばしは、散々目の前でやって見せたからな。
「勝負あり。勝者!魔法学園、アレックス・ワイヤード!!」
群集の勝利を祝う歓声が闘技場を包む。
国王も立って拍手をしている。
貴族席のちんどん屋が喜びに包まれている…。
なんか、俺の時と扱いが違うな。
あ、調子に乗ったアレックスが捧げ刀の敬礼を国王に行なっている。
イケメンがやると様になる。
「勝ったね、アレックス。」
フェルッポが呟く。
「そうだな、次の俺の相手だな。」
「アレックスが剣の跳ね飛ばしをやるのを見るのは初めて見たが…。」
マルコも苦い顔だ。
「俺が散々アレックスにやったから流石に覚えたんだろう。」
アレックスのコトだからこの日の為に練習していたのかも知れない。
カッコイイ捧げ刀の敬礼の練習を…だ。
「決勝戦を魔法使い同士なんて軍学校でも初めてなのでは?」
「そうだな…。聞いた事が無い。決勝に出たコトは有ったハズだ。かなり昔の話だ。」
乳タイプ兄弟が首を捻っている。
「さてと、準備をするか…。」
ロビンとエミリーが磨いた鎧を持って居る。
ヘルムを被ると、副審がやってきた。
「オットー・フォン・ハイデッカー殿、このまま決勝戦を行なうそうです。準備をして下さい。」
「おう、解った。今準備中だ。」
「はい。」
副審が主審に合図を送っている。
主審がアレックスと何かを話している。
あ、アレックス、回復の指輪を使いやがった。
マスクを付けガントレットをはめる。
感触を確かめ全ての準備が整った。
控え室を出る。
「「「頑張れよ!オットー!」」お前に張った金の方が大きいんだからな!!」
ジョン、結局アレックスにも張ったのか…。
手を挙げ答える。
「では、コレより決勝戦。魔法学園、オットー・フォン・ハイデッカーと同じく魔法学園、アレックス・ワイヤードとの試合を始める!!両選手前に。」
謎の歓声に包まれる闘技場。
何故俺が出ると微妙な歓声なのだ?
白い砂地を歩きアレックスと主審の前で止まる。
「やあ、アレックス、やっと試合だな。」(コーホーコーホー)
「ああ、オットー。随分と待たせた。」
緊張した面持ちのアレックスに語り掛ける。
「で?何でやろう?」(コーホーコーホー)
「そうだな、オットー。レイピアで勝負しないか?」
なるほど…。
「ああ、良いぜ?主審殿、剣をお借りたい。」(コーホーコーホー)
「了解した。副審、剣を。」
副審が剣を持って走って来る。
主審が検査した後に受け取る。
俺も剣を抜きバランスを確かめる。
普通の訓練用の剣だ。
軽くて折れるので気を付けないと…あと、曲がる。
鞘に収める。
「問題ありません。」(コーホーコーホー)
「では、始めよう。国王陛下に敬礼!」
二人の魔法使いが国王に頭を垂れる。
「では双方、宜しいか?」
向かい合い剣を構える魔法使い達。
「オットー?良いかい?」
「ああ、アレックス問題ない。」(コーホーコーホー)
「始め!!」
アヒッ




