357.トーナメント準々決勝
さて、何故かボロボロになってしまったが…。
強化ヒールで手早く打ち身と炎症を治す。
教官は折れた骨を合わせて強化ヒールで直した。
胆石と、膝と手首に軟骨剥離が有ったのでオマケで直した。
何か俺、膝ばかり直しているな…。
担架に乗せて運ばれるダービット教師の後を付いてゆく。
付いて行けば救護所だろう。
昼を喰ったらくじ引きだ。
未だ時間が在る。
裸の王様では無いので間単に鎧下を着てソレにゼッケンを引っ掛けている。
たぶん、フェルッポが居る筈だ。
救護所は練兵場の片隅の軍用天幕の中だった。
テントの中には20程の簡易ベッドがありその側にマルコの姿が在った。
「マルコ、フェルッポの状態はどうだ?」
「ああ、オットー未だ目が覚めてない。恐らく気絶しているだけだと。軍医殿の見立てだ。外傷は無いと。起きたら軍医殿に見てもらうコトに成っている。」
「そうか…。まあ、治癒の魔法は掛けたからな。頭を打ったワケでは無い。目が覚めて受け答えに問題無ければ…。」
「う…。あ…。」
「おいフェルッポ、判るか?兄さんだ。」
「あれ、兄さん。オットーも?ああ。ごめん。負けちゃったんだ。」
「そうだ、覚えているか?」
「うん、未だちょっとクラクラするけど…。大丈夫。」
「そうか。少し休め。」
「オットーの試合はどうだったの?」
「ああ、勝ったぞ?相手は教師だったが殴り合いで勝てた。」
「おい、何かおかしいぞ?相手は教導軍曹だろ?」
マルコの突っ込みを無視する。
「おめでとう、オットー。」
「ありがとう、フェルッポ。」
天幕の外が騒がしくなった。
又、担架に乗せられた生徒が入ってくる。
担架を担ぐ者にジョンが入っている。
「ジョン!」
「おう、オットー?どうした?」
替わりに担架の上のカールが答える。
「カール。怪我したのか?」
「いや、唯の打ち身だが痛くて引きずったら問答無用に担架に乗せられた。それよりオットー。すまんな、負けた。」
「相手は2位だ。仕方が無い。ヨイショ。」
ジョンが答える、担架からベッドに移すのを手伝っている。
カールはベッドに座っている、右大腿部か、膝を痛がっている様子だ。
「どーら、新しい、死体は何処だね?」
背の高い初老の男がやってきた。
頬髯には白髪が混じっている。
後に続く従兵はお湯と水の桶が入ったワゴンを押している。
あと謎の道具も載っている。のこぎりとか…。
「はい、軍医殿。俺です。」
「おーう、元気な死体だ。何処が痛い?」
「足に右足、前部、膝の上辺りに剣を受けました。」
「おう、そうか。見せてみろ。」
鎧を外して患部を見せるカール。
軍医が揉んだり叩いたりしている。
「うん、症状、打ち身。外傷は無し、骨も折れておらん。従兵、患部を冷やせ、濡れガーゼ。」
「はっ。」
テキパキと従兵(恐らく1年)が水桶に浸した布を絞り患部に当てる。
「よし、半日は冷やすこと。さて、ソッチの坊主は生き返ったのか?」
「はい、軍医殿、覚めました。」
替わりに答えるマルコ。
「そうか、自分の所属と名前は言えるか?」
「はい、僕は魔法学園、普通科。フェルッポ・フェンデリックです。」
頷くマルコをみて安心する軍医。
「よし、では何か異常が在るか?痛いところや痺れる所だ。」
「あ、いえ、何か頭が重いです。」
「そうか。ちょっと見せてみろ。」
手で熱を計ったり脈を取ったり舌の色や目を見る軍医。
「うーん。」
唸る軍医。
心配そうなマルコ。
「あの、軍医殿、弟はどうでしょうか?」
「一晩寝れば治るだろう。二三日は激しい運動を控えるコト。馬にも乗るな。あと…。今日は柔らかい物を食べて、早く休め。」
「はい、判りました。」
用事が終わると直に次の患者に向かう軍医。
「やれやれ、生き残ったのはオットーだけなのか?」
カールが足を冷やしながら話す。
「いや…。アレックスが勝ったハズだ。」
ジョンが答える。
そうか…。アレックス本気だな。
「オットー。そろそろトーナメント表前に行った方が良いぞ?」
カールが催促する。
「おいおい、俺が戦友を残して進むわけ無いだろ?」
「ああ、そうだな、飯が出る筈だ。その後くじ引きだ。」
解説のマルコ。
マジかよ!タダ飯かよ!!
「そうか…。すまんな。急いだほうが良さそうだ。」
「ああ、そうしたほうが良い、午後からは競技場内での試合だ。国王も来る。」
「オットー、あまりおかしな戦いはするなよ?」
カールとジョンの忠告を受ける。
俺はそんなにおかしな試合はしていない。(主人公の主観)
全部殴ったけど。
いや、蹴って倒した方が多かったか?
「オットー頑張って。」
「ああ、フェルッポ、大丈夫だ。カタキは討ってやる。」
笑顔で救護所の天幕を出た。
トーナメント表に向かうが何故か軍学校の生徒が道を空ける。
やれやれ俺にも勝者の風格と言う物が出てきたのだろう。
流石世界。
俺はやれやれ系の主人公だ。
「フハハハハハハハハ。」
自然に笑みが零れる。
今の所、殺れ殺れ系と紙一重なのが問題だ。
くっそ!折角の大一番なのに使える魔法が無い。(全部即死)
賭場テントは盛況の様子だ。
勝ち券を求める群衆の長い列が出来ている
オッズ表を眺める。
俺は随分と倍率が低い、4番人気らしい。
「まあ、良い、諦めよう。」
立ち去る。
トーナメント表の段上には生きのこった、7人が椅子に座っていた。
「どうぞ、コチラに。」
司会進行の者が空の椅子を示す
どうやら俺が最後らしい。
階段を登り俺の番号の椅子に座る。
「すまんな、治療を受ける為に救護所に行っていた。」
「はい、了解しました。コレで御前試合に望む全ての選手が揃いました。組み合わせ発表は昼終了の鐘と共に行ないます。では闘技場で会いましょう。」
微妙な拍手に包まれる。
アレックスが居た。
赤毛のまな板は下を向いて目を合わせない。
後は…、知らん顔だ。
教師も居る。
「では、選手の皆さんはコチラでお休み下さい。」
司会進行の誘導で闘技場の中に入る。
向かった先は食堂だった。
「では、選手の方々にご説明をさせていただきます…。」
簡単な注意事項と進行の説明を受ける。
なるほど、後で個室の控え室が用意されるらしい。
しかも闘技場に面していて観戦できる。
試合の時はそのまま会場に出れるらしい。
呼ばれたら登場だ。
飲食も係りの者を呼べば取り寄せできる。
例の不味いシチューの様だ、選手は控え室から出ない様にきつく言われた。
用事は従兵に言うこと。(有料)
面倒ならば自分の従者を呼んでも良いらしい。
困ったな、今更従者を呼べば良いと言われても…。
呼ぶ方法が無い。
案内された先は闘技会場を囲む半地下のダッグアウトの様な小部屋だった。
小部屋なのに広い。
恐らく数名で使うモノなのだろう。
水桶と排水口、ベンチと簡易ベッド…開放型のロッカー。
どうやら選手控え室として最低限の物は揃っているらしい。
階段を三段登れば闘技場だ。
やる事が無い。
装備品を並べ点検する。
使った剣に問題は無い。
鎧も細かい凹みは在るが性能に問題は無い。
終わってから直そう。
鎧を着る。
ヘルムを磨きながら考える。
問題は国王の周りに灰色を見た者が居るか?だ。
王子の婚約者、母親と老メイドだ。
あの女従者が居るかも…。
来るか来ないか確認する方法が無い。
思案に暮れるとドアをノックする音で遮られた。
「だれだ!」
「オットー・フォン・ハイデッカー様。従者の方と御学友の方がお見えです。通して宜しいでしょうか?」
案内で従兵役の軍学校の1年生の声だ。
こういう雑用も軍での重要な仕事だ。
つまり軍隊ゴッコなのだが。
TPOが解る俺は最低限相手のルールに合わせる精神的余裕が在る。
(偶に理不尽にキレる)指揮官の役を演じる。
「ほう、俺の従者だと?名は何だ?」
「魔法学園の生徒マルカ女子…で御座います。」
うん、迷いの在る答えだ。
恐らく奴隷なので困惑しているのだろう。
身形のよい上級貴族の奴隷と言う者は平民には胡散臭さが半端無いのであろう。
ソレより何故マルカが居るのだ…?
返答に困る。
「あの、ご学友のマルコ様とエミリー様もお見えです…。」
焦る従兵の声。
「ああ、そうだな。通せ。」
「はい!了解しました。どうぞ!!」
安堵した声の従兵がドアを開け、直立不動で敬礼する。
返礼で返すマルコ。
「オットー、すまんな。名を使わせてもらった。今回は観客が大入りで観客席に入れそうに無い。」
「ようこそ、マルコ。フェルッポの様子はどうだ?」
「問題無さそうだ、付いて遣りたかったが、ジョンの身分では中に入れない。ジョンとカールに託した。問題無ければこの部屋に来る。」
「そうか…。丁度良かった。配下の者をどうやって呼ぶか思案に暮れていた所だ。」
「そうだろうと思った。軍学校は杓子定規だから、奴隷の身分では入れない。だから連れて来た。」
「あの、お邪魔します。」
「…。」
居心地悪そうなエミリーと無言のマルカ。
なるほど、何か揉めたのか?
「どうも軍学校と言うのには慣れんな。」
「正直、俺もオットーの名を出さないと入れなかった。」
「そうか…。フェルッポとジョン、カールが問題なければ来て欲しいが…。」
「オットーが招待すれば問題ないハズだ。」
ドアを見るマルコ。
従兵に言えば良いらしい。
ドアに向かって叫ぶ。
「解った。従兵、居るか?俺の魔法学園の学友が来る予定だ。来たら通せ。名は”フェルッポ””カール””ジョン”だ。」
「はっ!了解しました。フェルッポ殿。カール殿。ジョン殿ですね。」
ドアが叫ぶ。
マルコが頷く。
「おう、頼んだぞ。」
「アイアイサー!!」
うん元気なダァーだ。
「さてと、マルカ。さっそく用事を頼みたいのだが…。心配なのでエミリーも一緒に行ってくれ。俺は屋台の暖かい飯が食いたい。」
「「はい、判りました。」」
記入済みメモと銭を多めに渡す。
「皆、飯は食べて無いのだろう?一緒に食べよう、テーブルも在る。」
簡易ベッドを指す。
「そうだな、あのシチューは止めて置こう。」
メモを読むマルカ。
「あの…。もう既に買って在りますが…。」
「ああ、追加だ。」
「解りました。」
一礼するロリロリ。
「ちょっと待ってくれ、オットー何か解る物は無いか?家の紋章の入ったハンカチとか?」
「あ?」
マルコが言う。ハンカチは持って居るが…。紋章は入って無い。
「従者の者の通行証の替わりになる、まあ、流石に軍学校の者は主立った貴族の紋章を暗記しているはずだ。」
なるほど…。
「解った。」
家の便箋を出し素早く書く。
”この者、奴隷マルカは我が家の…”で始まる定型文と最後に日付と書類有効期限、俺のサイン。
「マルカ、止められたらこの手紙を見せよ。無くすなよ?」
サークル通行証を渡す。
「はい。」
ドアを出るロリロリ。
あ、しまった。
フェルッポ達を呼んで来いと言えば良かった。
まあ、良い。あいつ等なら何とかするだろう。
「さて、随分と人が多いな。」
会場を覗く。
困った、魔法が打てない。
「まあな。お祭りだからな。しかも今、軍学校には剣で有名な家の出の者が多い。暫くはこの人気だろう。」
「そうか…。」
なるほど、ゲームで俺が無様に負けるのを大衆が見たコトになるのか…。
暫くすると、ロリロリが戻って来た。
両手に一杯荷物を持ったロビン付きだ。
ほう、ロビン。良い仕事だ。
女性に荷を持たせなかったのか?
「おう来たな?メシにするか。ロビン未だメシを喰って居ないだろう?沢山食べてゆけ。足りなかったらシチューを頼む。」
「「ハイ」」
シチューと聞いて嫌そうな顔のマルコを無視してロリロリ達が食事を広げる。
お茶のセットを出すとマルカが準備し始める。
準備が整った。
ドアがノックされる。
「失礼します。フェルッポ殿。カール殿。ジョン殿がお見えです。」
ドアが叫ぶ。
「入れ。」
「はい、どうぞ中へ。」
従兵がドアを開け、フェルッポ達が入ってくる。
一礼して閉める。
元気そうだ。
「弟よ?大丈夫か?」
「うん、兄さん。もう大丈夫だよ。ジョンから治癒のキーホルダーを借りたんだ。」
「ああ、アレか。」
納得するマルコ。
「実は、軽症者扱いだったので救護所を追い出されたのが正解だ。」
「そうだな、俺は家宝の指輪で治ったが…。」
困った時は魔法で解決。
流石異世界、これ常識。
「では、皆で飯を食べよう。準備は出来ている。フェルッポはシチューの方が良いか?」
「いや、やめて。普通ので良いよ?」
笑うミソッカス共に首を傾げるロビン。
うん、屋台のB級グルメはサイコーだ。
食事が終わりお茶をする。
片付けるロリロリにジョンとフェルッポが今日の勝ち券の話をしている。
「俺は追加でオットーに賭けたからな。頼むぞ?」
ジョンの期待を背負っている、カールも頷いている、乳タイプ兄弟はどうやら俺に賭けたらしい。
「アレックスにも賭けてやれよ。」
「いや正直、アレックスがココまで来るとは思わなかった。さっき慌てて銀貨一枚分買ったぞ?もう、素寒貧だ。」
賭けに全額つぎ込むのがジョンのスタイルらしい。
居た堪れなくなりカールが話題を変える。
「実は、初めにアレックスに取り次いで貰えなかったのでコチラに来たのだ。」
「ほう?そうか…。」
アレックスどうした?
ぼっちなのか?
「どうやらアレックスの親が見に来ている。ワイヤード公爵だ入れないぞ。」
ジョンの解説だ。
そうか…、こっちがぼっちだな…。
「あそこの家は親兄弟仲が良いからな。アレックスを生んだ母は庶民の出だが元はワイヤード夫人のお付の者だったらしい。夫人も、他の兄弟も歓迎して後妻に入ったと言う話だ。」
囁くマルコ。
なるほど…、家庭円満なのは良いコトだ。
アレックスの親父だ、たぶんイケメンだ…。
くっ、イケメンはハーレム、流石異世界、これ常識。
そうすると、家族があんなに軍に入るのを反対していた理由も解るな。
かわいい末っ子だ戦死させるぐらいなら領地で木を数える仕事に付かせるだろう。
考えていると鐘が鳴った。
「次の鐘で、選手は。くじ引きを行います。その後。すぐ第一試合を行ないます。準備の上。お集まり下さい。繰り返します…。」
「よし!出番だ。言ってくる。」
ヘルムを被り、マスクをする。
マスクは改良済みだ。
コレで俺だと解るまい!!(コーホーコーホー)
歓声の中ゆっくりと闘技場に向かう。
柔らかい白い砂が敷き詰めてある。
8人が集まった。
皆、自信ありげだ…。まあそうだろう。ココまで実力で勝ちあがってきたのだ。
赤毛のまな板が青い顔だが…。
審判が振った麻袋を一人一人手を居れ木片を取っていく。
俺は”2番”の札だ。
第一試合か…。
「木片とゼッケンをお預かりします。コレからはお名前で御呼びします。」
女従兵が一人づつ来て恭しく木片とゼッケンを回収する。
闘技場内のトーナメント表に貼るらしい。
皆がサークルを後にした。
残ったのは一番を引いた軍学校の生徒だ。
「では、コレより第一試合。軍学校騎兵科4年、現在2位 トーマス・バルタールと、魔法学園、オットー・フォン・ハイデッカーとの試合を始める!!両選手前に。」
主審が検査している。
「オットー・フォン・ハイデッカー殿。武器は何処に在る?」
やれやれまた聞かれた。
「コレで殺ります。」(コーホーコーホー)
ガントレットを見せる。
「そうか…。」
イタイ子を見る目の審判。
点検を開始する。
流石にガントレットの飛び出すナックルは外してある。
オプションの鉄の爪もだ。(コーホーコーホー)
競技場が金網デスマッチならばオプションを選択するのだが…。(ヒョー)
向き合った状態で試合開始を待つ。
相手は軍学校の2位の騎士だ。
ヘルムのバイザーを下ろした。
準備完了らしい。
かなりの使い手だ。
正義の植木屋なら勝てるはず。
「国王陛下の到着が遅れているが、時間に為ったので第一試合を執り行う。」
主審の言葉で動揺する。
え?マジ?俺、何の為にマスクしていると…。(コーホーコーホー)
「では宜しいか? 初め!!」
おっと、イカン。
ボクシングの構えをする。
鋭い突きが小盾を揺さ振る。
唯のけん制だ。
群集の歓声がイラ付く。
落ち着け。
相手の連続突きを小盾で捌く。
焦るな押せる。
斜めに構を変えジリジリと前に出る。
頭を狙って来た。
刀身を小盾に滑らせ大きく踏み込む。
マスク越しの相手の目が焦っているのがわかる。
腰の回転を乗せた右手が相手のバイザーに吸い込まれる。
「ぐっ!がっ!!」
カウンターだ。
インパクトの瞬間ヘルムが凹むのが解った。
しかし、相手にダメージは通っていないハズだ。
剣を手放したので小盾から外れる。
いいぞ?連続攻撃だ。
空いた胴に左手ボディーブローを加える。
重い感触だが、鎧に阻まれる。
相手は頭を下げ距離を取ろうとしている。
逃がさん!
振り上げた両手を頭の上で二つの拳を合わせ体重と背筋、腕の力を乗せた打ち下ろしを行なう。
ガントレットが有るから怖くないモン。
潰れる前に、下げた頭のヘルムの後頭部、縁を持ち下げる。
首を下げられ腰を折った腹にひざ打ちを行い背中に鉄槌打ちを喰らわせる。
拳の跡が付く胴鎧の背中。
頭を押さえられた2位の騎士は腰を折ったままの姿勢で逃げることが出来ない。
無論、逃がさん。
「ぐぐぐ…。」
逃げようとするがヘルムを押さえているので、首紐が食い込み動けないハズだ。
鉄と鋼がぶつかる音が響く。
変形する鎧。
破断の時は近い。
剣は既に地面に落ちている。
「まて!!」
主審のまてが掛ったので上半身を半周させ2位の騎士を遠心力で転がす。
抵抗無く転がる2位の騎士。
地面に身を伏したまま動かない、呼吸はしている。
主審が近づいて相手を確認している。
動かない2位の騎士を見下ろしゆっくり呼吸を整え構えの姿勢を崩さない。
思わず赤毛のまな板、三枚下ろしシュミレートをして拳に力が入ってしまった。
夥しい胴鎧の背中の凹みをみる。
審判は膝を付いて呼びかけをしている。
反応は無い。
「試合続行不可能。勝者!魔法学園、オットー・フォン・ハイデッカー。」
「「えー」」
群集からの謎のどよめきが起きる。
腰に手を当て勝利のポーズを取る。
マスクの排気口からドレイン水を蒸気で放出する音が会場を支配した。(プッシュー!)
担架に乗せられる2位の騎士を横目に自分の控え室に戻る。
「「「オットーおめでとう。」」ございます。」
「ありがとう皆。イキナリ第一試合に当たったからヒヤヒヤしたぞ?」(コーホーコーホー)
窮屈なマスクを外す。
次はヘルム。
「あの…。煙が出てましたが…。」
布巾を持ったエミリーが訪ねながらヘルムを受け取る。
ヘルムの汗を拭いてくれるらしい。
気が利く子だ。
「ああ、湯気だ、マスクに水が溜まるので定期的に湯気にして排出する。」
改良マスクの性能だ、序でに廃熱もできる。
「そうなのですか?凄いですね(わけがわからないという意味。)」
椅子に座るとマルカが頭の汗を拭いてくれる。
濡れ布巾だ。
髪の癖も取って…。フワッ!!
エミリーが布巾に付いた髪を拾って屑篭に入れている!!
まさか!
両手で髪を撫でる。
「うっうう。すごいあせdふf」
手に付く戦友。
「オットーどうかしたのか?」
マルコが訪ねる。
「いや、厳しい戦いだった。」
「そうか?瞬殺だったろ?」
「ジョン、相手は軍学校の2位で俺が負けた相手だぞ?かなりの腕だ。」
戦友が…。瞬殺だった。
主に毛根に…厳しい戦いだ。
「大丈夫だ、未だ遣れる。」
そうだ、立ち上がるのだ。
その前に…。ヘルムの通気性を改良しよう。
渕穴か…。あの世界は理に適っている。
強度が多少落ちても通気性と軽量化なのだ。
翔ちゃん恐るべし!




