353.トーナメント初戦
当日の朝だ、今日は待ちに待ったトーナメントの開催日だ。
日の出と共に校庭に馬車が並ぶ。
トーナメントは軍学校の練兵場で行なわれる為、我々魔法学園の生徒は学園が手配した乗り合い馬車で向かうコトになる。
ピストン輸送だ。
但し、出場者は朝一番の馬車で向かうコトに成る。
まあ、準備が在るからな。
もう既に校庭に物々しい姿の生徒が集結している、ミソッカス共が固まっているので向かう。
「おはよう諸君。」
「「「おはよう、オットー。」」」
「皆、準備万端だな。」
「まあな、」
「オットー見てよ。間に合ったんだ。革の鎧下」
フェルッポが新しい革の匂いがするパッドジャケットを鎧の下から見せる。
黒ミノ太の革を柔らかくなめした物だ。
以前、フェルッポが売らずに欲しいと言っていた物が仕立て上がったらしい。
青銅の前掛けも良く磨かれてハーフヘルメットは王国軍の今のタイプの中古だ。
「おう、立派なモノだ、騎士に見えるぞ。」
「え?えへへへ。」
照れるフェルッポ。
「オットー、そんな装備で大丈夫か?」
「うん?何がだマルコ?」
「オットー。今回は何故か参加者が少ない、予選が無かった。トーナメントのくじ引きは当日朝だ一番、二番目の試合に当たると鎧を着ている暇は無いぞ?」
なるほど、だから皆朝からフル装備なのか…。
見渡せば、一部魔法使いの姿の軽装備の者も居る。
「おお、そうなのか?大丈夫だ、ガントレット(盾つき)、ヘルムを装備すればそのまま出れる。」
俺は黒ミノ太の頭巾に胴鎧の上に黒サイクロプスのサーコートだ。
「おいおい、大丈夫か?オットー、試合開始の時に居ないと失格負けだぞ?かなり恥かしいぞ。」
「まあ、大丈夫だろ、俺は意外にくじ運が良くも無ければ悪くも無い。」
とりあえずフラグは建てておく。
あの世界の鎧は脱着が楽だ。
よく考えて在る、一人で脱げるのだ。
試合前にヘルムと肩当、ガントレットを装着すればよい。
特にガントレットは最後にしないと細かい作業をする時にイライラするからな。
「おはようございます。」
「「「おはようロビン。」」」
ロビンが来た、皮の鎧に歩兵用のハーフヘルムだ。たぶん学園の貸し出し品だろう。
「おお、おはよう、ロビンお前との試合を楽しみにしているぞ?」
「い、いえ、大丈夫です、オットー様。ブロック分けされているので一回戦目で魔法学園の生徒同士かち合うコトは有りません。」
「そうだね、教師も参加しているから。大会主催者がくじ引きの箱をブロック分けしているんだ。運が悪いと初戦で向うの教師に当たったりするんだよ。」
前髪に続くカール。
「ああ、俺が昔当たった。いい勉強になる。」
「勝てなかったがな。」
ジョンの発言に睨むカール。
「まあ、向うの教師には勝てないよ?相手は退役軍人で百戦練磨だ。」
マルコが助け舟を出す。
「そうだ、胸を借りる気で打ち込めば良い、相手も怪我し無い様に捌いてくれる。」
「何故、教師も参加可能なんだ?」
学校行事で生徒の祭典では無いのか?俺が質問するとジョンが答えた。
「さあ?軍学校の規定だから…。噂では生意気な生徒を先生がボコる為の方便みたい。」
フェルッポが答える、なんだそりゃ?
「まあ、向うも指導の一環だ、手加減はしてくれる、何故か教師が最終日の…。本戦の8人を独占することは起きない。」
まあ良い。確かゲームでも俺が細工して主人公と対戦したはずだ。
意外と簡単に政治で変るのかも知れない。
「そうか…。まあ、勝ち進めば…。皆に当たるのだな。」
「そうですね。楽しみにしております。」
素直なロビン、あ、コイツ適当なところで負ける気だな。
まあ良い、逃がさん。
ドナドナ荷馬車に揺られて軍学校に付いた。
闘技場の前の広場、と言うか練兵場であろう。
無駄に広いな軍学校。
多くの人が集まり。食い物の出店や、土産物売りの者が準備を進めている。
「お祭りだな。」
「はい、軍学校ではもうトーナメント二日目なんです、昨日が軍学校の予選で朝からくじ引きです一番混み始める頃です。」
解説のロビン、お祭りなので大きな準備はもう既に出来ているらしい。
「参加者の方は広場、トーナメント表前にお集まり下さい。」
恐らく大会側の誘導員が叫んでいる。
「よし、早く行こうよ、人が多いと優雅では無いからね。」
前髪が優雅に急かす。
「そうだね、」
「見物客が集まる前にくじ引き会場行った方が良い。」
フェンデリック兄弟も同意見らしい。
「見物客?」
「明日の昼からは中の闘技場で試合を行ないます、入場料が要りますが、8人決るまではこの広場が試合会場です、入場料は要らないんです。」
「そうか…。入場料か…。」
ロビン情報だ、お祭りっぽいな。
「まあ、貴族と参加者の身内、軍人は必要ないけどね。王都の人が多く見にくるんだ。試合をココで吟遊詩人が歌って、勝てば英雄だよ?」
得意そうに前髪を触るアレックスに呆れた声のカール。
「娯楽だ、賭けしているヤツも居る。」
「俺はオットーに賭けたからな。」
ジョンが期待した顔だ、呟くマルコ。
「自分に賭けろよ…。」
「マルコ、俺の経験では今回は2回から3回目で教師と当たる。俺では勝てない。」
「今日の二日目を突破した魔法学園の生徒も最近居ないぞ」
「マルコ、俺は絶対に突破してみせる。」
カールが凄いヤル気だ。
「今日で20名以下まで減るからね?」
偉そうな前髪。
「そうだ、だから大穴を狙うんだ。」
力強いジョンの発言。
「そうか…。何処で賭けているんだ?」
「アレです、オットー様。」
ロビンが広場の向うの天幕を指差す。
なるほど…後で行こう。
「明日の昼からの試合は国王陛下も見にくるからね。」
「そうか…。出てくるのか…。」
とんぬら王子と国王が。
イカンな。娘と老メイドも居るかもしれない。
何か対策が必要だ。
まあ良い、後で考えよう。
試合開始まで時間が在るが人が多くなってきた。
段上の横で暇をもてあます。
「オットー様!」
「おお、エミリーにマルカ。それと…。逃げたヤツ。」
雑踏の中からマルカとエミリー、サンピンが出てきた。
「オットー様。逃げたワケでは…。」
「そうです、持病の腰痛の所為です。」
エドとデーニックだ。
どうやら理由を付けて辞退したらしい。
コレが”今回は何故か参加者が少ない”理由の一つだ。
俺は(魔法)学園の(出場者)が少ない。
ロビンは後が無いので参加だそうだ。
「オットー様、クランの仲間とは現地集合です。」
「そうか、エミリー。人が多い、気を付けろ。不貞の輩が居るかもしれん。」
「はい、大丈夫です。」
「エドとデーニックは今日は終わるまで、皆を護衛をせよ!」
「「はい!畏まりました!」」
敬礼するサンピンコンビ。
「マルカ、仲間から離れるな。ああ、今日の昼食代を出そう。皆とお昼をしなさい。」
マルカに銭を多めに渡す。
一緒にメモを受け取ったマルカはまじまじと紙を見る。
「はい…、判りました。」
「うむ、頼んだぞ?エドとデーニックはクランの者と合流して食事をせよ、銭はマルカに渡した。奴隷が大金を持つと何か言う者が居るかもしれんが、面倒な連中にあたったら俺の名を出せ。家で対処する。」
「「了解しました!!」その様なコトが無い様にいたします!」
脂汗を掻くサンピン。
王族から奴隷まで、有象無象が居るお祭りだ。
どっかの貴族のアホが因縁付けてくれば決闘だ!
いや、決闘は書類が面倒だから暗殺しよう。
運悪く流れ投げナイフに当たるだけの事故で終わるだろう。
「では参加者の方は年度毎に、魔法学園の方はコチラに集まってください。」
勝ち抜き戦のトーナメントくじ引きだ初戦は同じ学年同士がぶつからない仕様らしい。
まあ、勝ち進めば同じだが、教師同士もぶつからない、運が悪いと一回目から向うの教師だ。
順番に麻袋に入った木片を取っていく。
番号の書かれた木片だ。
「取った方は木片に所属、又はクラス。名前を記入後、木片を申請して番号札を受け取り、番号と名前を読上げます、呼ばれたら段上に上がり、トーナメント表に掛けてください。間違えの有った時はその時、必ず申請してください。」
なるほど、俺は88番だった、
かなり後だな。
総勢120名以上だ。
試合場は円形の線ダケで先に外に出たら負けらしい。
この広場には、14の円が用意されている。
俺の、88番が行なわれるサークル番号を確認する。
前の試合が終わり次第、次の試合を始めるので、終わるまで試合会場から離れるコトが出来ない。
しまった、祭りを楽しむコトが出来ないじゃないか?
出店を見て回ろうと思っていたのに。
渡された番号札は二枚で布に番号が書かれてヒモが四隅に付いていた。
ゼッケンだな。
「オットー、両肩に付けるんだ。邪魔なら胴鎧の前後ろだ。審判から見える所で、良い。」
カールが言う、ジョンと共にゼッケンを付け合っている。
「外れたらどうなるんだ?」
「試合中に外れるのは良い。試合開始前の審判の読上げには付けていないとダメだ。試合初め前に外すヤツも居る。審判に渡すんだ。」
マルコの解説だ、なるほど。
準備が進むが呼び出しも進んでいる。
マルコとアレックスと、順番に呼ばれて段上に上がる。
「88番、魔法学園、オットー・フォン・ハイデッカー」
「では行って来る。」
残ったジョンに声を掛けるが群集のどよめきにかき消される。
「がんばれよ、オットー。」
ジョンに手を振り。
軋む階段を登る、段上に上がると何故か群衆の目が俺に集中している。
何故かジョンがガッツポーズしている。
「88番、魔法学園のオットー・フォン・ハイデッカーでよろしいか?」
「はい、そうです。」
呼び出しの確認に答える。
クリップボードに記入する呼び出し。
段上から群集を見渡す。
あ、マーモットも来ている。
マルカ達は合流した様子だ、エミリーが手を振っている。
ラカスのヤツ、もう串肉をほうばってやがる。
軽く手を振り返す。
「では、自分の番号に木札を。」
「はい。」
巨大なトーナメント表の88番に俺の木札を掛ける。
進めばジョンと当たるかも知れ無いな。
さっきのポーズは恐らく勝ち進むと俺と戦うコトが決って居るからだ。
自分に賭けなくて良かったとか、そう言う意味だろう。
確かジョンは95番だった。
アレックスとマルコは番号が若い。
フェルッポとカールは別の枝だ、8人残るまで対戦は無い。
ちっ、ロビンのヤツ、一桁だ。
段から下がる、試合会場に向かわなければ。
団の下で青い顔した軍学校の鎧を着た生徒が居る。
87番のゼッケンだ、俺の対戦相手らしい。
「おう、お前の相手だ。お手柔らかに頼むぞ?」
笑顔で挨拶する。
「は、ハイデッカー様?あ、あの、軍学校騎兵科2年 62位グリュックと申します。」
声が裏返っている87番。
うん、イカンな、体が細い。
もっと喰って力を付けないと…。いや、騎兵は小さい方が良いのか?
「そうだ、ソコの三男で魔法使いだ。」
「ハイデッカー様は武器は何をご使用になりますか?」
そういえば何も考えて無かったな。
質問したいのは解る、今は腰の後ろに護身用の山刃しか下げてない。
「打撃武器だ。」
「はあ、攻撃魔法も併用ですか?」
「いや、お祭りなので攻撃魔法は控える心算だ。楽しく怪我の無い様に。だ。」
こんな密集した所で放つ魔法が無いので仕方が無い。
ほっとした顔の87番グリュック。
まあ、打撃武器とレイピアではリーチが違う。
剣の方が有利だ。
常識ではな。
むき出しの土に直径12m程度のサークル状に埋められた石。
ココから身が全て出ると負けらしい。
向かい合って第一試合の初めの戦いが始まった。
二年の剣士科と三年騎兵科の戦いらしい。
囲むサークルの外、すぐ端に置かれた丸太の椅子に座って眺める。
奇数と偶数に番号がふられているので。
目の前には対戦する87番が三年の生徒を応援している。
この会場に魔法学園の生徒は居ないらしい。
各自軍学校の生徒は自分の先輩後輩を身を乗り出して応援している。
つまり、椅子に座っているのは俺ダケ。
疎外感半端無い。
二年の剣士科の生徒が勝ち、審判が手を上げる。
イカンな、意外と早く決着が付く。
87番が悔しがり俺の隣りの生徒が席を立つ。
アレの次は俺か。
具足を装備する。
マスクはしない。
ゼッケンは引っ掛けるだけで試合前に審判に渡そう。
準備が整った所で試合はかなり長引いている。
正直、軍学校の生徒は体格がよろしくない。
もっと喰って育てるべきだ…。
あんな骨細ではミノ太の攻撃も受けるコトは出来ないだろう。
三年同士の戦いが終わって。
俺と87番の戦いだ。
ヘルムを被り、肩当、肘宛を確認する、最後は鎧のバックルだ。
ガントレットの感触を確かめる。
サークルの中に進む。
「次、第一試合、第一会場第三回目試合、87番、軍学校騎兵科2年 62位グリュック、88番魔法学園、オットー・フォン。ハイデッカー。前に!!」
観客から謎のタメ息が漏れる。
「オットー様!!頑張って!!」
ああ、エミリーの声だ。
群集の中で姿が見えないが手を振る。
獲物は黒ミノ太の鉄のメイスだ、コレが一番スタッフに見える。
87番を正面に見据える。
「87番、軍学校騎兵科2年 62位グリュック、宜しいか?」
「はい!」
「88番、魔法学園、オットー・フォン・ハイデッカー宜しいか?」
「はい!」
審判が87番の頭、肩、腕、腰を叩き確認している。
次は俺の番だ。
検査を受ける為不動だがメイスを見て止まる審判。
「88番、その武器は何か?」
「はい、打撃武器のメイスです。」
元気良く答える。
「おい、副審、予備のヘルムを!!」
叫ぶ主審に向かってヘルムが飛ぶ。
回転するヘルムをキャッチ、手でお手玉して、地面に置く主審。
「この、ヘルムを打って見よ。」
「はい!!」
唯のハーフヘルムだ、恐らく学校の備品だろう。
打撃兵器は、武器の自重だけで打つ物ではない。
体重、背筋、大殿筋。全ての力を指先、武器の先端に乗せるのだ。
重力に打ち勝つ!!
全ての破壊力が地面の何も入っていないヘルムに炸裂する。
無論、唯の鉄だ、特殊鋼ですら、鋼でもない。
破壊点を越えた力はヘルムの造詣を全て無視した断面を晒す。
つまり、鉄のメイスは全ての破壊の衝撃を伝えたのだ。
地面に突き刺さり、持ち上げたメイスから落ちるヘルムは、二度と戻らない破口を示したまま地面に乾いた音を立て転がった。
無言の時が過ぎる。
「88番その武器の使用を禁ずる。」
「はぁ!?」
「その武器は危険だ、他の武器を使え。無いなら標準の模造剣を支給する。」
ヘルムを投げた副審がレイピアを持っている。
おい!俺の戦闘計画が全て崩れた。
仕方が無いので、即応武器を用意する。
「で、では、武器を用意します。」
収納から予備の冬用靴下に50gの鉄の弾体を詰め先で縛る。
20個まで入らなかったが1kg弱だ。
数回は何とか成るだろう。
「準備できました!」
「88番、何だ?その武器は?」
「靴下です。」
「は?」
「いや、ソフト棍棒?スタッフの一種です。」
「判った。」
主審が俺の身体を、鎧を触り点検する。
引っ掛けたダケのゼッケンを主審に渡す。
「では、87番と88番の試合を開始する!!」
「初め!!」
主審の掛け声で87番が正面に構えた、レイピアが俺の喉元を狙う。
そんな判り易い攻撃はフェイントだろう、と思うが。
右手のガントレットで弾き、手甲と盾の間に切っ先を挿む。
擦れる金属同士が火花を散らす。
そのまま腕の力で切っ先を外に逸らし。
驚いた顔に右上から鉄球が入った靴下を振り下ろす。
しなりで加速した靴下の先が亜音速に近づいてヘルムに着弾する。
ちっ、浅いな。
角度が悪い。
目が良い87番が頭を伏せる動作をしたので靴下がヘルムの曲面に流される。
降伏限界点を越え、破断した金属が…。
構造上の弱点であるリベットの穴から亀裂が延びる。
頭から外れるハーフヘルム。
糸の切れた人形の様に倒れる87番。
俺は腕を振り抜く事に成功したが浅かった。
破断したヘルムを晒し動かない87番。
二歩下がる。
たぶん死んでない。
息はしている、白目だ、痙攣している脳震盪だ。
素早く判断する。
主審は待ての合図を出し叫ぶ。
「衛生兵!!衛生兵!!」
全てはスローモションの様だが、担架をを持って走る兵。
「しっかりしろ!!87番!!」
膝を付き、倒れた生徒のヘルムを外し頬を叩く主審。
「脳震盪です。動かさない方が良いと思います。」
目を見開き、まるで魔物を見る様な主審。
仕方がないのでサーチを続ける。
「頭蓋骨は折れていません。脳を揺らされたので気絶しています、脳幹内の血管が切れたかどうかは経過を見ないと判りません。」
「死んで無いのか?」
87番が激しく痙攣して口から泡を吹いている。
コレはヤバイ。
「いや、なんとも。コレから死ぬかも?」
「何を!!」
キレる主審。
「ああ、では蘇生しましょう。下がってください。」
収納から、未だ試作でコピーのクリップボードを出して屑宝石の一番大きい物を挿む。
87番に向け魔力を通す。
魔力的な光に包まれる87番。
おお、クリップの宝石は崩れ去っている、初めて生物で成功した。
「…ハイデッカー様は武器は何をご使用になりま…え?なに?これ?」
身を起こし何事も無い様に喋る87番。
「大丈夫か!!87番!!自分の名前は言えるか!!」
「え?はい。教官殿?なぜ?ココに?私は軍学校騎兵科2年で、現在62位のグリュックです。」
なるほど、どうやら二時間チョイ前の87番らしい。
良かった、ハエが混じるコトは無い様子だ。
絶望の顔の主審に囁く。
「あー、恐らく頭部に衝撃を受けたので記憶の混乱を受けていると思います。数日間は安静にして経過と…。激しい運動は避けるべきです。(棒)」
「なんだと!!88番!」
「あー、俺は治癒魔法が使えます。先ほどの魔法です(棒)」
「そうか、判った!衛生兵!!救護所に運べ!」
「え?あの、試合を!」
抵抗する87番からゼッケンを剥ぎ取る主審、有無を言わさず担架に縛り何処かへ運ぶ衛生兵。
「勝者!!88番」
主審から預けたゼッケンを返される。
やった!初戦突破だ!!
手を挙げ勝者の賛美を受ける。
しかし、群集は無言だ。
勝者への歓声を受ける栄誉は無かった。
くそう。
グリュックは卒業まで”靴下で負けた騎士”と言う称号を得た。
割れたヘルムは”栄光の奇跡”と言う軍学校の収蔵品に加えられたらしい。
なお、翌年からのトーナメント大会要綱に、”靴下等を武器に使用する事を禁ずる。”とのルールが追加され、軍学校の新入生が混乱する事態になった。
(#◎皿◎´)戦は打撃だよ兄貴。
(´・ω・`)…。(常識的な数字ではない。)




