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番外編.フランク・フォン・ハイデッカー戦記4

(´・ω・`)フランク戦記終わり。

喰い終わった4人が谷を出て何処かへ向かっている。

斥候の交代だな。


合図を送り、そのまま斥候を片付けに闇に消える軍曹達。

隠れた軍曹以下の分隊が暗闇の中で片付ける。

音も立てない。

此方の斥候を片付けた兵が戻って来た。

手に血に塗れた盗賊の装備を持って帰って来た。

素早く着る兵。

盗賊の姿に偽装した兵が谷を進む。

その後ろに付いて歩く突撃隊。

谷の先に篝火の光が揺らめいている。

”斥候2名。””行け。”

前の兵と合図を送る。


「よう、他のはどうし…ガッ!」

「げ!だれガッ」

排除した様子だ。

敵の門を確保した。

未だ敵に察知されていない。

柵の中に滑り込む兵達、周囲を警戒する。

鳴子が敷設されていたが枝で無力化する。


偽装した兵は盗賊の服を脱ぐ。

全て上手く行っている。

恐ろしいくらいだ。


軍曹以下の別働隊(バックアップ)が攻撃地点に着いた様子だ。

暗闇に蝋燭の光が明滅している。

おそらく、あの位置からなら魔法使いと弓の別働隊とも連絡は取れて居る筈だ。

小隊長が深呼吸している。

剣に掛けた手が震えている。

そうだろう、俺も怖い。

心の中で悪い想像が沸き立ち、恐怖が足元から這いずり上がる感触だ。

理性で殺す。

「やれ。」

命令を聞くと全ての恐怖が消える。

小隊長の小さな声で剣を抜き兵が前に進む。

何も話すことは無い。

「な、何だ!お前等!!」

「盗賊共!王国軍だ!!剣を捨て投降しろ!」

小隊長が叫ぶ。

くっそ!!

コイツ等!肉喰いやがって!

焚き火を囲む十数人の男達は驚いて固まっている。

鎧を着て無い、目を見開きマヌケな顔でコチラを見ている。

奇襲は成功だ。


「て、敵襲!!」

兵では無い誰かの声だ。

その声に反応して、剣を掴んで鞘を捨てる盗賊たち。

無言で一番近い剣を抜いた男にレイピアを突き立てる。

嫌な感触だ。殺った。

今、俺は一番敵に殺られ易い状態だ。

周囲を警戒して次の敵を探す。

胸に刺さった。レイピアを不思議そうに眺める盗賊。

「な、おめ、がっ」

口から血を吐き倒れる男。

「ちっ灯りを消せ!」

奥に座った男が立ち上がり剣を抜く。

茶色の髪を後ろで束ねた髭の男だ。

胴鎧を着ている。

別の盗賊が鍋を蹴り中身が焚き木に落ちる。

谷に広がる煙と肉の香り。

くそっ!!

「アイツが頭目だ!」

叫ぶ小隊長、剣で目標を指定する。

一斉に谷の上から矢が飛ぶ。

腕や足に刺さるが致命傷は鎧に阻まれる。

「くそ!ヤッチマエ!!」

「「「ウラー!」」」」

弓を構えた盗賊が炎に包まれる。

味方の魔法攻撃だ。

アイツ、ホントに魔法使いだったのか。

揺らめく炎の光の中、乱戦になるが、戦友達との連携を散々叩き込まれた俺には楽な仕事だった。

盗賊を追い詰める。

「これ以上の抵抗は無意味だ。投降せよ!」

小隊長が血で濡れた剣を盗賊に向ける。

「くっそ!つかまっても殺されるダケだ。おめえら!覚悟を決めろ!!」

「「「へい」」」

頭目が荒い息で命令している。

盗賊の戦意は未だ在る様子だ。

「…。」

無言で一歩を踏み出す。

「お。おい、何でお前等何も喋らないんだ?」

怖気づいた盗賊に指摘されるまで気が付かなかった。

口を開くと今までの鬱憤が噴出しそうになる。

だが…。だれかが口を開いた。

「おめえら…。肉喰いやがって…。」

「はぁ?」

「肉だ肉!!」

「肉入りのスープだ!!」

「肉入りの粥だよ!!」

「焼いて脂の焦げる様な肉だよ!!」

皆、堰を切った様に叫ぶ兵達。

「な、何を言っているんだ?」

動揺する盗賊たち。

俺は叫ぶ。

「くっそ!こんな事トットと終わらせてやる!キャベツなんてでえっ嫌いだ!!」



その後、炎に照らされた狭い谷での殺戮の饗宴は終わった。

盗賊の装備や備品を剥ぎ取り、埋葬等の整理が終わるともう既に日が昇る頃であった。

兵達は疲れ果て腰を下ろしてキャベツを毟っている。


くそっ、又キャベツだ。


鹵獲した剣や胴鎧は纏めて並べて小隊長と魔法使いが検分している。

魔法使いが手をかざすと消える。

かなりの数がある。

箱型馬車の中には食料は無く雑貨や布しかない。

恐らく略奪品だ。

軍に押収されるが遺族が見つかれば返却されるだろう。

勿論、手数料は取る。

なので、一部は負傷した兵の包帯に使った。


その後、俺達は森を抜け、街道にでた。

国境近くの村に着くと既に本隊の別働隊が駐留していた。

もう既に森を出た第二中隊の一部とも合流できた。

ココで第一中隊と集結する予定だ。

狭い村なので全員は収容できない、俺達は村の外でテントを張って駐屯だ。

「おい、本隊が敵の頭目を捕捉して討取ったらしい、恩賞は剣が1本ずつ貰えるらしいぜ?」

嬉しくない。

肉が喰いたい。

樽に腰掛け、目の前の街道を他の小隊の連中が歩いていく。

恐らく到着したばかりだドコの中隊だ?

まあ、どうだって良い。今、俺に出来ることはキャベツを毟って口に運ぶコトだけだ。

「おい、良いモン喰ってるな。」

気が付くと前に何処かの小隊の兵が立っていた。

見たこと無い顔だ。

顔色が悪い。

「あ?やらねえぞ!」

コレは俺のキャベツだ!

タメ息を付いた兵は腰袋から干し肉を出した。

「コレと交換しないか?」

「な、なんだと!」

俺の目は赤黒い塊から目が離せない。

白い脂が蝋の様に艶めかしい。

思わず唾を飲む。

俺の小隊の兵(戦友)は皆視線を反らす事が出来なくなる。

「い、イイのか?」

「ああ、良いぜ。俺達第一中隊は王都を出てからずっと、干し肉ダケだ。農家出のヤツが食べられる野草を取ってきてスープにしてたが、ソイツが怪我で後方に送られてから灯火禁止も有って。このまま食べてる。正直見たくも無い。」

「俺のも交換するぜ?」

第一中隊の面々が集まってくる。

別の兵が遠くで叫ぶ。

「おーい、軍曹殿が農家の女将に掛け合って麦が一袋と大鍋を借りたってよ!!材料をだせ!!シチューにするってよ!!」




「肉の入ったシチューは最高だ!!」







「ハイデッカー少佐。戦闘日報です。」

「ありがとう、ソコに置いてくれ副長。」

執務室の机に書類を置く副長。

我々は敗残兵狩りの一部の部隊を残し王都に帰還した。

治安回復は順調の様子だ。

今は報告書の作成と戦費の清算書、損耗した物資の稟議書等で大忙しだ。

「何とか勝ちましたね。」

「当たり前だ。副長、盗賊如きには負けんよ。」

「盗賊の装備ですが…。胴鎧は此方の剣を完全に防いだそうです。お陰で思ったより損害が出ました。」

「市販品の帝国製か…。」

「はい、かなり纏まった数を鹵獲しました。全て同じ物です量産品ですね。」

「困ったモノだ…。」

移動中に待伏せを受けたなどの場合を除き、敵より多くの兵をぶつけるコトに成功した。

これも全て機動力のお陰だ。

多くの馬を動員した為、素早い移動が出来たのだ。

物資輸送の為に魔法使いを街道で往復させたため、多くの物資を戦地に送るコトも成功した。

馬車の荷を少なくして速度を上げ、歩兵を走らせるコトも問題は無かった。

ただ、各方面からも苦情が多かった。

書類に目を落す、抗議の申告書だ。

主に、商業ギルドと馬車組合からだ、馬を徴発したコトによる苦情。

「一個小隊に魔法使いを付ける方法は確かに成功でした、補給無しに森を踏破した部隊が分散した盗賊の拠点の奇襲に成功しています。ただし…。」

「配給品目まで手が回らなかったな…。」

「はい、兵にかなりの不満が出たそうです。」

「う~む。」

補給量に問題無かった。

問題は補給品目だ。

副長の持って来た戦闘日報に目を通す。

「まあ、準備が足りなかったのです。」

「そうだな、準備が足りなかった。」

馬も食料も武器も足りていない。

「拠点間の物資輸送に付いては問題が在りません、王国軍で標準になれば恐らく、魔法使いが足りなく成るでしょう。」

魔法使いもか…。

「魔法使いの軍での採用を増やすか…。」

「そうは簡単に集まらないでしょう。魔法学園の卒業率は4割を切っています。絶対数として足りません。」

「まあ、無い物ねだりだな。スクロールの追加購入だが…。」

「其方は予算が通りそうです。今回の事は各町の領主も喜んでいます。物資の供出が我慢できる程度に抑えるコトが出来ました。」

「そうか…。ソレは良かった。コレからも柔軟な運用が出来る。行軍の頭痛のタネが一つ減る。」

「そうですね、軍の魔法使い全員に渡るまでは十数年は掛るでしょう。まあ、古参の魔法使いが輜重兵の様なコトをやるとは思えません。若い魔法使いからでしょうが…。」

「上に要望を出そう、色々準備を進める必要がある。次の戦いの為に。」


報告書に目を通す。

盗賊団の参加者は王国の広範囲に広がっている、王都の出身者も居たそうだ。

一斉に蜂起したのに、参加した者は1年以上も前から準備していた者も居る。

捕虜の尋問では、かなり長く王国内でスカウトを行なっていた形跡が在る。

ゴロツキだけでは無く金に困った冒険者崩れも居た。

武器を受け取り盗賊団で戦闘訓練を受けた者も居たそうだ。

かなりの組織だ。

唯の盗賊団では無い。

何所かに指令部が在るはずだ。

物資の調達と命令指揮系統が無いと兵の訓練は不可能だ。

盗賊の根拠地に、その様な施設は無かった。

王国の市民で組織された盗賊団の根拠地は恐らく帝国側だ。

(盗賊)の頭目は誰かから手紙を受け取っていたとの証言も在る。

確証は無い、帝国で暴れまわった盗賊団が王国に逃げ込んだダケかも知れない。

果たして偶然だろうか?


家に帰った時、あの小さな子供だったオットーが大人になっていた。

王国軍や帝国軍の装備に関して随分と知りたがっていた。

オットーが話したコトを思い出す。

帝国は必ず攻めて来ると。

だが、その前に必ず何らかの行動を起すであろうと。

進攻地の地形、街道、物資。

敵の数。

これ等を何らかの方法で探りに来るだろうと。

なるほど、どれも指揮官が知りたい情報なのだ。

大軍を動かす苦労を知っているなら必ず探るだろう。

コレはオットーの言う前触れなのだろうか?

まあ良い、軍人は戦争が仕事だ、その為の準備なぞ苦労のうちに入らない。

(´・ω!(チラッ)

 ε=!(サッ)

(´・ω・`) 次も番外編!

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