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番外編.フランク・フォン・ハイデッカー戦記2

毛布に包まって皆で身を寄せ合い夜の寒さに耐えた。

朝になり固パンと干し肉で腹を満たす。

馬車が無いので、朝の補給が受けられない。

勿論、天幕は馬車の中だ。

携帯食料は未だ有るが水の補給が出来ない。

「こりゃ、酷いコトになるな。」

「ツィーゲ!黙れ!」

叱咤が飛ぶ、呟いたダケだが伍長に聞こえたらしい。

地獄耳だ。

「昼には宿営予定地に着くように。ソコで補給を受ける。」

「マジかよ…。」

思わず呟く、昼すぎるぞ?水無しか?

「落伍した者はその場で友軍の馬車を待て。全員!駆け足!」

皆へろへろに成りながらも水場の在る宿営地に付いた。

大休止だ。

昼飯を食べ泉から水を補給した。

「水筒が、もっと要るな。」

「ツィーゲ、重くなる止めとけ、荷物は少ない方が良い。水は口を濡らすダケにしておけ。ココから先、町まで水場は無い。」

「そうか…。判った。」

コイツはたしかこの先の町の出身だと言っていた。

「このままだと明日には町に着いちまう。まさか国境まで走るワケじゃないだろう?」

ぼやく仲間。

「ココからなら…。今の調子で走っても日没までは無理だ。歩きで3日の距離だ。」

大休止が終わる頃だ。

「後方、馬車!」

誰かが叫んだ。

「うちの中隊の馬車だ。一両だけだな。」

「そんな…。まさか?」

荷物を満載していたはずだ。

追いつけるハズが無い。

「補給を受け取り次第出発する。予定より遅れている。急げ!!」

中隊長が叫んだ。

予定…て。

こんなに強行軍は初めてだ。

落伍兵が出るだろう。

敵に遭遇しても戦えるか判らない。

馬車から食料を受け取る。

携帯食料ばかりだ。

どうやら他の馬車から積み替えたらしい。大鍋も天幕も積んで無かった。

「休憩終わり!整列!駆け足!!」

号令で出発する。

馬車は残す様だ。

馬を休憩させている。


俺達は、又、野宿して落伍者を出しながら草原を駆けた。

倒れこむ様に町に着いたときはもう夜も更けようとしている頃だった。


屋根の下、馬屋の中で目を覚ましたらもう既に日が高かった。

朝一番で落伍した兵達が馬車で追いついたらしい。

うちの第一の連中は既に出発したと聞いた。

本隊もだ、馬だけでどうするんだよ…。

「昼食後、出発する準備せよ。」

伍長が命令を持って来た。

皆、タメ息を付いている。

まだ走らせるつもりらしい。

まあ良い。朝と昼は暖かい物が食える。





本隊を追いかける我々の中隊は遂に指令部の在る町に着いた。

一日中走り、昼に携帯食を受け取り、宿営地で落伍した兵を拾う馬車に追いつかれる。

これを繰り返している。

この頃になると、我々もかなり熟れた物で、無理をしない様に落伍者を決めて重いが今は特に使用用途の無い物を持たせた。

順番にサボるのだ。

そうでもしないと毎日は走れない。

途中、荷を全て馬車に積んで兵は身軽で走ってはどうか?と進言したが流石に却下された。

お陰で怪我で動けなくなった兵は皆、町に収容された。

行方不明者は出なかった。

連日の強行軍でココまで少ない損耗は誇っても良いだろう。


本隊の連中は情報収集で走り回っている。

もう既に一部の盗賊と交戦した連中も居るらしい。

「錬度の低い盗賊だ、なのに装備が良い。」

そう、兵達の間で噂が飛んでいる。

第一中隊の連中が待伏せを受け死人が出たらしい。

怒った少佐殿が自分付きの中隊を指揮して占領された村を襲撃、盗賊の首を跳ねて廻っているらしい。

俺達は休憩で再編成中で作戦実行待ちだ。

盗賊団は連隊規模のかなりの数だ、しかも小隊規模で分離合流を繰り返しているらしい。

悪い噂が多い。

少佐殿が怒っている。

最悪だ。


又、馬が戻って来た。

悪い報せだろうか?

小隊長が戻って来て俺達の小隊を集めた。

「コレより我が小隊は他の小隊と協力して森を突破する。幾つかの開拓村を警邏する。一部には盗賊の拠点に成っている村も考えられる。襲撃に注意せよ。村民に盗賊の協力者がいる場合はこれを殺害しても良い。」

嫌なコトを言う小隊長。

たぶん後半は絶対に少佐殿の命令をそのまま伝えただけだろう。

副長殿はそんな命令を出さない。

命令を下した小隊長も嫌な顔をしている。

うちの小隊長は軍学校出たばかりの貴族の子弟だが、ソレほど悪いぼっちゃんじゃ無い。

あの少佐殿ほどバリバリ出世はしないだろうが。

運が良いので死ぬことも無いだろう。


編成を受けた我々の小隊は森を進む。

広い森だ。

恐らく踏破するのに10日間は掛る。

俺達の小隊に魔法使いが1名派遣された。

魔法使いの足に合わせての進攻だ。

大丈夫だろうか?


結局、警戒しながらの前進なので速度の問題は出なかった。

森の中を距離を測り、藪を書き分けながら進むのだ。

しかも敵の勢力範囲の中だ、どうしても遅くなる。

装備は軽い。

魔法使いが装備を全て魔法で収納しているのだ。

お陰で常時3人の兵が魔法使いの護衛を行なっている。

途中の開拓団の村は事前の情報通り放棄されて居た。

無人の村を捜索する。

村人は全員町に退避した、残っているヤツは盗賊だ。

荒らされた形跡がある。

食料も何も無い。

盗賊は逃げたのだ。

追跡を行なうコトになる。

しかし、行軍4日目遂に問題が発生した。

「干し肉はこれで終了です…。」

「食糧が無いのか?」

焦る小隊長。

「いえ、食料は在ります。干し肉が無いのです。」

「判った。」



皆が安堵するが。




…地獄の始まりだった。

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