344.脂肪フラグ
ミソッカス共と寮に戻ると食事前にサロンでお茶をした。
ワゴン一杯に焼き菓子の山だ。
十数枚づつ油紙に包まれヒモで縛っている。
そういえば注文していたな。
「凄い量だなオットー。」
「ああ。お前らも収納しておけ。誰か下の者に頼む場合に贈ると良い。非常食に使っても良い。」
「良いのか?オットー。」
「マルコ、魔法で収納しておけば悪くならない。つまらん用事を誰か知らぬ者に託すのに金で雇うより心象が良い。」
「そうだな。」
「貰い受けよう。」
ココの焼き菓子は甘いので甘味に飢えた庶民のウケが良い。
あの邪教の子供達にも受けるだろう。
何せお肉の人では外聞が悪い。
小出しにすれば…。
良い袖の下になる。
皆、包みを10個づつ収納した様子だ。
未だ山は減らない。
幾つ作ったんだ?
全て収納する。
イベントが起きないので大した話は出なかった。
イラつきロールパンを無視して夕食を取り。
就寝時刻までに部屋で鎧を完成させた。
朝になった。
さて、教授に授業に出ろと言われたので次の日ぐらいは朝から学校に行こう。
何時もの日課を済まし朝食を取る。
マルカと共に寮を出た。
校舎の前に仰々しい4頭引きの馬車が止まっている。
我が家の紋章だ。
何時か見た痩せた初老の男が馬車の前に立っている。
随分と小さくなったが…、間違いない。
我が家の者だ。
遂に来たか…。
「御久しゅう御座いますオットー様。私、王都での邸宅の留守を預かっております。ヒンメルと申します。」
「おお、ヒンメルか、久し振りだな。小さくなったな。」
名乗って顔と名前が一致した。
母と親父が居た頃に見た顔だ。
「オットー様も見違えるほど大きくなられました。」
「まあな、鍛えたからな、以前に会ったのは何時だったか…。」
「お母上様の葬儀の時です。」
「そうだったな。俺もあの時は未だ幼く良くわからなかった。」
「いえ、大変気丈なお姿でした。」
沈痛な顔のヒンメル。
冗談が通じなさそうだ。
記憶の中のヒンメルはもう少し色が濃かった。
白髪と皺が増えた様子だ。
「さて、コレから授業なのだが何か有ったのか?」
面倒事なのは一目で解るが、揺さ振ってみる。
「お父上様のユリウス様が昨日、王都に到着されました。ついてはオットー様にご用件があると。」
「父上が?手紙を出したハズだが読まれたのか?」
「はい、その件でもっと詳しく聞きたいと。取り急ぎお迎えに参った次第で御座います。」
「そうか…。困ったな。」
周囲に生徒が遠巻きに見ている。
辺りを見渡す。
あ、ロールパンが薄ら笑いで窓からこっちを見ている。
やはり来たか。
フラグは立ったのだ。




