35.放課後図書室
「さて、各自、自己紹介も終わったコトだし。」
「あの。マルカのご主人。そちらの方は…。」
気が付くと口から泡を吹いているロビン。
よーっし。ヒールだ!!
ダメだ、未だ意識を手放したままだ。何て根性の無いヤツだ…。
『ヤア、ボクハろびん!深遠ナルオットーのトモダチダヨ!!』
手と首を動かしながら鼻で喋る。
「あの、オットーさま、思いっきり口が動いて…。」
ちっ!コイツ気が付きやがった!!
なかなか侮れないヤツだ。エミリー!!
「ああ、済まない。俺は未だアンデッド・ゴーレムが作れないんだ。」
正直に話す。
何故か全員ドン引きする。
「まあ、イイ。死んでも頭(脳)から直接情報は引き出せる。問題は無い。」
もちろん効率は落ちる。
全員が俺から一歩飛びのいた。
「冗談だ。」
誠意とジョークは社会の潤滑油だ。
「ドコからなんですか?」
追撃する黒髪ロリ。
「ああ。概ね、そうだな、死体は動かせない、新鮮な頭なら生きている時に見たものを引きずり出せる。」
魔法使いが魔法結界を張り始めた。
そんな物は通じない。
相手の魔法障壁を無効化する。
何故か皆、驚いている。
「おう、俺は腹が減っているんだ。積る話はテーブルでしよう。おい、起きろロビン案内しろ。」
ロビンのシナプス回路に渇を入れる。
「っふゃ?今、死んだお爺ちゃんが!!川の向こうで!!」
「ソレは幻想だ!俺は腹が減っている。すぐに食券を用意しろ。命令だ、大盛り10人と麺1だ!!」
銀貨一枚を渡す。
「了解しました!取り急ぎ食券大盛り10麺1調達します!!」
走り去るロビン君を見送る。
「どうだ?なかなか奇特な青年だろ?」
何故かこの場の全員がイヤイヤしていた。
カフェテリア式にイマイチ熟れないお坊ちゃん方のゴタゴタは在ったが何とか席に着けた。
貴族6人の向かいには平民と奴隷の4人で、まるで就職面接の様相だ。
お茶を用意するロリ。
イモと鳥肉のトマト煮込みと丸パン、イモが溶けて無くなっている。その分スープにとろみがある。
サラダはキャベツの酢漬けの様なコールスロー。スライスしたタマネギと香草が乗っている。
麺類はキャベツとキノコ&ベーコンのスパゲティだった。
なぜか混んでいるのに回りに生徒が来ない。
コチラを見ると、まるで、森の中で熊でも見たような顔になって後ずさりしている。
アレックスが食事の音頭を取る。
「へえ、悪くないじゃないか?」
興味深そうに周りを見渡すアレックス。
全員大皿サラダ付きを選んだ。俺は+麺だ。
どう良いのか解からない感想だ。
「おい、量が多いぞ。」
フェルッポ、お前は細すぎだもっと食べろ。
「そうか?こんなもんだぞ。」
カールは、さも当たり前の様な顔だ。
「我家でもこんな感じだ。」
流石辺境男爵家のカール&ジョン乳兄弟。軍人の家だな。
「え~。」
フェルッポは何かイヤ気だ。
空気が悪くなる前に止めよう。
「フェルッポ。軍隊に入ったら毎日コレかソレかのどちらかだ。戦時なら軍人の食い物なんか家畜の餌と見分けが付かなくなるぞ。」
大皿と麺の皿を指差す。
「そうなの?」
全員が頷いている。
ロリは首を傾げているがくっコロさんも頷いている。そうか帝国も同じか。
「そうか~。」
しぼむフェルッポ。
「フェルッポは将来軍人になるんだよな?」
「兄さん止めてよ。昔の話だよ。」
「そうか?でも未だ諦めてないんだろ?コイツ身長と体重が規定に達していなかったから軍学校に入れなかったんだw」
「止めてよ兄さん!!」
身内の恥の暴露大会になってきた。まあ、ココでは家族の様なモノなのか?我々は。
「安心しろ、フェルッポ、野菜と肉と魚と豆を喰えば大概はデカくなる。」
拳を作ってみせる。
「ぼく、野菜と魚キライ。」
「人間の内包する魔力の源は食べた物だ、しっかり喰って体を動かすのだ。しっかり喰わないと魔力回復も遅い。魔力回復ポーションが飲み薬なのはソノ為だ。」
「そうか、よし!!」
何か心に折り合いを付けたらしい。
「オットー、お前が言うと心強いな。」
マルコが感心している。
「まあな、喰わないとデブに成れないからな。」
もし、デブが少食なんて言っても誰も信じないだろ?
「え、オットーが太ってるのってワザとなの?」
驚くアレックス。
「単純に俺の体質で魔力が一番出る体型がコレなダケだ。」
ホントだよ、デブの言い訳じゃないよ。食べないと力が出ないんだ。
「よし!!太るぞ!!」
「止めとけフェルッポ。お前はオットーのようには成れない。」
心配して止めるマルコ、流石、兄貴分。
「そうだな、フェルッポで俺の体型では内臓が持たないな。筋肉つけるともう少し魔力量が上がるんじゃないか?」
「お、俺は!!」
「俺は、どうしたら上がるんだ?」
身を乗り出すカールとジョン。必死だ。
「こいつら、今までこんなに勉強熱心だったか?」
アレックスがマルコに尋ねるが。
肩を竦めて首をふるマルコ。
「あ~、お前らはもう一杯一杯だ、量での延びしろはあまり無い。」
元々コイツ等は魔法使いとして完成しつつ有るのだ。
テーブルに沈む乳兄弟たち。うん、ウザイな。すぐに復活した。
「なあ!魔法教えてくれるんだろ!!」
胸の前で拳を握るカール。
「あ?ああ、昨日の話か?午前の授業で説明しただろ?」
「あんな概略じゃなくてもっと、ガッとビャーとする魔法だよ!!」
そんなフニャっと魔法は知らんぞ?
「そうだよ、期待してるんだ。」
「僕も知りたい。」
「放課後、図書室だろ?」
「約束は守れよ。」
コイツラ覚えてやがった。
「そうか、解かった。放課後、図書室だ。」
「頼むぞ。」
「期待してるんだぞ。」
「「俺たち後が無いんだからな。」」
そうすると準備が必要だな。
丁度いい、
「ベスタ、寮の雑務は一人で頼む。マルカ、放課後に魔法の基礎訓練をする手伝え。図書室へ来い。」
「はい、わかりました。」
「え?、は、はい、」
クールなくっコロさんとレイポ目のロリ。”そんな、数人を…。私、一人で…。”
ブツブツ呟くロリ、ああ、そういえば…。
「あの!!申し訳ありませんが!!その基礎訓練に私も参加させて下さい!!(魔法は)初めてですが頑張ります!!」
いきり立つ黒髪ロリ。
”ええっそんな!初めてを複数で!”
「おいおい、基本科のヤツが…。」
「よし解かった。参加を許可する。」
びっくりする、フェルッポ、未だ若いな。平民の出すぎた行為に抗議したかった様だがそうはいかんよ。
人数を数える。うん、丁度、良いだろう。
「マルカ安心しろ、もっと簡単で確実な方法を見つけた。体の負担は無い。痛い思いもしない。」
「え?あ、はい、良かった。」
レイポ目から復活するロリ。
いったい何を。
ああ。大丈夫だ、お前にそんな事するのは俺だけだ。
(´・ω・`)
オットー君はお医者さんゴッコのやり過ぎだと思います。




