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336.ライバル2

武器屋の裏手の路地で…。

思い切って10本の剣を出す。

もうヤケクソだ。

店の扉を開けると節穴親父が満面の笑みだ。

「ふう、今日は日が悪い。」

扉を開けたまま潜らず進路を変える。

「いやいや、待てよ、坊主。待ってたんだぜ?話をしようや。」

背中に声を掛ける節穴親父。

「俺は、特に話すことは無い。」

「おいおい、コレは、俺にも、お前にも客にも良い話なんだ、聞いてからでも悪く無いぜ!」

「何だ。何の話だ?」

「銭になる、人が助かる。誰にも迷惑は無い。」

俺は翔ちゃんの知識で”自分は誰にも迷惑を掛けた事が無い”と言う人間は信じない事にしている。

ソイツは大概に置いて、他人の迷惑に鈍感なダケだ。

ソイツの代わりに誰かが頭を下げている。

ソイツが知らないだけだ。

翔ちゃんが頭を下げる係りだったからだ。

コイツは疫病神だ、ハゲの冒険者並の疫病神だ。

「話すことは無さそうだ。」

「おいおい、聞けよ坊主、お前さんの剣が王国軍の目に止まったのさ。凄いコトだぜ。」

「くだらん。」

思わず肺の中の空気を全て吐き出し答える。

「おーい、先は王国のお抱え鍛冶頭だ。すっげえ出世だぞ?」

「高々そんな話か?俺はレイピアなんて作らない。王国軍は弱兵だ、帝国の辺境軍にも勝てない。」

カウンターの節穴に啖呵を切るが店の入り口から声が掛る。

「おや、随分な物言いですわね。この…。「あ゛!?」 あっ!ごめんなさい!!」

一瞬にしてドアーが閉まる。

「何か居たか?」

親父の顔を見るが肩を竦めるだけだ。

一瞬赤毛のひんぬーが立っていた様な気がした。

「さあな?取り合えず、王国軍の城兵から剣100本分の注文が来た。1本金貨30枚までだ。」

金貨3000枚の大口だ節穴親父の目が金貨しか映らないのも理由が在るのだ。

「ソレだけか?」

「ああ、あと、お前さんの剣は飛ぶように売れている。その剣売ってくれるんだろ?」

何か可笑しいと思ったら、節穴親父は入店した時から俺の肩の剣しか見ていなかった。

しかも、半笑いだ。

銭にしか見えてない。

こういう状態の商売人は往々にして、穴に嵌る。

翔ちゃんの知識だ。

しかし、知能は有るハズだ。

「残念ながら年内は無理だ。材料が無い。作業場が必要だ。」

「おいおい、そりゃ無い。」

「形も不明だ。俺が作れるのは刀身だけだ。」

「拵えは職人に心当たりが有る。安心しろ。形は…ああ、コレだ。コレで良い。」

節穴は以前納めた片刃直刀の切っ先がかます形の剣を出した。

「その剣は戦争用では無い。鎧は抜けるが傷は浅い。」

「そうなか?」

「ああ、魔物用の剣だ。フルプレート相手では勝てない。」

特に、スピード特化したこの国の剣士には無理だろう。

パワー系の武器だ。

「困ったな。」

考える節穴。

しかし、金額が大きい

「先に見本を数本作って来る、気に入ったヤツを100本作ってやる。」

「受けてくれるのか?」

「ソコソコの敵に対抗できる剣の刀身を持って来よう。1本、金貨20枚で受けてやる。拵えと研ぎは任せる。納品は年内だ。」

俺も来年は親父だ、手持ちが多い方が良い。

はい、どうせ一日で出来ます。

「すまんな。坊主!お偉いさんには話を通しておこう」

「実は俺も最近出費が嵩んでいる。悪く無い仕事だ。全力を出そう。」

「そりゃ、有り難い。実はな坊主。この剣を見てくれ。」

節穴親父は1本の剣を出してきた鞘に納まっているが、帝国の剣だ。

「帝国製の剣だな。」

「判るのか?」

「まあな。」

書いてないが帝国式の作り方だ。

可笑しな話だが意外と作ったヤツの性格が出る。

見ただけで帝国の臭いがプンプン漂う形だ。

ロングソードに近いが片手剣としても使えるだろう。

「流石だな、コイツは有る顔見知りの兵隊が持ち込んだヤツだ。」

「何でソイツがこんな剣を?」

「盗賊討伐での戦利品らしい。恩賞で貰ったがソイツは方々のツケの払いの為に俺の店に売った物だ。」

「恩賞ねえ…。」

「使い方が判らないらしい。」

「なるほど…。使い方か…。」

あの、近衛の密集戦術(ファランクス)を思い出す。

練度の高い散兵に会えば包囲撃滅だろう。

親父から剣を受け取る。

鞘を抜く。

刀身は直刀、両刃。切っ先まで先細りだ。

鍔は付いているが小さい、柄頭も小さく皮の紐が房になっている。

一応は鋼の剣だ、浸炭だと思う。

「ロングソードの類だが。刺す切る両方に対応した剣だ。」

「流石だな、武器博士だ。」

「騎兵用でなく歩兵用だな、盾を使わない。軽装甲兵用だ。」

「ソコまで判るのか?」

「いや、似た様な剣を見たことがある。」

「そうか…。」

深刻な顔の節穴。

「何か有ったのか?」

周囲を気にして小声で話す節穴。

「いや、この剣は王国軍の鎧を貫くらしい。」

「そうだろうな。恐らく胸中装甲を貫くように作られた剣だ。」

即答する。

「判るのか?」

「この剣は兵対兵の戦いに特化した剣だ。盾を持った相手に正面切った戦いを想定した物だ。騎兵からの打ち下し等の剣では無い。」

「ソコまで判るのか…。やはり坊主に頼んだのは正解だな。」

感心する節穴親父。

但し、この剣は乱戦や一対多に対応した剣では無い。

「大体は判った。この剣を持った敵に勝てる剣が欲しいのだな?」

大概に置いて兵とは自分の武器持っている武器を防ぐ程度の装備を常識としている。

無論、防ぐとは重症と擦り傷位の間がある。

死ななければ兵は勝つのだ。

「そうだ、お前さん剣はお前さんの言う通りに帝国の鎧を貫いたらしい。国軍は帝国兵を倒す剣を欲している。」

「無理だ。」

「は?」

「王国軍の装備や戦術では帝国軍には勝てない。」

”ガタッ”

物音で店の玄関を見ると…。

まな板赤毛がドアーの隙間から覗いて聞き耳を立てている。

なんの隠れキャラだよ…。

「取り合えずその背中の剣を買おう!!」

はい、10本金貨200枚で売れました。

腹いせに樽のワゴン全部買い占めた25本追加!!

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