322.ギルド支部2
食事が終わり、皆と別れる。
冒険者姿のベスタと共に、ポーンでエンリケの店の前まで飛ぶ。
店の前に立ち暖簾を潜る(比喩的表現。)
「失礼する。」
「いらっしゃい…。お帰りなさいませ。オットー様。」
イレーネが出迎えた。
お帰りか…。
まあ、良いだろう。
「準備はよいか?」
「はい、全ての商品は積み込みが終わりました。」
「娘はドコだ?」
「いま、ブランと一緒に馬車の荷を確認しているところです。今日はもう三回も数えているんですよ。」
「まあ、初めての行商だ。ソレくらいの慎重さは有って良い。」
「フフフフフ。」
嬉しそうなイレーネ。
何かを思い出しているのであろう。
「ご主人いらっしゃい。」
ブランが店の奥から飛び出てきた。
無表情だが尻尾は激しく振っている。
「ブラン、いきなりドコに…。あ、オットー様。」
「おう、娘、準備はよいか?」
「はい。バッチリです。」
「よしでは、冒険者ギルドへ行って仕事の依頼と、馬を取りに行くぞ。」
「はい!!」
「わかりましたご主人。」
「ブランあんたは留守番。」
「えー、ではご主人と留守番します。」
「俺はギルドに用がある…。」
「おぼこだけで大丈夫です。」
「ブラン、オットー様を困らせては行けませんよ?」
「はい、お母様。」
尻尾がピンと立つ。
なるほど…。群の順位は絶対らしい。
娘とベスタで冒険者ギルドへと向かう。
二階に上がると、なるほど…。昼下がりの冒険者ギルドは閑散としている。
受付で依頼書を出す。
コレで話が早く進むハズだ。
しばらく待たされると困惑した表情の受付嬢が遣って来た。
「あの、オットー様。冒険者ギルド監察員からお話を聞きたいと申し出が在ります。」
何だよ又、ギルドのイチャモンか?
いい加減に飽きた。
「何が問題だ?特に大したコトは無いだろう。」
「詳しい事は監査員からどうぞ。」
又、登録した時の痩せたメガネの男だった。
何のフラグだ?
「何か有ったのか?」
「オットー様。ドラゴンを倒したそうですがその報告書が出ていないのですが…。」
「報告書だと!?何の話だ。この魔物は我が邦国で倒した物だ。俺は当主である父上から全ての動物を狩る許可を受けている。何の報告が要るのか述べよ。」
「いえ、ギルドへの報告です…。」
「既に、炭鉱の町の代官代理殿には報告済みだ。知らせは受けてないのか?」
「いえ、その様な知らせは…。」
「なるほど…。ならば其方の事務的な問題だ、良きに計らえ。」
「あの…。討伐した危険な魔物には報告の義務が有ります。」
「聞いてないぞ?」
「はい?」
「俺はギルド登録した時の契約書にはその様な規約は無かった、何時書かれた義務だ?」
そうだ、ランクが無しの時にはサービスが受けられないが義務も無いのだ。
だから信用も無い。
俺は翔ちゃんの記憶によりダイヤを売りつける怪しいお店の餌食にならない様に、細かい字で書かれた契約書を全て見る様にしている。
後、エウリアンと戦う為だ。
「え、あの…。」
「どちらにしてもコレは高度な政治的な事柄だ。平民の扱うコトでは無い。」
「いえ、冒険者の行なった事です。ギルドの扱う事です。」
厳しい目のメガネ。
なるほど…。引かないか。
恐らく銭に成る事なのだろう。
「なるほど…。解った。」
「解っていただけましたか。」
勝った表情のメガネ。
仕方が無い、強攻策に出よう。
「冒険者ギルドは危険な魔物の情報を隠蔽して我が邦国を危険に晒した。コレは我がハイデッカー領に対する敵対行為である。」
「な、何を…。」
うろたえるメガネ。
身に覚えが有るらしい。
そうだよな。ドラゴンの目撃情報なんて隠蔽できるハズが無い。
あの、代官代理のうろたえ方を見れば間違いない。
コイツ等は知っていたのだ。
「北の炭鉱の町ではドラゴンの目撃情報が有ったが王都及び我が邦国に何等情報を流さなかった。コレは領主の領民に対する保護の責任を恣意的に妨害する物である。」
「いえ、情報伝達は時間差が有る物です。」
「では、何故俺が報告の義務を怠っていると考えた?出先で報告を行なっているかも知れぬだろう。」
「いえ、ソレは…。」
「フムン、まあ良いだろう寛大な処置を取ろう。俺は炭鉱の町で既に代官代理殿に報告済みだ。多くの城兵達も見ている。ソレは文が届けば解ることだ。」
「は、はい。」
「では、改めて聞こう。俺はドラゴンを倒しドラゴンの情報を炭鉱の町で聞いた。何故だ?」
「いえ、あの…。」
「お前は何時の時点でドラゴンの情報を聞いたのか?コレは我が邦国の安全に付いて重要な事柄だ。返答に寄っては冒険者ギルド全体が我が家の仇名す者と覚える。」
「ソレは…。」
メガネの胸倉を掴む。
顔が触れるほどの距離まで引っ張る。
「答えろ!!返答しだいでは、この建物の女子共を含め全ての生物の首を跳ね窓から飾ってやる!安心しろ、コレは全て俺が個人的に行なう私刑だ、全てが終わった後に王国の判断に任せる。但し、ドラゴンを葬った魔法と言うものを存分に見せてやる。人の
形を…。」
「オットー様。護衛任務の登録を。」
ベスタが話を折った。
しまった、つい思わず熱くなってしまった。
「ちっ、まあ良いだろう、あんな雑魚トカゲの所為でこんなに騒ぐコトでは無い。あの程度のドラゴンで騒ぐな。」
メガネの胸倉を開放する。
床に転がり咳き込むメガネ。
「よく覚えておけ、あの程度の雑魚なら100も200も狩って見せてやる。」
顔色が青いメガネを見下す。
タカが雑魚ドラゴン一匹だ。
未だ、鉄2のインゴットが未だ1000個以上在るからな。




