319.学園天国
さて、朝が来ると…。
シーツの上の戦友を数える仕事が始まる。
日常が戻って来たのだ。
少々長めのトイレで悶絶する。
大丈夫だ…。こんな時には丹田を廻すのだ!!
ダメだ!慢性の刺激物には対応できない!
くっ殺せ!
ふう、油汗を掻いたが何事も無く終わった。
何事も無く鏡台の前に座る。
「フハハハ、相変わらずの悪人顔だな。ゲームのままだ。」
自分の顔に挨拶する。
いや、ゲームの俺はもっと丸っこい印象だ。
今の俺は相撲レスラーに近い。
しかし、相撲レスラーは髷が結えなくなると引退する非情なルールが有る。
俺も…。いや、確か翔ちゃんの記憶では”町人”の様な髪形になっても頑張っている相撲レスラーも居たはずだ。
俺はこの学園にしがみ付かなくては成らない。
「失礼します。」
ベスタが入ってきた。
未だ時間ではないが物音で起きたのだろう。
「おはようベスタ。依然話した通りに明日の朝に商隊が出発する。今日の昼、昼食を食べた後にギルドへ行くコトに成る。」
「はい、解りました。」
「ベスタ、こちらへ…。」
「はい。」
ベスタを抱きしめ耳にささやく。
「しばしの別れだ。必ず無事に帰ること。イザとなったら娘を馬に乗せ、馬車を捨てても構わない。」
「はい、了解しました。」
うん、良い香りだ…。少々カレー臭いが。俺も同じだから問題は無いだろう。
「し、しつれいします。あ、あの。」
マルカが桶を持って入ってきた。
驚いている様子だ。
「マルカも来なさい。」
「は、はい。」
マルカも抱きしめる。
うむ、仄かにスパイシーな香りがする。
そうだ、俺の女達を守るのが目標だった。
主人公なぞ関係は無い。
俺はこの先生きのこって、家を建てて女を侍らして一生遊んで暮らすのだ。
貴族も軍も王族も、その為の手段でしかない。
帝国も主人公も、このゲームでさえ利用してやる。
例え主人公に負け、雪辱に塗れ様と…。
守るものは在るのだ。
もう貴族のプライド等捨てても良い。
敵対する者はメテオストライクで消そう。
このクソゲーで、俺は俺のハッピーエンドを目指すのだ。
新たな決意で洋々と朝の鍛練でミソッカス共をボコる。
一揉みすると、乳タイプ兄弟を前衛にした連携の練習を行なう。
様は、二人対俺だ。
流石に勝てない。
「やった。勝てた…。」
「おい、弟よ、恐らくオットーは手加減している。」
「え?そうなの?」
「そうだ、コレはお前等の連携の練習だ、俺なら連携できない状況に引きずり込む。」
「えー。」
「そうだろうと思った…。オットーがあの斬り込みを受けるコトはしない筈だ。」
呆れるカール。
「綺麗に決まって居たからな…。オットーと対戦すると調子が狂わされて投げ飛ばされる場合が多い。」
「ジョン仕方ないだろ?一対多の場合に戦いを有利にするにはソレしかない。止まらないことだ、別を言えばこっちの数が優勢の場合は相手の足を止めるコトを考える。」
「オットーはアレックスとの対戦の時ぐらいしか本気出さないからな。」
「マルコ感心してないで。止めさせてよ。」
「アレックスは仕方が無い、何時もお遊びの感覚が抜けてない。コレでは帝国兵と戦う前に魔物に殺される。」
”いや、帝国兵とは戦わないよ?”
アレックスのツッコミを無視て話しを続ける。
「よし、では次はアレックスを全員で倒してみよう。」
「「おう!」」
「え?ちょっと待ってよ!!」
「行くぞ、アレックス!」
「覚悟!!」
乳タイプが率先して攻撃を加えている。
うまく受け流すアレックス。
なるほど…。未だ上品な剣捌きだ。
「ちょっと待って!アーッ。」
倒れたアレックスの骸を見下ろし、皆に解説をする。
主に、飛び込むタイミングの話だ。
一度実戦を経験した男達は積極的に意見を出し合っている。
うん、すんばらしいぞ。
ソレでこそ未来の小隊長だ。
時間も迫って来たので皆を並べて訓示を行なう。
「さて、諸君、実戦に近い訓練を行なうに当たって。備品の消耗が激しいと思う。ソレで、使い捨ての剣を支給する。」
「え?」
「オットー、剣が有るのか?」
「いや、僕、持っているから。」
騒ぐミソッカス共を制する。
「魔物相手では武器をかなり乱暴に扱うコトに成る。その為に貴重な剣の消耗や、逸失が起きても仕方が無い状況だ。」
「うむ、確かに予備の剣は必要だ。」
「なので、まあ、ソコソコの剣で無くなっても惜しくない剣を支給する。」
収納から鋼ロンダした剣を取り出す。
「え?剣貰えるの?」
「フェルッポ、強くなるためには剣を何本もダメにしなければならない。その為にダメにして良い剣を渡す。」
「そうか、オットー。」
「助かるが…。俺にはこの剣がある。」
「まあ、予備の剣が有るなら心強いが。」
「僕、ドラゴンスレイヤーが有るから…。」
「まあ、切れ味はアレだが、頑丈さはソコソコだ、壊れたらソコまでの剣として使ってくれ。」
皆に手渡す。ベスタにもだ。
「「「了解。」」家宝に相応しい。」「必ずや、この剣にてお役目を果たして見せます。」
いや、そんな大層なモノではないぞ?




