317.分け前
サロンの中は人は疎らだが、テーブルの一つがミソッカスの占領下になっている。
挨拶を交わし席に付く。
オットー進駐します。
メイドがお茶を用意して下がる。
「オットードコ行ってきたの?」
「フェルッポ。鎧下の注文に行ってきた。後は、皮なめし屋だ。皆で倒したのを銭にしてきた。」
「おおそうか…。」
「いくらに成ったんだ?」
「僕、倒してない。」
「二匹で手数料引いて金貨7枚だ。」
「結構高いな…。」
「えーっと。5人で割っていいの?」
驚くフェンデリック兄弟。
「5人で割ると金貨1枚銀貨2枚か?」
首を傾げるカールに、指折り数えるジョン。
「まあ、そんなところだな。」
「二匹で金貨1枚と銀貨2枚か…。革の鎧が10匹分だ。」
「フェルッポ、プレートも入れると20匹分だぞ?」
「うーん、20匹倒せば…。剣も…。無理か。」
「弟よ大変だぞ?その前に怪我する。先に無理しても防具は揃えるべきだ。」
「兄さん、こんなことならスクロール買わなきゃ良かった。」
「僕は、家に手紙を出した。早馬で送ってもらう。予備の剣も含めてね。」
得意そうな前髪。
「いいなあ、兄さん鎧どうするの?」
「既に手紙に書いてある。送ってもらう手筈でもう届いても良い頃だ。」
「えー、いつの間に。」
「トーナメントに参加すると決めた時に手紙を出した整備とサイズを直して貰っていたんだが…。」
取らぬミノ太の皮算用が終わったようなので話をする。
「では皆に報酬を払おう。」
小銭を含めて皆に渡す。
「やった!初めて働いて稼いだお金だ。」
「弟よ無駄遣いはするな。」
「おお、ありがたい。」
「よっし!剣まで一歩近づいた。」
「僕、倒してないけど。」
「アレックス、お前は予備で何か在れば飛び込んで貰う心算だった。」
「え?そうなのかい?」
勿論嘘だ。
こんなに死亡フラグ溢れるヤツは前に出さない。
「当たり前だ。全力で掛るヤツがいるか?ヤバクなったらアレックスと俺で牽制して、皆を逃がす算段だった。」
「そうだよねえ。やっぱり考えているよねえ。」
途端に機嫌の良くなる前髪。
うん、ウザイな一生壁に向かって歌を歌っていろ。
「綺麗に倒せば一匹金貨5枚だ、別に手数料が取られるが。」
「難しいコトを言うな…。」
「綺麗に倒せって…。魔法使えないじゃん。」
「急所刺しても簡単に死なないぞ?」
「剣が抜けなくなるから無理だ。」
「首を切れば簡単だ。」
「簡単に言うなよオットー。」
「そうだよ、ふつう首なんて簡単に切れないよ。」
「そうか?コツを掴めば簡単だ。」
「いや、やめてくれオットー、そのコツは聞きたくない。たぶん眠れなくなる。」
アレックスが珍しく真面目君だ。
頷くミソッカス共。
「そういえば。オットー。今日午後から武器屋に行った。」
「ほう、カール何か良いモノが有ったのか?」
「いや、良いモノは有ったが高くて買えなかった。」
「カールとジョンと僕と、兄さんで行ったんだ。鎧と剣を見に。」
アレックスを見る。
「まあ、僕は家に在るからね。」
お茶を飲み、肩をすくめるアレックス。
なるほど…。ムサイ男達の買い物はイヤか。
「ソレで、武器屋の店主がオットーに”また来てくれ。”って。急いでいるみたい。」
「あ?」
どっちの武器屋へ行ったんだ?
高い剣なら貴族の方の武器屋だ。
節穴の方に高い剣は粗大ゴミしかない。
「オットー、俺がナイフを買った店だ。」
「ああ、”fusiana”さんの店だな。」
「”FUSI…”?、店主がまた頼みたいって。言っていた。」
「古い剣を売って小遣いにしていたからな…。もう、在庫は少ないのだが…。」
「オットー古い剣在るのか?」
「カール。難在りの剣しかないぞ?たぶん店主は修理に出して売ってる。」
「そうか…。良い剣が在ったが…。流石に金貨40枚は高い。」
残念そうなカール。
「うん?安い剣無かったのか?」
「無かった。売れた様子だ。」
「随分と流行ってたからな。」
「うん、前来た時よりお客さんが居たね。」
「冒険者ばかりだった。お陰で革鎧を売ってる店を紹介してもらえたな。」
「うん、その後に革鎧を作って売ってる店に行ったんだ。一番安いので金貨5枚だった。」
「王都は高いな。」
「品物は選べるほど在るんだが…。高めだ。」
苦々しい顔の乳タイプ兄弟。
そうか…。下調べした後か…。
しかし、何の用だ?節穴親父。
何かフラグが立っているのだろう。




