315.洋裁1
金物屋を出て特に用も無いのに町を歩く。
特に何と言うコトは無い。
このゲームは金貨5枚でガチャが引ける…。
高いか安いか解らないが、元を取るのに手間が掛かる。
もうじき昼だが…。一人で店に入る度胸が無い。
屋台で買うのは問題無いんだ…。
ただ、あの狭い店に入る度胸が無い。
ガラの悪い店なら問題無いのだが…。
全て消費してしまった梨を一箱補充した。
ナッツを売っている店が有ったので松の実と樫の実を一袋づつ買う。
松の実は生でも渋皮を剥いて食べるらしい。
樫の実は炒ってから硬い皮を剥いて食べる。
まあ、スナックだな。
一袋12kg銅貨5枚だった。
微妙な金額だな…。木の実
俺は素材に埋まった銭を掘らなければ成らないのだ。
ぼちぼち歩いてエンリケの店に着いた。
「失礼する。」
「いらっしゃいませ、ご主人。お食事にしますか?種付けにしますか?」
何故かブランが女中姿で店番をしていた。
「飯は食べてないが…。ソレは用法を間違っているぞ。」
「おかーさま、お食事が先だそうです。」
店の奥に向かって叫ぶケダモノ娘。
「なあに?ブラン。さっきお昼は食べたでしょう?」
「ご主人見えました。」
イレーネが出てきた。驚いた顔だ。
艶やかな唇が動く。
「あら、オットー様。ごきげんよう。お食事されますか?」
うん。食べたい。
「ああ、食事は未だだが、実は用が在ってきた。服を仕立てたいので布が欲しい。」
「あらあら、どの様な服を作ります?」
「鎧の下に着る服だ。チュニックとズボンだな。襟付きポケット付だ。仕立て屋も紹介して欲しい。」
「大概の物でしたら私でも出来ますが?」
「そうか…。実は注文が多くてな。この様なモノだ。」
デザイン画を見せる。
「まあ、コレは…。手が掛りますね…。」
厳しそうな顔のイレーネ。
グッと来る。
そうだろうな。ソーイングマシンが出来る前は全て手作りだ。
「うむ。ソレで布は強いものが良い。ソレこそ帆布でも良い。」
「はい、ソレは宜しいのですが…。」
「色は黒で。」
コレは譲れない。
「黒…ですか?色落ちが早いのでお勧めしませんが?」
「恐らく。直に擦り切れる。長持ちはしない筈だ。」
「はい…では、採寸を…。」
イレーネが肩に手を掛け密着する。
恐らく自分の体でサイズを測っているのだろう。
「おかーさま、手伝います。」
前から首に手を回し、頬ずりする狼耳メイド。
「ブラン、これは遊んでいるわけでは無いぞ?」
「えー、おかーさまだけずるいです。」
「オットー様、動かないで下さい。」
イレーネは背中から採寸している様子だが、ブランは自分の匂いを擦り付けているだけだ。
木の板にメモ書きするイレーネ。
「さあ、次は下を。」
「はい、おかーさま。上は任せてください。」
密着する母娘。
「あんた達何やってるの?」
娘が出てきた…。
「あら、トリーニア。オットー様がお食事が未だの様です、ご用意して。」
「おぼこ、あっち行って下さい、おぼこが移ります。」
「移るか!!」
「娘。旅の準備は進んでいるか?」
「む、ええ、進んでいます。コレからも仕入れ先に行くところです。」
「おぼこ、仕事ができました。一人で行って下さい。」
「あ。ブランあんたね!!」
「トリーニア、オットー様のお食事の準備をお願い、わたしは、オットー様の服を作る仕事を頂いたの。」
「お母さん。解ったわ。食事の準備が出来たら出かけるから…。早く済ませてね?」
「はい」
「おぼこ、ゆっくりしていってね。」
暗い顔で奥に引っ込む娘。
良いのか?
採寸が終わった母子がむっちりした身体を寄せてきた。
「良いのか?」
「はい、採寸は問題ありません。」
「大丈夫です。今、おぼこが裏口から出ました。」
本物の耳を動かすブラン。
「そうか…。」
激しく採寸し合った。




