312.ドラゴンバスター
撲殺天使による牛のタタキを収納して出発地点の部屋まで戻った。
机の上のタイマーゴーレムとの時差は無かった。
気のせいなのか?
まあ学園に戻ってから結論を出そう。
アレックスが戦えなかったのが不満そうだが。
「そんな装備で大丈夫か?」
と訪ねたら。
「一番良いヤツを持ってくるよ…。」
と拗ねていた。
まあ、布の服で接近戦を行なうのはアホのすることだ。(自分のコトは棚に上げる。)
俺も鎧を揃えないと…。一番イイヤツをな…。
「そうだな…。今回で解った。俺は予備の剣が必要だ。」
「ランタンも欲しい。」
乳タイプ兄弟の反省会だ。
「兄さん、僕。鎧が欲しい。」
「弟よ…。そうだな…。父上に作ってもらうか?」
「間に合わないよ兄さん。革の鎧でも良いから買おうよ。」
「フェルッポ。既製品でも後で鉄のプレートを付けるタイプが売っているぞ?」
「ホント?ジョン。」
「ああ、冒険者用の動きやすさを求めた物だが…。そんなにしなかったハズだ。」
「うーん、この前のスクロールでお金使っちゃったからなあ。」
残念そうなフェルッポ。
「ああ。そう言えば皆。倒したミノタウロスはなめし屋に売る。売った金は皆で分ける。」
「やった!」「おお。」「助かる。」「僕倒していない…。」
皆がやる気を出す。拗ねる前髪。
「7人で分けるのか?」
「いや、俺は魔石を貰う、銭は要らない。ベスタは俺の配下の者だ。お前等で5等分だな…。」
「いいのか?オットー?」
ジョンが訪ねる。
「そうだな…。この洞窟は宝石が出るらしい。ソレは皆で欲しい物を取り、売った物は分けよう。」
「いや、オットーが良いのならソレで良いが…。」
「俺の欲しい物は魔石、鉱物、宝石、この順番だ。魔物の肉と皮は特に要らない。勿論、俺が選ぶ優先権を貰う。」
「そうか…。解った。」
納得するジョン。
「一応、この洞窟の使用権は今は俺に有る。魔物は外に出さないこと、洞窟自体を破壊しない事。ソレさえしなければ後は自由だ。」
「凄いねオットー。何時でも狩りに来れるの?」
「ああ、そうだぞアレックス。実戦経験を積む為に設えた。ミノタウロス位しか出ないが底のほうはもっと強力なのが居る。」
「オットー凄いじゃん!」
「戦闘訓練で金も入るのか?」
「新しい剣も買えるぞ!」
フェルッポ、ジョン、カールが喜ぶ。
「まあ、その分危険だ、一人でミノタウロスを狩るコトが出来るのを目標にしよう。その銭で装備を整えろ。」
「「「おう!」」」
方針は決った。
「ミノタウロスの革って良いのかな?」
「革の鎧では聞かないが…。伸びに強くて厚いから革鞄や靴底に使うと聞いたな…。」
「うーんそうか…。やっぱり買うか…。」
フェルッポが何かを考えている。
「獲った物で欲しい物は言ってくれ。売る前に渡そう。ケンカしないように。では学園に戻るぞ?」
「ああ、良いよオットーココは埃っぽい。」「いいぜ。」「又くるんだよな?」「次は準備しておこう。」
フレンド登録を確認して全員で飛ぶ。
一瞬にして寮の中庭だ。
縁石に置いたタイマーゴーレムを止める。
手元のゴーレムの半分しか進んでいない…。
やはりダンジョンの中は時間の進みが違うのか…。
「オットー、サイクロプス見せてよ!」
考えているとフェルッポがワクワクした顔で来た。
「おお、約束だったな…。」
そうだな。見せるか…。
順番に中庭に並べる。
一種類一頭で良いだろう。
選べる5色、5体の首ナシのオッサンが並ぶ。
最後にグリーンドラゴンだ。
「こんな所だ…。」
「う、でかいな。」
「サイクロプスなのか…。」
「全部首が無いね。」
カールとマルコがまじまじと横たわるオッサンを観察している。
「おい、オットーこの魔物はなんだ?」
ジョンが半身に近い空飛ぶトカゲを指していう。
「それは、グリーンドラゴンだ。ドラゴンでも一番弱いヤツだ。」
「えー、コレがドラゴンかー初めて見た!」
「オットー。ドラゴン…。倒したのか?」
食いつきが違うフェンデリック兄弟。
「ああ、魔法で一撃だ。」
「オットー、そんな魔法を僕に…。」
「アレックス、光が出る魔法じゃないぞ?そうだな…。今度見せてやる。」
「いや、いいよ止めとく。何か眠れなくなりそうだ。」
「オットー!試してみてよいか?」
乳タイプの小さい方が興奮気味だ。
剣に手を置いている。
無言で頷く。
「フン!…。なるほど…。剣が通らないな…。」
死んだドラゴンに剣を突き立てるカール。
売り物だが、ココまで破損していると買取値はそう変らないだろう。
「お、俺にもやらせてくれ。」
ジョンも興奮気味だ。
「良いが。上手くやらないと剣が刃こぼれするぞ?」
「解った!」
剣を振るが鱗に弾かれた、傷を付けたダケだ。
「刃こぼれはしていないが…。この剣では無理なのか…。」
刃を確認するジョン。
ジョンの持っている剣は中々の物だ。
この世界の普通の剣は折れるか刃先が割れる。
「やった!切れた!」
アレックスが小躍りしている。
「えー凄いアレックス。どうやったの?」
「この剣は凄い。ドラゴンの皮も切れる!!」
ダルガンの剣を持って喜ぶアレックス。
なるほど…。浅いが確かに切れている。
見事だな、前髪。自分の力で斬ったのではないぞ、その剣の性能のお陰だというコトを忘れるな?(負け惜しみ)
「くっ!アレックス、良い剣を貰ったな。」
「そうだな。名刀だったのか…。父上にお伝えせねば。」
何故か悔しがる乳タイプ兄弟。
「あれは、そんな良いモノではないぞ?」
「いや、何時かはドラゴンを切れる剣は欲しいだろ。」
「そうだぞ?良いのかオットー。あんな名剣を手放して。」
「いや、アレは…。」
元はゴミから俺が作った物だぞ?確かに拵えは名人作だが…。
「凄いね。ドラゴンバスターの剣なんだ…。」
驚くフェルッポ。
包丁でも切れるぞ?
「オットー。この剣大事にするよ!!」
「そ、そうか。アレックス。頑張ってその剣でドラゴンの首を落せるように練習に励め。」
「わかったよ。オットー。」
ダルガンの剣を掲げて喜びの舞をするアレックス。
うん、ウザイな。”12Kg鉄2”弾体を撃ち込みたくなる。
「オットーどうするんだ?このドラゴン。」
「そうだな…。マルコ、実は先の課外授業で随分と出費が多くてな。コイツを売って銭の足しにするつもりだ。」
「そうか…」
何か考え込むマルコ。
「えー売っちゃうの?」
「オットー、ドラゴンの革は中々手に入らないぞ?」
「そうだぞ?一部は持っていたほうが良いと思うぞ?」
たしかにそうだ。
「しかし、こんなの雑魚だからな…。」
「雑魚って。」
調子に乗っていた前髪が沈む。
「まあ、その内に又、沢山手に入るだろ。」
「いや、ドラゴンなんて沢山居ないから。」
珍しくフェルッポが突っ込みを入れる。
「そうだぞ?オットー。」
「そうだぞ?オットー。鱗一枚くれ。」
乳タイプ兄弟も参加した。
「ああ?そうだな。一部は貰っておくか。鱗は良いぞ?取っておけ。」
「「「ありがとうオットー!」」家宝にする」
ドラゴンの死体に群がるミッソッカス共。
「くっ取れない!」
カールが鱗と格闘している。
くっ取れ騎士(見習い)にペディナイフを貸す。
「切れ味が良いなこのナイフ。」
次々に鱗を剥がすカール。
”何でそのナイフ、ドラゴンの革が切れるんだ?”
前髪のツッコミは無視する。
「凄い。コレがドラゴンの鱗か…。」
「本物のドラゴンだ。一生自慢できるな。」
「うむ、我が家の家宝に相応しい。」
「カール何に使うんだ?」
「居間に飾るダケでも良いだろう。」
大きな鱗だ。
「靴べらに使うと良い大きさだぞ?」
たしか、向こうの世界の住人の使い方だ。
「「「「いやいやいや~」オットー」そりゃないよ。」仮にもドラゴンの鱗だぞ?」
「そ、そうか…。まあ好きに使ってくれ。」
おかしいな…。いや、向こうの世界が変なんだ。




