303.帰還1
さて、夜が明けるとベスタとマルカが部屋の片付けを行なっていた。
そうだ。今日は帰る日なのだ。
皆でゆっくり朝食を食べていると女中が今日の予定を話してくれた。
なるほど代官代理は見送りをしてくれるらしい。
飲み物を持っている女中が代理殿の託を囁く”オール・オーケー”だ。
すばらしい威力だ黄金色の菓子。
それぞれの荷物が馬車に積み込まれる。
倒したうさぎを俺が買い取った形で皆に小遣いを渡したので
町で土産を買った様子だ。
皆旅装束だ。
馬のハーネスと馬車を点検する娘。
ソレの後ろに付いて確認するベスタ。
五日間の旅で随分と様になっている。
目つきの悪い馬も大人しい。
「うむ、どうなる事かと思ったが。何とか成った。」
ザーバが感慨深く言う。
「未だ終わっていないぞ?コレから王都への帰り道だ。」
「オットー様の魔法で一っ飛び。じゃあ無いのですか?」
「ああ、魔法使い殿。昼まで歩く。ソコから学園前に飛ぶ。」
「了解しました。だってよザーバもう少し仕事が残ってる。」
「うむ、了解した。」
「やべぇ、仕事が残ってる。」
「全員忘れ物は無いか?もう一度確認せよ!」
「「「はい!」」もう何回やったか…。」
ぼやくダーク少年。
「では、教授。出発します。」
「了解した。最終日だ。各員充分に気を付ける事。」
「「「はい!」」はーい。」
「おい、ラカス!気を抜くと怪我をするぞ!!」
「大丈夫だよ。モーガン気にしすぎ。」
「死亡フラグ…。」
「あ、なんだって?クーリョ。」
「なんでもない…。」
弓を持ったオカッパ少女、矢筒の弓の数が増えている。
補給したのか?
「お昼は如何しましょうか?」
「軽く、お茶とパンだな。もしくは王都で食べよう」
「王都の方が良いです。ココは高いよ。」
うんざり顔の金髪ウェーブ垂れ目のっぽのヴェッタ。
なるほど、倹約家なのか?
「うーんでも面白いよ?この町。」
金髪ショート少女シェールは悪戯っぽく笑う。
「あまり良い所じゃないわね…。帰りは何か魔物が出るのかしら?」
うんざりした顔の39番、赤毛のポニテ剣士ペルーラさん。
ソレはフラグだろう…。
「王都への街道は比較的に安全だそうですツノウサギ位しか居ません。途中の峠越えると森にオーガが出るそうです。」
巨人は森の中か…。
キャンプ中か?
「うさぎさん…。」
「そうだな…。うさぎを狩るのも良いかもしれない。」
全ての準備が整うと宿をでる。
兵の護衛付きだ。
王都に繋がる門に到着すると、ガナドルが満面の笑みで出迎えた。
「オットー様。熊の魔石でございます。」
包みを広げて見せるガナドル。
石の下に紙がある。
”坑道の権利書と廃坑時の地図でございます。”
こっそり話すガナドル。
良いぞ悪代官代理。
「うむ、良い取引であった。問題は無かったか?」
「はい、何も問題は御座いません。大変良い取引でした。」
「そうか。又世話に成るかも知れん。」
「はい、その時はお声を御掛け下さい。」
包みごと魔石と紙を収納する。
”遊び人の金さんにもよろしくおねがいします。”
声を潜めて呟く悪代官。
笑顔で頷く。
うむ!良い笑顔だ…。
「やべぇ、なんか企んでるみたい。」
「おい、依頼人だ。失礼だろ?」
酷いな。企んでいるのは正解だ。




