302.彼女の時間
食事中に冒険者からの町の情報を聞く、日が落ちるまで情報収集をしていた様子だ。
皆、かなり酔っているが報告は確かだ。
やはり町中は俺の噂で持ちきりらしい。
物価が高い事への商人や役人への不満。
魔物の活性化の為、炭鉱への物資輸送に滞りが起きていること。
後は下町でニヤついた大男が男を追い回す事案が有ったそうだ。
なるほど…治安が悪すぎだな。
炭鉱の町はまるで”ハッテンバ”だ。
恐ろしい町だ…。
差しつ挿されつ…。
カップリング戦争の激戦地なのだ。
まるで「アッー!」の洞窟だ…。
食事が終わり皆、部屋に戻る。
少し遅れてベスタが戻って来た。
マルカが居ない、食事中は居たはずだ。
「マルカはどうした?」
「友人達と休むそうです。」
「そうか…。」
大丈夫だろうか?顎に手を充て考える。
心配になるが女同士の方なら話せるコトも有るだろう。
「あの…。」
「なんだ?」
「いえ…。御休みしますか?」
何か様子のおかしいくっころ騎士。
「ああ。そうだな、休むか。」
寝巻きに着替えるのを手伝うベスタ。
脱いだ服はハンガーに掛けクリーンの魔法を掛ける。
「あの…。私もその魔法を覚えたほうが良いのでしょうか?」
「まあ、便利なモノだが…。洗った服の方が気分が良い時もある。違いは無いのだが気分の問題だ。」
「そうですか。」
何故か質問の多いベスタ、何時もなら無言のハズだ。
着替えるベスタ。
なるほど…。良いふくらみだ。
「あ、あの…。」
何時もなら気にしない筈のベスタの顔が紅い。
「何か有ったのか?」
「いえ…。」
顔を伏せる奴隷。
そうか何か有ったのだろう。
しかし何も言葉にでき無いのだ。
仕方が無い。
ベスタの髪に触れる。
うむ、サラサラで細く流れるようだ。
量は申し分ない。
良い髪質だ。
「あの、オットー様。」
「解かった。休みながら聞こう。」
「は…い。」
ベッドに横たわる俺と奴隷。
腕の中の奴隷の話す物語は、何所か遠くの遊牧民の少女が恋をして、成長して軍人になり戦に負けた話だった。
未だ幼い頃に婚約者が居たコトも、使えた良家の娘の相手を毎夜勤めたコトも。
まどろむ俺は何も記憶に残らなかった。
その草原を駆ける少女の名前さえも。
全ては何所か遠くの物語なのだ。




