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283.最終日3

道はしっかりしている。

恐らく整備の手が入っているのであろう。

谷の入り口で狭い場所が有ったが。

丸太を組んで拡幅してあった。

谷を抜ければ炭鉱の町が見えるハズだ。

しかし谷が長い。

気分の問題かもしれないが。

谷を進む足が中々進まない。

登り下りが多いからだろうか?

途中の道が広い場所で昼食を取る。

パンにキャベツと干し肉。梨だ。

お茶で流し込む。

干し肉が無くなった。

多めに買って置いたが。

節約していないのでこんな物だろう。

だが旅の最後の飯だ。

「オットー様、空が狭いから時間が解かりませんね。」

「オ、モーガン。そうだな、何か時間を計る機械が必要だな。」

「あんなでかい物、持ち歩けませんよ?」

恐らく学園の鐘付き機械を言っているのだろう。

「うむ、まあ。そうだ、小型化すれば良いだろう。」

「便利でしょうけど…。」

「う~ん、今、無い道具を何を言っても仕方ないが。俺の腹時計では今は昼を過ぎた所だ、今回は多めに休憩を取る。」

「間に合いますか?」

ラカスが訪ねる。恐らくペースが遅いコトを指摘しているのだろう。

「この先休憩場所が在るのか不明だ。今日、町に着かないとしても明るい内に谷は出たい。」

「そうですね。こんな谷で夜を明かすのはゾッとしません。」

一応、ペースはタイマーゴーレムと歩幅で計っている。

平地より少し遅い程度だ。

町までの距離は不明なので後どれ位か?は出ない。

変らぬ風景を黙々と進む。

谷の底は川が流れている。

日が傾き谷が薄暗くなると。

いきなり谷が開け目の前の町が見える。

平野に二重の城壁だ。

城壁の外に民家は無い。

かなり堅牢な城塞都市だ。

「ついた…。」

「やった。」

「目的地。」

「なんか小汚いな…。」

「うん、くさそう。」

皆感動に…。打ちひしがれて無いな。

「よっし、目的地だ。未だ日が沈むまでに時間が有る。日没前に町に入ろう。」

「「はいっ」」

視界も開き歩くと景色が変る快適さで自然と足取りが軽くなる。

実際にかなりのペースで城壁にたどり着いた。

門は閉まり数名の衛兵が立っている。

ヒザに弓…。では無いが何人か包帯をしている。

「誰だ、貴様等、ドコから来た。女が多いが女衒か?」

「「ハハハハ」いい女が多いな、店に入ったら教えてくれ。」

かなり不快な連中だ。

「我々は王都から来た魔法学園の生徒と教師、護衛の冒険者の団体だ。町に入りたい門を開けろ。」

「おいおい、王都からだと?この街道は封鎖中だ、ドコから来た?」

「王都からハイデッカー領を抜けココまで来た。」

「バカな、熊が居たはずだ。」

頭に包帯を巻いた兵が叫ぶ。

「そうだ、おい、怪しい奴らだ。中を改めろ。」

兵が広がる。

皆、下碑た顔だ。

コイツ等、俺の女に触れる気だな。

「魔法学園のワリス・トルボー・デービス教授だ道を開けろ。」

教授が背筋を伸ばし学園の教授マントで前に出る。

「デービスだってよw。」

「へー。ドラゴンでも倒したのかい?」

「今更、デービスなんてヤツ多くて魔法使いかもわからねえ。」

「「ハハハハ」」

教授の名が効かないらしい。

仕方が無い。

コイツ等が仕事をする気にさせるしか。

「おい、貴様等!我が名はオットー・フォン・ハイデッカーだ、街道の安全を確かめてきた。報告したい事が在る。上官を呼べ。町の中に入れろ!」

教授の前に出る。

「おい、生徒オットー。問題を起こすな。」

「大丈夫です教授。直に門を開けさせます。開かなければ破壊します。」

「いやまて…「バ、バカなハイデッカー様だと!!」」

動揺する兵隊達。

「おう、ソコの三男だ。街道の安全の為に我家の兵が動いている。熊もサイクロプスも倒して来た。」

「サイクロプスだと…。」「バカなあの熊が殺られるワケねえ。」「あの化物が死ぬか!」

包帯の兵の動揺が激しい。

何か痛い目に有ったのか?

前日の管理人の例もある。見せた方が早い。

「ほら、倒して来たぞ。」

新鮮な熊とサイクロプスを何体か収納から出して足で蹴る。

「あ、あの熊だ!!」

「熊がこんなに…、背骨を折られてる!!」

「首が無え!」

そう言えばサイクロプスの首が無ければ只のデカイ不健康そうな裸のオッサンにしか見えない。

積み上げたサイクロプスに足を掛け。

息を吸い込む。ココで一発、気の効いた事を言えばコチラの話を聞く気になるハズだ。

何を言おうか…。アイデアが無いな。

「嘘だ、全部首が無ぇ!!」

「「「ホンモノのハイデッカーだ!!」」」

「はい?」

え?そこ?

首ナシサイクロプスに兵が一歩引いている。

「そうだ。このお方はオットー・フォン。ハイデッカー様。ハイデッカー家三男にして魔法学園で最も強力な魔法使い。熊をも殴り殺す。気に入らない兵の腕の骨を折るのが大好きなお方だ。」

オシリスキーが一歩前に出て叫ぶ。

「…。いや、そんなコトはしてないぞ?」

未だ学園では二人しか折っていない。

数の内に入らないだろう。

「そうだ、腕に自信が在るなら掛って来い。」

ラカスがこっそり隠れながら叫ぶ。

挑発するなよ。

楽しくなるだろ?

仕方が無いので兵に微笑みかける。

そうだ、話せば解かるのだ。

「コチラの身分を明かしたのだ。町に入りたい。ギルドに報告をする必要が有る。門を開けよ!

「「「は、はい!!」」」

仕事をする気に成った兵達は急いで持ち場に付いた。

ゆっくり城門が開く。

出した魔物を収納して待つ。

中に入ればこの長い考査も終わりだ。


「どうぞ!中へ。」

「おう、お役目ご苦労。」

馬車が進み全員が入ると門が閉じられた。

兵が整列している。

皆青い顔だ。

ゴーレムの様な動きで兵が来た。

「唯今、責任者を呼んでおります!しばらくお待ち下さい。」

「そうか、解かった。」

頷き返すと安堵の表情になった。

振り向き皆に宣言する。

「おめでとう。目的地に無事到着した。」

「「やった~。」」

「おい、やったなモーガン。」

「ラカス。当たり前だ俺達は優秀なんだ。」

「うさぎさん、しかさんありがとう。」

皆で喜びを確かめている。

「宜しいですね?教授。」

「そうだな、コレで考査を終了する。おめでとう。生徒オットー。生徒マルカ。」

一人づつ生徒に声を掛けるワリス教授。

皆笑顔でソレに答える。

周囲には絶望に支配された衛兵達。

微動だにしない。

それを不思議そうに眺める、薄汚れた顔色の悪い住人達。


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