273.四日目1
昨夜は仮眠を早く取り深夜から朝に掛けての歩哨班だった。
空が白くなり始めた。
雨は上がり霧が出ている。
眠ってはいけないが腰を掛けた状態で格子戸から外の監視だ。
GUIのMAPで監視しているの寝ていても問題は無いが…。
長い戦いであった。
別の監視所のラカスはガッツリ眠っていた。
反対側の金髪ウェーブ垂れ目の23番ヴェッタはうつらうつらしていただけだ。
建物内からの見張りは視野が狭いのが難点だ。
見張りの者から見ると。景色が変らない、しかも暗い。監視範囲が狭い。比較的楽な姿勢だ。なんと言っても天井付近で暖かい(ここ重要)
寝るのに充分な環境だ。
一応、一階ではザーバとアジルが交代で警戒をしている。
炊事班班長ソレットが起きて朝食の用意を始めている。
お茶用のお湯を沸かす所だ。
別の鍋に豆と丸麦が水に晒してある。
昨晩の内に準備が出来ているが。
残念ながら今日は朝から霧だ。
霧が晴れないと出発の準備も出来ない。
恐らくゆっくりした出発になるだろう。
ベスタが起きて身形を整え馬屋のほうへ向かった。
馬が嘶く声がする。
馬の準備だろう。娘は未だ寝ている様子だ。
皆ゴソゴソと毛布から起き出し身形を整えている。
恐らく野菜を切る音とスープの香りに目が覚めているのだろう。
マルカも調理に参加している。
教授も起きた様子だ。
「ラカス、換われ。」
「はい、オットー様寝てませ…。うわ何コレ真っ白。」
はい、寝てたの自白しました。
「ソコで監視を続けろ。」
「え?何も見えませんよ?」
軋むハシゴを降りて教授の床に行く。
「おはようございます。教授。今朝から霧が出て視界が悪い状態です。出発を遅らせます。恐らく日が昇れば消えるはずです。」
「そうか…。生徒オットー了解した。」
寝起きの渋い顔の教授、了解を得たので皆に向き直る。
「全員そのまま、出発を遅らせる視界が良くなるまでだ、準備だけは整えておけ、今日は天気が良いが足元は悪い。」
「「はーい。」」
皆寝起きで返事が悪い。
深夜まで見張りをしていたザーバがゆっくり起きる。
「う~む、屋根と床が在るのはありがたい物だ。」
「「アハハハ」」
妙にしっくり来る言葉だ皆が笑う。
各自乾いた雨具を畳んでいる。
ブーツも乾いた様だ。
完全に乾く前に油を塗らなくては…。
「はい、出来ましたよ~。」
炊事班長のソレットが手早く作る肉とタマネギが入った豆と麦の粥に梨だ。
量が多いのでパンは無しだ。
各自、自分の皿を持って並ぶ。
オシリスキーが急いで食べたかと思ったら梯子を登り金髪ノッポの少女に声を掛ける。
「交代だ、食事に行け。出発までに時間が有る少しでも寝ておけ。」
「はい、ありがとうございます。」
「モーガン?俺の交代は?」
「お前、寝てただろ?」
「腹がへった。」
「焼き菓子は?」
「そんな物、昨日で一瞬だよ。」
「オットー様ユックリ食べて下さい。」
天井からオシリスキーが声を掛ける。
勿論俺はゆっくり食べる派だ。手を挙げ答える。
「え?俺の朝ごはん。」
「ほら、ラカス!外を見張れ。」
「いや、霧で何も見えないよ!」
天井が騒がしいが和やかに朝食が進んでいく。”いっぱい在りますからお替り良いですよ~””俺の分無くなっちゃうよ!”
「ほい、少年、あたいが換わってあげるよ。」
食事が終わったモーサが梯子を上ってゆく。
「あ、ありがとうございます。」
「冒険者殿、あまり甘やかさないで下さい。」
偉そうに言うオシリスキー。
「やべぇ、高い、あたい高い所好き。」
「うむ、何とかと煙だな。」
ムロがザーバの口調を真似て言う。
「あ、何かバカにされた気がする!」
笑いに包まれる小屋の中。
朝日が差しているハズだが未だ霧の中なので光が弱い。
ベスタが戻って来た。
「馬の健康には問題ありません。今、飼葉と水を与えています」
「そうか、解かった食事に掛れ。」
「あの…、出発前に場房の清掃が必要です。」
「そうか…。人員を裂くか…。」
誰を出そうか…。
顎に手をやり考える。
「む、手伝おう。」
「あ、あたいも手伝いたい。」
上から声がする。
「はい。手伝います…。」
ザーバ&モーサ兄妹が手を上げたが毛布からゆっくり身を起こす娘。
アホ毛が立っている。
志願者が出たのでベスタの目を見る。
頷くベスタ。
「よし、食事が終わり次第取り掛かってくれ。」
「「はい」」
食事と片付けが終わり各自の水筒の水を補給が終わる。
外に出ると晴れてきた。
周囲は霧で青空が見える、明るい。
今日は快晴らしい。
ベスタと娘が馬達を引いて外のつなぎ場に馬を並べる。
大きいほうの馬の目が一瞬光り後ろのザーバに後ろ足が飛ぶがザーバはスウェーバックで避けた。
馬の顔が残念そうだ。
馬房が空いたので中の掃除に掛っている様子だ。
石畳に落ちた馬糞に灰を巻き桶にスコップで掬っている。
捨て場は決っているらしい。
最後はその桶に灰を入れ、水を入れてよく練り馬房を洗い流すらしい。
その為に排水側溝も付いているらしい。
何か…。人より馬の待遇が良い小屋だな…。
「もう、トイレ片付けますよ~!!」
39番の赤毛のポニテが叫ぶ。
マルカも一緒だ。
「「「は~い!」」」
何をやるのかと思ったら。
トイレの下の肥桶を取り出し囲炉裏の灰を入れて練り、捨て場に捨てるのだ。
天秤棒で二人で担ぐコトに成る。
水桶を持って空に成った肥桶を灰を入れて洗うらしい。
そんな重いことはロリにやらせん。
もう既に灰を入れて練っている。
やはり二人で担ごうとして後ろのロリがふらついている。
ロリの後ろに立ち天秤棒を持つ。
「え?オットー様?」
「え?なんで?」
「おい、こういう力仕事は男に頼め。」
「え?でも…。」
「おい!モーガン!!手伝え!前と替われ。」
「はい!オットー様!!」
モーガンが走ってくるが桶の中身に一瞬躊躇した様子だ。
だが任務の方が勝ったらしい。
「ペルーラ交代だ。」
「は、はい。」
「あ、あの、灰桶と水を持ってきます。」
「水は魔法で出す、不要だ灰だけ持って来い。」
「はい。」
モーガンを先頭に肥桶が進む。
捨て場は穴だったが簡単な屋根が在った。
雨で流されないような配慮だ。
据えた臭いが広がっている。
灰と混ぜてコレだから…。無いと大変だな。
灰を入れた水はアルカリになるので生活の知恵だろう。
殺菌にも汚れにも効く。
肥桶の中を捨てて魔法で水を入れ洗い流して灰と水を入れて練る。
ソレをまた捨てる。
夥しい量だ…。
食べ残しの動物の骨まである…。
人糞家畜糞尿と灰と骨が発酵か…。
利用者が現れるまでこのままだろう。
出来れば転生者で無いコトを望む。
碌なコトに成らないからな。




