270.三日目2
さて、朝食は15番のソレットが作った、鹿のサイコロ切り肉に小麦粉をまぶしオリーブを加え鍋で炒め更にタマネギとニンジンの微塵切りとハーブを加え水を足して塩で味を整えたスープを完成していた。
副食はパンと梨だ、変り栄えが無い。
小麦粉は丸麦をソレットが持っていたすり鉢で粉にしたらしい。
すり鉢と言っても一輪を両手で持ち体重を掛け粉にする薬研に近い形だ。
なるほど石臼は無いのか?
ソレットに質問したら。
「石臼は単独の物を大量に粉にする時に使います。色々な大きさの物を小量粉にする時はコレを使います。」
だ、そうだ。
マルカが不思議そうに見ていた。
どうやら帝国料理レシピに出てくる道具らしい。
しかし、マルカは石臼の様なモノを杵で突く物しか見ていないらしい。
すり鉢は無いらしい。
俺は実家で石皿と磨石の原始的な粉末機を見た事がある。
錬金術セットには乳鉢と乳棒は入っていた。
どうやらこの世界には回転する石臼は無い様だ。
この世界の小麦粉はどうやって作るのだろう?
流石に水車は在るので粉末は大量生産できるらしい。
しかし水車の設置は地形を選ぶ。
俺の実家での食事がパンの出るのが少なかったのはそのせいなのだろうか?
王都でパンが沢山出るのには気にしなかった。
何と言っても焼き菓子がこんなに沢山出るのには驚いた。
千切ったパンをスープに染みこませて口に運ぶ。
うん、悪く無いがもう少し脂が欲しい。
塩味も悪く無い。
オリーブとハーブで鹿の油の臭みが消え食べ易い。
鹿は脂身が少ないが脂の独特な臭みが有る。
しかしその臭みは同じものが無い。
「食事中だか皆そのまま聞いてくれ。今日は天気が崩れる、雨具を直に取り出せる様にしておけ。」
「「「はい」」」
うん、良い返事だ。
食べ終えると。
ラカスとオシリスキーが梨の種飛ばしで競い合っていた。
それに参加する10番金髪ショートのシェール。
競い合うことは良いがもう少し…。文明的なコトをやれよ。
食事が終わると後片付けだ。
歩哨班も手伝う。
全ての収容が終わるとベスタと娘が馬車の準備をしている。
ベスタが馬の体温と蹄の裏、ハーネスの確認等を行なっている。
それに付いて歩く娘。
時間が空くので準備体操をする。
各自、自分に合った時間潰しを行なっている。
何故か模擬戦をやっていたオシリスキーとダーク少年が武器を捨てて睨み合っている。
お互い両手を広げ頭の高さで牽制しながらジリジリと二人の位置を変えている。
両手に結界魔法の球を展開したままだ。
柔道の試合で組み手に入る前の状態だ。
無言で行なっているので周りには異様に見えるらしく、皆ドン引きしている。
まあこの世界に柔道は無いからな…。
新しい競技を作るなよ。
結局ダーク少年が勝ったらしく。
生まれたての小鹿の様にふらつくオシリスキーが剣で杖をつきながら集合した。
コレで一日歩くつもりか?
頭痛が痛むが出立の準備が整い。
忘れ物チェックを終え、宿営地を出発する。
目指せ次の宿営地。




