264.二日目2
馬車置き場に向かうと全員が揃っていた。
「おはよう諸君。」
「「「おはようございます。」」」
「今日の予定だが…。砦の兵が素材を剥ぎ取っている。ソレを受け取り次第。魔物の残骸を魔法で焼く。街道の安全を確認しながら炭鉱の町へ進む。」
「了解しました。オットー様。馬と馬車は問題ありません。」
ベスタの報告だ。ワリス教授が前に出る。
「生徒オットー。街道は安全なのか?」
「教授、その件ですが…。いや、皆に言おう。現状、猟師頭の見立てでは森の中、全ての魔物が出た様子だ。どちらにしても街道を進まなければ安全はわからない。」
「そうか…。解かった。」
納得する教授。
「うむ、皆も了解してくれ、現状危険度は下がったが未だ何が在るか解からない。ところで皆、朝食は食べたか?」
「「「はい、」」頂きました。」
答える下級生と冒険者。
「そうか…。」
顎に手をやり考える。
いやん。皆、朝早いな。
「オットー様。昨日の魔法はすばらしい物でした。宮廷魔法使いクラスならあんな高威力魔法が使えるんですね。」
ムロの目はキラッキラッさせながら訪ねてくる。
”いや、あんなの無理だぞ。”
冷静に教授のツッコミが入るがムロの耳に届いていない様子だ。
「魔法の、日々の鍛練を忘れなければ誰にでも出来るコトだ。」
「はい!」
力強く答えるムロ。
「えー…。」
ダーク少年のテンションが低い。
そうか…。夜目が利くダーク少年だけが昨晩の一部始終を見ていた事になる。
「モーガン君昨日はどうなったの?」
23番金髪垂れ目のヴェッタだ。
「うむ、俺はオットー様の直々の命により小石を拾っていた。」
胸を張って答えるオシリスキー。
「う、使えない。」
金髪ショートがツッコミを入れる。
「なにっ!?」
怒るDTオシリスキー。
「ラカス君何が起きたの?」
今度はダーク少年に尋ねるヴェッタ。
「えーと。魔物が出てオットー様が何かして魔物が倒れた。」
「?それだけ?」
「えーと。オーガが出てオットー様が何かしてオーガが木っ端微塵になった。」
「オーガ?」
「あと。サイクロプスが出てオットー様が何かしてサイクロプスが木っ端微塵になった。」
「それは私も見た。」
クーリョが答える。
「最後はドラゴンが出てオットー様が何かして全部、木っ端微塵になった。」
「ドラゴン?」
「ドラゴンだった、空飛んでた。火を噴こうとしていた。」
ガクブルし始めるダーク少年。
「あの魔法は凄かった。俺も何時かあんな魔法が使える様に成りたい。」
ムロの清んだ目に俺が映る。
「やべぇ、ムロが汎人辞める気だ。」
むっ?俺は未だ普通の汎人だぞ?
収納のパンと梨を食べ。
時間が有るので落としたドラゴンを見に行く。
休憩中の兵達が集まっているので直に解かる。
全長8m幅12mだろうか?
翼竜で首が長い。
直撃はしなかった様子だが。
首が辛うじて繋がっているのと片翼、皮膜が全て破れ骨のみが露出している。
手に触れてみる。
「あの…。」
「オイ、よせ!」
後ろから声を掛ける兵が何か言いた毛だ。
「どうした?」
「いえ、あの…。記念品を…。」
一応雑魚でもドラゴンだ。
倒したのを見て、土産話でも嘘吐き扱いされるだけだろう。
収納魔法からエンリケ包丁を取り出す。
千切れかけた首の皮膚を…ドラゴンの皮を剥ぐ。
”え?ナイフで、ドラゴンの皮切れる?”
驚く兵、鱗の有る生き物は剥ぐのにコツがある。
50cm四方ほど皮を剥ぎ。
兵に渡す。
「ほら、皆で鱗を分けろ。コレなら誰に”ドラゴンを見た”と言ってもホラ吹きだとは思わないぞ。」
「はっ!ありがとうございます!!」
敬礼をする兵達。
はい、収納。
後は、首の無いサイクロプスが何体も転がっている。
暗くて解からなかったがサイクロプスには色々居るらしい。
主に肌の色が。
緑や赤、青&黄色。黒も居る。
首が無いので解からないか4m程度だろうか?3m程度の個体も居る。
手の付いてない物から収納。
GUIには。
”グリーンドラゴン×1”
”サイクロプス ×8”
”ギガンテス ×6”
”エルステリーゼ ×3”
”ティタンテ ×2”
”ギーガス ×3”
色が違うと別の種別なのか…。
流石ゲーム。CGのデータ使いまわしだな。
兵達が一箇所に屍を積み上げている。
解体した魔物だ。
あたりは血と臓物の臭いがたちこめている。
兵達は無言で口を布で覆い作業している。
「この山は燃やして良いのか?」
「はい、どうぞ。もう積みあがりません。」
「よし解かった。下がっていろ。」
兵を下がらせ、
「ファイヤーストーム!!」
おう。良く燃える。
天高く火災旋風が立ち昇る。
後は燃える物が無くなれば消えるだろう。
手を止め呆然と天まで昇る炎を見る兵士たち。
「次は何を燃やせばよい?」
笑顔で訪ねるが兵の顔は絶望の色だった。
ファイヤーストームを四発、打ち上げると。
兵達が砦に戻ってくる。
そろそろ昼飯だ。
飯を喰ってからの出発になる。
兵達に混じって食事の配給を受け取る。
昨日の晩飯と同じ内容だ。
しかし、肉は鹿肉では無く謎肉になっている。
喰える魔物が居たのかもしれない。
喰えるので問題は無い、”何の肉か?”は今は知りたくない。
「お肉は…。感謝して…。ううっ」
29番が心強いコトを呟いて食べている。
泣くほど美味いらしい。
食事が終わり。
出発の準備も整う。
草原の火も消えている。
「オットー様、ありがとうございました。」
「なに、我が故郷の大事だ大したコトでは無い。」
指揮官と硬い握手をする。
「ぼっちゃん、お強くなられましたな。」
「猟師頭殿。日々の鍛練と勉学の成果だ。俺はコレでも魔法使いの端くれなのだ。」
授業はサボりまくっているのは実家には内緒だ。
「コレは収穫した魔石です。」
布の巾着を指揮官から両手で受け取る。
かなりの大きさだ…。
重さを確かめ収納する。
”巾着大(魔石大:38 魔石中:212 魔石小:1215)”
魔石天国だ…。
コレを銭に替える方法を考えなくては…。
砦の門が開く。
「よし!魔法学園課外授業班前進!!」
城兵が整列して敬礼する中を馬車が進む。
「道中お気を付けて。」
「ぼっちゃん。お元気で。」
指揮官と猟師頭の声に手を振って答える。
よし、俺達の旅は未だ始まったばかりだっ!!
( ゜Д゜)「ドレだけ頑張っても切れなかったのに。オットー様、普通に包丁でドラゴンの皮切ってた!!」




