262.一日目8
指揮官との打ち合わせでは兵が6人、2人ペアで魔物集めの臭い袋一つづつ持ち等間隔で設置して同時に火を付け退避させる。
魔法で風を起こし遠くまで飛ばす。
後はキリングゾーンでファイヤーダンスを踊ってもらう。
ダーク少年とオシリスキーコンビに弓を持ったクーリョと冒険者のムロと赤毛のソバカス、モーサ。
そして…。
「教授宜しいのですか?」
「生徒オットー。お前も生徒の一人なのだ忘れてないか?」
「…。」
はい、忘れてました。
「やべぇ、戦争するみたい。」
「モーサ。別にお前が来なくても…。」
「あたいはリーダーからムロが暴走したら止めろと言われてるんだ。一応、依頼主の護衛でも有るし。」
ウィンクする赤毛のそばかす。
山猫団はコチラの依頼を受け入れたらしい。
「冒険者殿よろしく頼みますよ。」
頭を下げる。
「やばくなったら逃げるから。」
流石冒険者だ心強い。
兵の配置が終わり暗闇の中に松明が三つ。
魔物集めのアイテムの設置に移動する兵だ。
松明が回る。
所定の位置に付いた模様だ。
指揮官が頷き城兵の松明が振られる。
着火成功の松明が三つ振られて松明が走ってくる。
塀に掛けられたハシゴを登る兵士。
最後の兵が登りきるとハシゴを引き上げる。
「完了しました。全て着火。」
兵の報告を受け頷く
煙が三つ立ち昇っているが暗闇で良く見えない。
風を魔法で起こす。
と言うか魔法チューブ内部をダクトに見立てて煙を森まで伸ばし魔法チューブを開放する。
煙の道が出来上がるダケだ。
何個か作るが反応が無い。
チューブを蛇行させたり遠くに設定したり低い位置に置いたりする。
「何を行なっている生徒オットー?」
「いえ、教授。遠くまで煙路を作ってますが反応が無い様子です。」
GUIには未だ反応は無い。
「そうか…。では俺がやってみようか?」
なるほど確か教授は風魔法の使い手だったな…。
「では…お願いします。」
「風よ…。大地の神と天空の…。」
良く解からん呪文を唱えるワリス教授。
単純に気圧差を生むダケの魔法だ。
上空から空気を集めて一方向に開放している。
風が起きて草原の草が揺れて波の様になっている。
俺は赤外線モードで見ているので解かるが他の兵には解からないだろう。
只、耳に聞こえる風きり音だけが魔法の成功を示している。
「どうだ…生徒オットー。コレが風魔法だ。」
無表情だが得意そうな顔のワリス教授。
「はい、成功しました。森まで達しています。」
無言の緊張した時間ダケ過ぎてゆく。
そろそろ燃え尽きそうな三つの赤外光源。
外れだ。
金貨5枚掛けた外れだ…。
ガチャなのか?
アイデアは良かったハズだ…。
ゲームでは効果が有った。
しかし、トレインには失敗した…。
「どうやら掛りませんな…。」
指揮官の発言で皆がタメ息を付く。
「その様子だ。くそっ高かったのに…。」
やはり始めにサンピントリオで試しておくべきだった…。
しらけた空気が広がる。
「オットー様。森の中で何か光りました!!」
ダーク少年が叫ぶ。
何だ今頃。
GUIのMAPに白い塊が迫って来ている。
かなりの数だ…。この反応は。
「ちっ、外道だ。」
「何ですか?」
「ゴブリンだな。かなりの数だが魔法で吹き飛ばす。討ち漏らしたものを倒してくれ。」
姿が不明だが草原の中央まで進出した時点で光を照らす。
「光よ!!」
光源の魔法を上空に打ち上げ照明弾の様に地面を照らす。
暗闇に目が光っているので良く解かる地面に星の光りの様な数だ。
「大軍だ!!」
騒ぐ城兵達。
「はいはい。」
高圧圧縮蒸気弾を打ち込むダケの簡単なお仕事です。
散開し無い様に誘導しながら打ち込むのにコツが居る。
着弾する度にGUIの光点は確実に減っていく。
目標をセンターに合わせてスイッチ。
偶に抜け出した個体を弓で射る城兵達。
ムロもウォーターボールを打ち込んでいる。
あ、クーリョが放った矢が当たった。
流石経験値の高い。
冒険者の魔法使いは射撃サイクルが長いが冷静に危険度が高い物を選んで魔法を使用している。
大部分を殲滅した、夥しい屍骸を残して全滅したゴブリン共。
低級ポーションを煽る。
「ゴブリンだけですな…。」
「そうだな…。金にもならん。」
指揮官の言葉に同調する。
草原が…。いや。水場が有るので骸を何とかしないと水が汚染される。
明日、アレを全て片付けるのか…。
兵にやらせよう。
そのほうが良いだろう。
燃やすぐらいは手伝ってやろう。
心に決める。
「オットー様三匹は倒した。」
「そうか良かったな。クーリョ。だがあまり金に成らない魔物だ…。矢が勿体ないぞ。」
「オットー様。何か来ます!!」
又ダーク少年が叫ぶ。
何だよもう寝るぞ俺は…。
森から出た影はかなりの大男だが、反射する目は二つだ…。
「なんだ、オーガか…。」
「オーガ!戦闘準備!!」
指揮官の声に素早く反応する城兵。
小石をポケットから出し飛ばす。
「クッソ、こんな者。何の役に立つんだ!」
頭部が半分無くなり倒れるオーガ。
「くっそ。くっそ、くっそ!!」
「あ、あの、オットー様。」
オシリスキーが何か言いたげだ。
直にポケットの小石が無くなる。
「オシ、モーガン。ソコラ辺で小石拾って来い。親指の先ほどの石だ。」
「はっ了解しました!!」
塀から飛び降りるモーガン。
棍棒を振り回しながら接近するオーガを眺める。
うん、足が速いな…。
仕方ない試してみるか…。
収納から有翼弾を出して電磁加速する。
水平発射だが、オーガを何体か赤黒い霧を撒き散らしながら、吹き飛ばして森に着弾した。
砂埃が立っている…。
光の魔法によって砂埃に映る影が幻想的だ。
半身が無くなったオーガ達が何か騒いでいる。
上半身が無くなったオーガはそのままゆっくり倒れる。
「しまった…。コレでは魔石が取れない…。」
「生徒オットーそういう問題では無い。何をした…」
「鉄の矢を打ち込んだダケです。」
「生徒オットー。ソレは人に向かって使うな。」
「はい、魔物にしか使いません。」
勿論だ…。でも城の中の人へなら問題ないよね?トーチカとか?
「今のはアイスジャベリンなのですか?」
冒険者の魔法使いが目をキラッキラッさせながら訪ねてくる。
いやさっき説明したよな…。
新たなオーガの一団が森から出てきた。
オシリスキーは未だ地面に這い蹲り石を探している。
真剣にだ。
仕方ない…。
「任せろコレからアイスジャベリンを見せてやる。」
「はい!」
「いや待て。生徒オットー。アイスジャベリンが使えるのか?」
止める教授を無視して連射する。
「アイスジャベリン!!」
口だけだが…。80Kgの氷の塊を真空チューブに乗せGUIレチクルのロックした順に打ち込んでゆく。
光の魔法に照らされて上半身が無くなるオーガ達。
着弾した氷の塊は肉を巻き込み後方のオーガ達を変形させる。
「すごい!!」
「いや、ソレはアイスジャベリンじゃないぞ?」
鋭い教授のツッコミを真面目な顔をして誤魔化す。
「コレが俺のアイスジャベリンだっ!!」
そうだ、勢いが必要だ!全てを誤魔化す為に!
「コレがアイスジャベリンか…。すごい威力だ…。」
よし!納得したので問題無し。
「えー…。」
ダーク少年が何か困惑している。
「オットー様小石を拾って来ました!!」
オシリスキーがローブを包みにして大量の小石を担いできた。
「すばらしい仕事だ。オ、モーガン。」
もう少し早く来いよ。
「はい!ありがとうございます。」
手早く小石だけを収納する。
しかし。オーガはもう既に打ち止めだ。
半身が無くなったオーガ達も徐々に光点がMAPから消えてゆく。
出血多量で死んでいく様子だ。
小石要らんかったんや。
そろそろ光りの魔法も消える頃だ…。
魔物寄せの効果も消えたハズだ。
終わったらサッサと寝よう。
後片付けは明日で良いだろう。
昼間歩いて流石に疲れた。
忽然と森の中に巨人達が現れる。
全て一つ目だ。
目が合うと走り出す巨人達。
バットを持っている。
流石巨人だ…。
球とバットは男の証。
ジャコビニ流星打法を成功さた者は無いが。
結果として12.7×99mm弾はサイクロプスの頭部が消える程の威力が在ると言うことが解かった。




