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260.一日目6

砦が見えてくると兵達も気が付いた様子だ。

槍を持った兵と弩弓を持った兵達が準備している。

門は閉じている。

随分と物々しいな。

「おい!その馬車。何者だ。止まれ!」

城兵が叫ぶ。指揮官(羽根付き)ではない。

「我々は、魔法学園の課外授業の一団だ、この先の街道を進み炭鉱の町へ向かっている。」

叫んで返す。

「なんだってこんな時期に…。おい、門を開き調べろ!十分警戒するように。」

なんだ?親父?戦争でも始めたのか?

通用門が開き城兵が馬車を取り囲む。

一人の兵が叫ぶ。

「おい!その鹿どうした!!誰の許可を受けて鹿を獲った!!」

一斉に動く兵。

槍を突きつけられ怖がる鉢巻少女隊。

なるほど…。面倒なコトに成りそうだ。

取り囲む城兵に見た顔は居ない。

「俺が許可を持っている。我が名はオットー・フォン・ハイデッカー。父上より何時でも自由に獲物を狩るコトを許されている。」

前に出る。

ざわ・・。ざわ・・。し始める兵達。

”オットー様?””いや、王都に居るはずだろ?””こんな所になぜ?”

「その王都の魔法学園の課外授業中だ!!道を明けろ!指揮官を出せ!!」

「生徒オットー。あまり兵隊を刺激するな。」

「大丈夫です教授。家の兵です。殺しても二階級特進と年金でカタが付きます。」

「いや、ソレは…。」

教授を無視して前に進む。

「話が進まん指揮官を出せ!」

一人の城兵が槍を向けてきたのでムカッとして穂先の元を左手で掴み。

右手の掌で槍をへし折り前に引き倒す。

前に倒れた兵の首根っこを左手で掴み片手で持ち上げる。

「ウェーイ!貴様等では話にならん。指揮官を出せ!!」

皮鎧と鎖帷子の兵だが片手で揺らす。

足は地面から離れているので抵抗はさせない。

兵隊共の顔色が悪くなる。

”本モノ?””片手で兵を持ち上げるのか?””オットー様は熊を素手で倒すって。”

いくらなんでもソコまでは出来ない。

城壁の上の兵を見渡す。

一人ぐらいは見た顔があるハズだ。

いた、

装備”兵隊”のまま左手で指差す。

「おい!貴様!ソコの兵、以前屋敷に居たな!俺の顔ぐらい覚えているだろう!!」

顔が青くなる装備”兵”

指差された兵の顔も青い。

きょどる兵は何かを見つけた。

「あ、ベスタさん。」

コイツ!!主人の家族の顔は覚えてない!女の顔しか覚えていない!!

怒りを覚え右手を振り回す。(装備”兵”)

「貴様ー!!ソレでも…。」

「ぼっちゃん!!」

城壁の上から猟師頭のバーンが叫ぶ。

「おお。猟師頭殿、久し振りだな。タッポも居るのか?」

「タッポは別の砦です。ココには居りません。そのお方はハイデッカー家の三男オットー様だ。御控えよ。」

装備”兵”を解除する。

転がる兵はぐったりしているが死んでないので大丈夫だ。

年金の心配も無い。

取り囲んでいた兵が整列して姿勢を正す。

全員顔が青い。

門が開き馬車が進む。

全員が整列している。

バーンが降りてきた。

「お久し振りです。ぼっちゃん。」

「おおー。バーン殿も息災か?最近の森の様子はどうだ?」

「ええ、ソレなのですが…。」

羽根付きの兵が出てきたこの砦の士官だろう。

見覚えが有る。

町で気絶させたコトも有る。

「オットー様。お久し振りです。何故ココに?」

「ああ、魔法学園の課外授業だ。このまま街道を進んで炭鉱の町へ進む心算だ。」

「ソレは…。」

バーンと羽根付きが目で会話している。

「この砦は見たことが無いが何の為にあるのだ?」

「実は最近、サイクロプスが出ました。村が幾つか襲われて撃退しています。その為にケガ人が出ています。対抗するため縦深防御拠点を幾つか作りました。その一つがこの砦です。」

「サイクロプス如きでか?」

「いえ…。あの。始めは単独でしたが最近は二三匹での襲撃を受けています。主に夜襲です。」

「なるほど…。」

夜行性か…。

”やべぇ、サイクロプスだって。””む、強敵だ。Bクラスの冒険者でないと…。””待ってくれ、こんな危険な仕事では無かったハズだ。””いや、サイクロプスに襲われて怪我人ダケで済むのか?おかしいだろ?”

浮き足立つ冒険者たち。

不安が広がる。

「生徒オットーどうするのか?」

イカンな教授が今にも授業中止を宣言しそうだ。

「指揮官。鹿を一匹渡す兵に振舞え。今日の寝床を用意しろ。学園の生徒達だ他の貴族の子弟も居る。我家の兵が紳士で在るコトを見せ付けねば成らん。」

「は、はい!了解しました。前進基地で特に御歓待できませんが。最善を尽くします。」

「ああ、ソコラは学生の行軍訓練の様なモノだ、お客様の新兵の様に適当に行なえ。やさしく適当だ。」

「はい!了解しました。」

敬礼をする指揮官を後にする。

「教授。どうらや夜営は危険の様子です。今日はココを宿にします。」

「そうか…。生徒オットーこの先の危険は無いのか?」

「ソレはコレから猟師頭に聞きます。前進するかは明日の朝に考えようと思います。」

「よし、そうしよう生徒オットー。」

困ったな…。

不安げな下級生を集めて説明する。

「今晩はこの砦を宿にするコトに成った。前進即応拠点なので対したベッドは無い。外で寝るよりマシだと思ってくれ。」

「「「はい!」」」

「良かった、屋根が有る。」

「テントで無いのか…。折角虫除け買ってきたのに…。」

喜ぶオシリスキーと落胆するダーク少年。

さて、ベスタは兵の案内で馬を休ませている。

鹿一頭は城兵に渡した。

早速、夕食に出すらしい。

調理兵の話では野菜が足りていないらしい。

無駄に買ってしまったキャベツとニンジンの一部を放出する。

日没前に兵と共に並び食事の配給を受ける下級生と冒険者。

メニューは鹿肉入りの麦と豆の野菜スープ塩味のみ&固パン付き。

他の兵は肉が入っているので嬉しそうだ。

”今日のは野菜と肉が入ってる。豪勢だな…。”

指揮官殿より教授と共に会食に呼ばれる。

行って良いモノか迷うが。

当番兵の話では。

「食事は兵と同じものです、ご了承下さい。違うのは食器だけです。」

との言葉でOKする。


指揮官と副官、猟師頭に教授と俺で会食に望む。

食事をしながら話だが総合すると。

現在は炭鉱への街道は危険な状態らしい。

少なくとも10匹程度のサイクロプスが街道近くに出没している。

この砦の目的は被害担任拠点の様子でココを突破されると後方の村に被害が出るらしい。

拠点構築中も何度も襲われたが何とか持ちこたえている。

最近は纏まった数で襲ってきている。

お陰で後方の村には被害が無い。

「なるほど…。サイクロプスが攻撃の主導権を握って居るのだな。」

「そうですね…。実は補給の車列が四日ほど遅れています。そのせいか…。ここ数日サイクロプスの襲撃がありません。」

声を顰めて言う指揮官、恐らく他の兵には聞かれたく無いのだろう。

「うむ…。」

そうか…。腹が膨れているが…。そろそろ減る頃だろう…。

「ですので。この先、街道を進まれるのはお勧めしません。」

最後に結論を言う指揮官。

副官も申し訳無さそうだ。

無言で頷く猟師頭。

いかんなこのままでは終了してしまう。

未だ焦る時間では無いのに…。

顎に手を置き考える。何か方法は…。

「よし、実は、魔物寄せの香を幾つか持っている、このまま補給が寸断して攻撃を受けるなら未だ兵が動ける内に攻撃を受けた方が良いと思わないか?」

「そうですね…戦場を選べるなら…。」

指揮官の乾いた笑いだ。

上手く行くと思っていない様子だ。

「おい、生徒オットー。」

教授が抗議するが…。

「教授、コレは当家のコトでございます。」

「うっ、生徒の安全は…。」

「お任せ下さい。」

このような時は貴族は不安な顔を見せてはいけない。

心に決める。

最悪、退学覚悟で全て燃やしてやる。

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