259.一日目5
いざ行動に移すと思っていた通りにならない事や色々と足りないことが出るコトが解かったが…。
何とか食事の用意が出来た。
パンと梨を人数分並べて…。
キャベツの葉がパンの皿になっている。
使ったのか生キャベツ。
個人の大皿を持って並ぶ。
山猫団の方々もだ。
「やべぇ、パンがやらけえ。」
「うむ、食材支給と書いて有ったが。豪華なモノだ。」
「肉入りオイル煮だ。」
「塩もハーブもたっぷりだな。」
何故か評判が良い。
冒険者は普段、何を食べているんだ?
寮に発注したパンだが、ふだんの寮のパンと形は同じだが少し重い。
どうやら気を利かせて一回り大き目のパンを焼いてくれたらしい。
パン職人に感謝して食べる。
「オットー様レバーなのに食べ易いです。臭くないですね。」
「おいしい。」
「鹿さん…。ぐすっ」
「まあな。新鮮だからな。一手間掛けると美味しいのだ。」
そうか…。泣くほど美味いか29番緑のおさげ。俺も嬉しいぞ。
「29番どうだ?美味いか?」
「鹿さん美味しいです…。ごめんなさい。ふぇ~ん。」
「そうか、そうだ、鹿さんに感謝して食べるのだ。命を頂いて活力にするのだ。今日を生きて力を付け魔力を蓄えるのだ。」
「鹿さーん!」
よっし、涙を流しながらモリモリ食べる29番のキーファ。
そうか、そんなに美味いか。
たしか薬草に詳しいと言っていた。
森に入っていたなら動物にも詳しいだろう。
泣いて食べ終わった緑のおさげは何か吹っ切れた表情になった。
やっぱ、肉だよ。肉は元気の源だ。
片付けが終わり。
食堂でパクッたお茶を出す。
出発だ。
もう既にベスタが馬とハーネス、馬車の点検を行なっている。
ソレに付いて歩く娘。
問題無いと言う報告に教授の許可を得て出発する。
GUIのマップには何も出てこない。
ちっ、初日はモンスターは無しか…。
鹿二頭がぶら下がっているので積載に余裕は無い。
徒歩で歩く下級生。
日没までに水場に付いてテントの設営だ。
やる事は多い。
心なしか29番のキーファが精悍な顔立ちになっている。
旅は人の心を鍛えるのだ。
感動と経験は人の心の糧となる。
森を抜けると水場の有る草原が広が…。
「なんだ?アレは?」
見覚えの無い砦が有る。
周囲を囲む空堀の草の生え具合から最近出来た物だ。
木で出来た砦だ。
即応陣地に近い。周囲の森の一部が伐採されている。
遠距離視野で見る、旗は我が邦国ハイデッカー家の旗印だ。
兵が居るのが解かる。
恐らく常駐しているのだろう。
「オットー様どうかされましたか?」
馬車の上から娘が訪ねる。
「いや、すまん、あんな所に砦は無かったハズだ。我が家の紋章がある…。」
「そうなのですか?」
「まあ、良いだろう。どうせ家の兵だ。娘、このまま進め。どうせ砦で停められるだろう。話は俺がする。」
”ハイデッカー兵だって?””やべぇ、殺戮公の兵だ。””シッ、妹よ静かにするのだ。””大丈夫だ。オットー様がお見えだ。”
警戒しながら進む。
 




