256.一日目2
256.一日目2
うむ、ランドナビゲーションに寄ると我が邦国北部の森の近くの街道だ。
全て見覚えがある。
「生徒オットー何をした!」
「魔法で移動しました。教授、現在地、ハイデッカー領北部です。」
”やべぇ!景色が変った。””ココは…。ドコだ?””瞬間移動なのか!流石宮廷魔道士。””一瞬で移動できるのか?”
「生徒オットー。魔法での移動は…。」
「教授、特に制約は無かったハズです。」
「確かに無いが…。」
周りを見渡すと変らぬ故郷の森だ。
よく鹿を取った。熊も…。
「よし、コレより街道を北に進み炭鉱の町を目指す。このあたりの熊と狼は俺が狩ったので居ないはずだ、鹿とウサギを狩りながら北上する。」
「「「はい」」」
「あの…どうすれば良いのですか?」
馬車の上の娘が訪ねる。
「普通に街道を進む、危険が有れば停める。冒険者殿は後衛を頼む。モーガンとペルーラは前衛、遊撃はヴェッタとラカス。支援シェールとクーリョ、後方支援はキーファとソレット。」
「「はい!」」
「俺の邪魔をするなよラカス。」
「はいはい。」
やる気の無い返事のダーク少年。
馬車の上のベスタを見上げる。
「それと…。ベスタは周囲の警戒に当たってくれ。」
「了解しました。」
「あの…。私は?」
「マルカは…。後でベスタと交代。で宜しいですね…?教授。」
「問題ない。生徒オットー…。何か魔法を使うときは俺に報告しろ。それからこの課外授業は学園の授業の一環である。あくまで学園内のルールが適用される。忘れるな。禁止魔法を破るな。」
「ご安心をワリス教授。対抗策を考えて居ります。」
対抗策という言葉に嫌な顔をする教授。
そう言うと思って質量兵器を準備してある。
流石に故郷の森を焼く様なコトはしない。
少し耕すダケだ。
ゆっくり進む馬車を先頭に左右に分かれて街道を歩く。
大荷物を持った者は馬車に乗せた。
身軽になったが水筒と食料を持たせてある、あと…雨具。
それぞれが周囲の捜索を行なっている。
GUIのMAPも順調だ。敵を示す光点は無い。獲物もだ…。
天気も良い山からの風も心地よい。
ココラ辺の熊も狩りつくした。
馬車の後ろを歩く山猫団と教授。
ザーバの大荷物は馬車の上なので身軽なフル装備タンク職だ。
順調に進んでいく。
昼の休憩にはこの先に泉が有るのでソコにしよう。
GUIに光点が浮かぶ。
大きくない、恐らくウサギだ。
「オ…。モーガン、右手、前にウサギだ。」
「は!了解しました、オットー様。」
剣を抜き走り出すモーガン。
上体がばらついている。
肩が揺れているので鋭い太刀筋は出せないだろう。
コイツ剣の腕はフェルッポ以下だな。
「うおおおお!」(ピロリン!)
「でぃあー!!」(ピロリン!)
「こなくそー!」(ピロリン!)
ウサギのこうげき!(がっしゅ!)
「やったな!くそう!!」(ピロリン!)
遠くの草むらでオシリスキーが騒いでいる。
「なんでウサギ逃げないんだ?」
素朴な疑問だ。
この森で俺はウサギを取ったことは無い。
足跡やフン等の痕跡や逃げる後姿なら何度か見たコトはある。
「ああ、ウサギは弱い相手には逃げません。子供の時良く取りました。今は難しいですね。素早く逃げるので。」
事情通のダーク少年。
お前も未だ子供だろうと喉まで出たがダークなエルフは年齢不詳なので言うのを辞めた。
「私も昔捕りました。」
23番ヴェッタ金髪ウェーブ垂れ目の少しノッポ。
「わたしも。」
5番ソレットまでもだ黒髪ロング、清楚な顔をしているが結構エグイ。
「そうか…。」
「ウサギはスレている狩場だと逆に難易度が高い。」
赤目の白髪の朴念仁が話す。装備した弓は伊達ではないらしい。。
「クーリョは弓で取ったの?」
赤毛の剣士ペルーラが白毛に訪ねる。
「ううん、ワナが多い。気配で逃げられる。あのウサギは未だ若いから迂闊なのかもしれない。」
たしかにソレはある。
若い個体ほど狩りに掛り易い。
経験値が足りないのであろう。
「オットー様、もうすぐ終わるようです。」
馬車の足を止めているベスタが答える。
「どぉりゃー!!」(がっしゅ!)
肩で息をするオシリスキー。
剣を振り上げ謎の勝利のポーズを決めている。
どうやらやっと仕留めたらしい。
「やりましたオットー様!初戦果です!」
興奮冷めやらぬオシリスキー。手には血に濡れたウサギを持ってきている。
「おお、すばらしいぞ。オ、モーガン。大した者だ。今晩はウサギのシチューだな。」
「はい!!」
「怪我をしている様だな。手当てが出来る者は居るか?」
「はい!私、出来ます。」
10番の金髪ショートのシェールが手を上げる。
すごいアピールだ。
「では手当てを…。いや、応急手当で良い、治癒のアイテムを渡そう。」
収納から銅の錫メッキ製、治癒キーホルダーを出す。
シェールがオシリスキーの手当てを行なっている。
”痛いもっと優しく。””う~ん?十分優しいよ~?”
金髪ショートが楽しそうだ。
横目で見るがアレは痛いやり方なのでは?
まあ、良いどうせオシリスキーだ。
ラカスがウサギの内臓を一瞬で抜いて処理した。
胴体を両手で握って肛門から内臓を出す方法だ。
馬車の後ろに吊り下げられるウサギ。
皆に、治癒のキーホルダーを渡す。
「コレは治癒のタグだ。握って魔力を通す。ソレで発動する。擦り傷、怪我は手当てをした後でないと治りが悪い。下痢や発熱にも効くが全て出した後出ないと効きが悪い。」
「凄いなモーガン、コレで安心だ。」
「おい、ラカス何故俺に聞く。」
「それなりに魔力を使うので安全な場所で使用すること。」
「「はい!!」」
返事だけは良い下級生。
ベスタとマルカ、娘にも渡した。
「生徒オットーなんだ?そのアイテムは?」
「ワリス教授、テキトーに作った治癒のアイテムです。二日酔いにも効きます。一個どうですか?」
「う、生徒オットー…。大丈夫なのか?」
「はい、大丈夫です。」
実験体で試した物です。とは言わなかった。
”う、良いなあ。””ムロ、魔道具は高いのだ。””やべぇ、ムロの収集癖が出た。””あまり、恥に成る様なコトは…。”
そうか、Dタイプの成れの果てはコレが欲しいのか…。
後で話しを聞きだそう。




