255.一日目1
朝、目が覚める。
未だ日の出前だが東の空が白い。
身じろぎするとマルカが起きてしまった様だ。
「おはようございます。オットー様。」
「ああ、おはよう。未だ日の出前だ。もう少しゆっくりしよう。」
頭を撫でる。
うん、力強い頭皮だ。
「はい。」
準備は全て整っている。
朝食の時間まで未だある。
イチャイチャして過ごす。
日が出たので寝巻きのまま準備体操を行なう。
マルカは身支度を整えてベッドを片付けている。
身体を拭いて朝の全裸。
下着と制服と学園指定の魔法使いローブを着る。
マルカが脱いだ服を籠に集めている。
ヘアーセットが終わると洗濯籠を持ったマルカと共に部屋を出る。
俺は朝食の為、食堂に向かうが。マルカは洗濯物を運んで使用人の賄い朝食を食べるはずだ。
席に座ると突撃給仕と爆走ワゴンがやってきた。
テーブルにカトラリーは並んでいるのでメインの皿が出てくる。
何時もの肉と玉ねぎのスープだ。
パンとお茶と梨が揃うと何時もの様に一礼して下がる。
休日の朝の食堂は随分とゆっくりだ。
何時もの様な戦場ではない。
ゆっくり食事を取る。
梨ゲット!
マルカが食堂の壁紙に加わったので食べ終える。
ソレを見計らってワゴンに山盛りのパンが二台俺の所に来た。
焼きたてのパンだ。。
メイドと腕の太い中年の男がワゴンを押している。
恐らく中年の男はパン焼き職人だろう。
白い服と布帽子を被っている。
「ご注文の品です。お納め下さい。」
中年の男が白い帽子を取り礼をする。
食堂の他の生徒が驚いて見ている。
…。全部俺が食べるワケでは無いぞ?
「ああ、確かに受け取った。パン焼き職人殿、無理を言って申し訳ない。」
席を立ち一礼する。
「いえいえ、ありがとうございます。」
ワゴンに手をかざしパンだけ収納する。
”パン ×500”
よっし!!コレで10日は戦える。これで勝つる!
思わず拳を握るが消えたパンにメイドと職人殿が驚いている。
「収納魔法だ。」
「え?あ。そうなんですか…。魔法と言うのは良く分からんので驚きました。」
「そうか…。パン焼き職人殿、又、頼むかもしれない、その時は頼む。次はもう少し早く注文をだす。」
「解かりましたお待ちしております。」
苦笑するパン焼き職人。
食事が終わりマルカと共に寮を出て学校に向かう。
もう既にダーク少年がベンチに腰を下ろして待っていた。
「おはよう、6番。」
「おはようございます。オットー様。…あの。ラカスです。」
「おお。そうだったな6番、忘れ物は無いか?今一度確認しろ。」
「はい…。大丈夫です。朝から確認しっぱなしです。」
ベンチの横に置いてあるラカスのリュックにはフライパンと丸めた毛布と水筒がぶら下がっている。
大荷物だ。
旅をするのに適切な姿をしている。
学園指定の魔法使いローブの下は革の鎧にチェーンメイル、短刀が2本に予備の大ナイフ、投げナイフも持っている、なめした皮手袋に革の長靴。
悪く無い。
「ラカス君は何時来たのですか?」
「うん?日が出て直に寮を出た。」
えらく早いな。
「飯は食べたのか?」
「はい、オットー様!!バッチリです、寮の残りを溜めました。あと2日分確保してあります。」
「うむ、そうか…。」
何となく頬を膨らませるハムスターを思い出した。
確かにコイツ等はマーモットだが…。ソコまでは…。
思案していると新たな人影が増えた。
「おはようございます。オットー様。」
オシリスキーだ。
オーダーメイドの学園ローブに腰に剣、革靴に半脚絆、肩掛けカバンをぶら下げた状態だ。
「おはよう。オ…。モーガン。随分と軽装だが大丈夫か?」
そんな装備で大丈夫か?
「ご安心下さいオットー様、このカバンは我家に代々伝わる魔法の収納カバンでございます。」
得意そうに薄汚れた革のカバンを示すオシリスキー。
「ほう。」
「すごいな、モーガン、ちょっと見せて」
「おい!!ラカス触るな、下賤の者が触れて良いモノではない!!」
キレるモーガンとのんびりラカス。
なるほど…。有るのか、収納カバン。
後で見せてもらおう。
校舎の向うから数人の女子がコチラに向って来る。
気づいたラカスが手を振っている。
ソレに答える金髪ショート。確か10番だ、他の鉢がねは恥かし毛だ。
「おはようございます、オットー様、よろしくおねがいします。」
頭を下げる赤毛のペルーラ、ポニテの髪が流れる。
「「「よろしくおねがいします。」」」
続く鉢がね少女達。
マルカと挨拶の魔力充填をしている。
魔法切れに注意しなければ。
全員、それなりの装備をしている。
思い思いの得物を持っている。
21番の白髪紅眼が弓を装備している、矢筒もだ。
後は剣と短剣だ。
バランスが悪いな。
全てをカバーするのは不可能だ。
恐らく接近戦の乱戦になったら一瞬の内に瓦解するだろう。
仕方ない、遠距離攻撃で全てを終わらせるか…。
質量兵器で…。
思案に暮れていると教授コートを着た男がこちらに向かって来る。
ワリス教授だ。
肩にカバンを下げている。
恐らく収納カバンだ。
「おはようございます。ワリス教授。」
「「「「おはようございます。」」」」
続く、生徒達。
「おはよう、生徒諸君。準備は良いか?」
「「「はい」」」
「教授、後は馬車と冒険者待ちです。」
教授に申告する。
「生徒オットー、本当にやるのか?かなり危険だぞ?」
念を押す教授、いやいや、危険など…。サイクロプス程度しか出ないのにそんなに危険なのか?
「はい、教授、万全の準備でコトに当たります。」
「そうか、しかし危険な場合は直に中止を宣言する予定だ。心して掛れ。」
「はい、了解しました。」
口では言うが全然了解はしない。
そうこうすると、学園の正門から毛色の変った集団がやって来た。山猫団だ。
先頭を歩くのは骨太のザーバだが直後ろにリーダーのアジルが控えている。
今日はザーバの背嚢が大盛りだ。
恐らく遠征に鑑みた装備なのだろう。
「おはようございます。冒険者ギルドの方から来ました、護衛任務の山猫団です。」
アジルが前に出て手を差し出す。
この世界でも○○の方から来ました話は有効らしい。
面合わせをしてなければ思わず信じてしまう所だ。
堅い握手をする。
「依頼主のオットーだ。今回の依頼を請けて頂き大変恐縮である、申し訳ないが未だ手配した馬車が来てい無い。」
「そうですか…。」
周りを見渡すアジル。
「紹介しよう。こちらは学園の教授で今回の指導員役のワリス教授だ。」
「今回の指導教官のワリス・トルボーだ。」
”スゲー教授だって。””やべぇ、ムロ興奮するな””そうだな学園なのだ。教師も居るだろう。”
騒がしい山猫たち。
「よろしくおねがいします。冒険者チーム山猫団のリーダ。アジルです。」
「少々時間が有る様だ。今のうちに自己紹介をしようじゃないか?」
目で皆を見渡すと素早く整列する鉢がね少女隊とオシリスキー。
何故かボンヤリのダーク少年。
「そうだな、生徒オットー。」
「では、私は護衛依頼を請けました山猫団のリーダー。アジルです。Dクラスの冒険者です。」
「「おおー」」
鉢巻少女隊が拍手を送る。
Dクラスそんなに良いのか?
「Dクラスの冒険者、ザーバである。」
同じく拍手が起こる。
正直。Dクラスってカーストのドコの層なんだろうか?
「あたいは妹のモーサ。ナイフ使いだ。」
健康そうな笑顔のモーサ。
「魔法使い…。の端くれのムロです…。」
肩身が狭い魔法使い。
「ヘッセン男爵次男モーガンだ。剣が得意だ。」
偉そうに放つオシリスキー。
「クラン”放課後図書室”6番ラカスです。」
何故かクラン名を言うダーク少年。
「クラン”放課後図書室”10番シェールです。」
金髪ショートが頭を下げる。
「同じく15番ソレットです。」
黒髪ロングだ。続けて話す。弓を装備した赤目の白髪。
「21番クーリョ。」
「23番ヴェッタです。」
金髪ウェーブ垂れ目の剣を腰に下げた少しノッポの少女。
「29番キーファ」
緑色のお下げの少女だ。最後に赤毛のポニテ。
「39番。ペルーラです。剣に自信が在ります。」
全て終わった、残った首輪少女に視線が集る。
「うむ、では紹介しよう、俺の配下のマルカだ。奴隷の身分だが、俺は自分の物がぞんざいに扱われると非常に不愉快だ。もう一人奴隷の者は居る、馬の扱いの為ココには居ない。もうじき来るで有ろう。」
マルカが頭を下げる。
謎の沈黙が流れる。
「オットー様の自己紹介が未だです。」
赤目の白髪が言う。
要るのか?俺の自己紹介?
「うむ、今回の課外授業を企画した。オットー・フォン・ハイデッカーだ。冒険者のクラスはナシだが熊ぐらいなら殺れるので問題は無い。」
”ハイデッカーってあの?””やべぇ、クビか””よせ妹、言って良い事では無い””熊やれるってアイスジャベリンで?”
騒ぐ山猫を無視して続ける。
「この課外授業は出来うる限り多くの魔物を狩る為に企画した。そうで無いと面白くない。心して掛る様に。」
「生徒オットー。十分に周囲の安全に留意せよ。」
教授が何か言うが門の向うに馬車が現れたので皆忘れる。
嘶く馬が止まる。
「オットー様遅れて申し訳ありません。」
「紹介しよう。俺の配下のベスタだ、ランクDの冒険者でもある。」
山猫団が畏まる。
「「「護衛の者です、よろしくおねがいします」」」
「あとは馬車の所有者のトリーニアだ。ご好意で馬車を貸し出して頂ける。馬車の扱いに専念して貰うのでその心算で。」
馬車の御者席で頭を下げる娘。
「「「はい」」」
「ワリス教授、全て揃いました。」
「そうか、生徒オットー、これより判定の腕輪を配布する、取った魔物のカウントを行なう魔法の腕輪だ。考査の得点計算の物だ無くさないように。」
「「「はい!」」」
ワリス教授が肩掛けカバンから腕輪を出して番号を確認、一人づつ渡してゆく。
「生徒オットーお前のだ、壊すな?」
「はっ、ありがとうございます。」
壊さないよ?調べるだけだよ。
渡された腕輪は青銅のリングだった。
皆、腕に通さず思い思いの場所に着けて居る。
装備したことになるのか?
「このリングは身に着けて居るダケで良い。予備は有るが無くすとソレまでの点が加算されない。」
考えたが腰のフックに掛けるコトにした。
「考査を始める。出発するが準備は良いか?」
「「「はい」」」
「では、考査開始!」
教授の始めの合図でGUIのフレンド登録を全て設定する。
ポケットのポーンを操作して全てを完了させる。
目指せ我が故郷北部。
 




