26.貴族と名誉
魔法科の教室の前に立つ。
中では授業が行われている様子だ。
生徒の笑い声も聞こえる。
「失礼します!!」
ダァー☆を開けると教室内が時が止まった様に静かになった。
「教授、申し訳ございません。私用で遅れました。」
「ああ、席に着いてくれ。」
「はっ。」
なぜか何時も席が空いている”随分とイヤラシイ顔”の男子生徒の隣りに座る。
しかし、今は”随分と引きつった顔”になっている。
静かな講堂では、ノートを取る筆音しか聞こえない。
さっきまで、あんなに騒がしかったのに随分と皆、勉強熱心だな。
たしか、昔…。くそ!!気にしない!気にしないぞ!!
放課後になり三人揃って学校を出て寮に戻った。
二人はメイド服に着替えて寮の雑務に出ている。
俺は部屋でゴロンとトドのように休んでいる。
今日の反省会だ。
主人公が居なかった。
コートがダメになってしまった。
いや待てコート?
確か主人公が俺と対立したのは同級生を取り巻きと虐めているのを止めた為に対立したんだ。
影の薄い同級生で前髪の長い…。マイトだ!!
いや、まて、ゲームのマイトは魔法科だった。
マイトを俺が虐めていた理由は…。
制服を汚したからだ。
あの、マジックインクだ。
だから、マイトは錬金術科を落第になり、魔法科に入った!!いや、戻ったのか?
そうなると。あの隣りの席の”随分とイヤラシイ顔”の男子生徒は俺の取り巻きの一人か?
くっコレでは主人公と対立する要素が無くなった。
ゲームは始まっているが、未だ主人公と遭遇するには時間がある。
「学園内で俺の地位を確立しなければ。」
頼れるふとっちょ先輩キャラなら主人公と対立することはないだろう。
誰も居ない部屋で徒手格闘戦の型練習を始める。
廊下でベルの音が鳴る。
ほう、ディナーの合図だ。
食堂に向かう。
この寮は貴族用の寮で食堂が備わっている、学園校舎を挟んで平民&下民用の寮もある。
従者は貴族用の食堂の後に賄が出るらしい。
もちろん二人はコレに入れた。
制服のシワが無いか確かめ。
廊下をゆっくり進む。
食堂に入ると長テーブルに白いクロス。
そして食器が並んでいる。
壁に掛った木札を裏返し席に着く所先輩方。
なるほど席順は決まっていないが慣例的に木札の順番で座るのが礼儀らしい。
真新しい俺の札は随分と下のほうだ。
入り口前で時間を潰す。
どうやら、時間の読めない新参者は俺だけの様だ。
遅れてきて悠々と木札を裏返す猛者も居る。
こんな夕食ごときでマウンティングなんて猿以下だろ?
廊下で待つが俺の順番までは程遠い。
仕方がないので抜刀術訓練で時間を潰す。
コレくらい狭い廊下で剣を抜くのは難しい。
蹲踞、中腰、ヒザ付けで練習を繰り返すと。
何故か皆早足になった。
うん、皆が効率を考えるのはすばらしいコトだ嘗て大日本帝國海軍が小走りが基本なのは時間を節約してもコトだ。
俺の順番が着たので素早く、木札を返す。
俺が席に着いて皆が揃った様子だ。
中央のお誕生日席に座る女子生徒が音頭を取る。
「皆揃いましたね?本日から新しい仲間が増えました。オットー・フォン・ハイデッカーさんどうそ。」
イキナリ俺が指名された、こんなの事前に話しを通せよ。
しかし、貴族はうろたえない。
席を立ち一礼する。
「本日より、この学び舎の一員となりましたオットー・フォン・ハイデッカーと申します、なにぶん、末席扱いなので不礼を感じることがございますでしょうが、ご指導のほどよろしくお願いします。」
微妙な拍手で迎えられる。
「では、頂きましょう。」
モミアゲロールパンが呟くと、頷く横に立つ鬼畜メガネ。
メイドたちにより、スープとサラダが配られる。
ほう、カボチャ(の様なモノ)スープか俺の好物だ。
サラダには松の実とワインビネガードレッシング。チーズの粉が掛っているのが良い。
メインは鳩と香草のローストらしい。
今までチキンだと思っていたのは鳩だった様だ、当に鷺だな。
メインを配る、ロリメイド、何だ主役扱いだな。
優雅に配る、おう。すばらしいぞ、家のメイド長が見たら涙を流すだろう。
その時間が途中で、止まる。
「ねえ、君、どうだい?今晩仕事が終わってから。」
「申し訳ありません、お仕事がございます。」
「いや、どんなに遅くなっても良いよ、待っているから。」
おい、俺の肉が遅くなっているだろう!!
誰だ!!なんだ、キザ夫くんがウチのロリメイドの手を握って作業の妨害をしている。
オイ!!俺の肉を妨害するなど万死に近い。
鳩の肉は冷えると固くなるのだ。
「おい!!貴様!!俺のニク!もとい。俺の許可無く俺の奴隷に触れるなど無礼のキワミだ!!即刻謝罪するか名誉の剣を抜くか選択せよ!!」
末席でいきり立つ俺は随分と小物に見えるだろう。
しかし、辛抱タマラン。イヤイヤするロリの顔なぞ見たくないのだ。
「っは?この僕をだれ…。ああ、ごめんなさい!!申し訳ございませんでした!!」
キザ夫くんがコチラをみて両手を開放して頭の上に挙げる。
「さあ、剣を抜け。俺は剣を抜かず貴様を炭にしてやる。さもなくば我が奴隷に非礼を謝罪せよ。」
両手にメガ粒子砲と頭上にリングを構築する。
充填率も120%を越えている。
「我が創始ライオネル・ワイヤードの名に置いて謝罪します、今までの非礼をお詫びします。申し訳ありませんでした。」
「チッ、腰抜けめ!!貴族が奴隷に首を垂れるなぞ一族の誉れはドコに有るのだ!!」
煽るが乗ってこない。
「申し訳ございませんでした!!」
土下座えもんのキザ夫くん。”ほら、煽れ、俺はこの魔法の威力を人間に試したい。”ロリメイドに目配せすると。
「こちらこそ申し訳ございませんでした、謝罪は受け入れます。」
「ありがとうございます!!」
ロリメイドに肩膝を付き涙を流しながら忠誠を誓う騎士の様なキザ夫くん。
「チッ!」
なんだよ!!イケ面はダサい動作でも絵になるのかよ!
「あの、よろしいでしょうか?」
モミアゲロールパンが寸劇を止める。
「ああ、些か興が削がれましたが楽しい余興はコレまでです。」
皆がホットして向き直る。
俺の前に肉が来た。ロリメイドがボソッと”ありがとうございました。”と耳打ちする。
俺は肉が無事ならソレでよいのだ。
「皆に行き渡りましたね。では、豊穣の女神ディアナに感謝を。」
ロールパンナが音頭を取り皆が祈りを捧げる沈黙の中。
「ブッハ!!」
俺は我慢できずに吹き出す。
「どうされたオットー・フォン・ハイデッカー殿。」
「ああ、いや、済まない。咽てしまった様だ…。」
なんで殺虫剤が…。
豊穣の女神なのか?
くっそ。あの会社は中二病な商品名が多すぎる。
食事が終わり。
ラウンジに向かう寮生たち、それほど貴族の交友はないので、部屋に下がる。
部屋でロリのコピー本を読むしかない。
ソレももうすぐ終わる。
下巻はひょっとしたら学園の図書室に有るかもしれない。
ページを捲っていると。
ロリとくっコロさんが帰って来た。
むう、奴隷は労働を行なっているのに、学生の俺は何も経済活動を行なっていない。
まるで俺はヒモの様だな。
果たしてどれだけの女をはべらせば一生労働しなくても生きていけるのだろう。
モデル化して数値計算すれば意外に指標値が出るかも。
異世界超ヒモ理論に心を馳せる。
「ご主人様、サロンではご主人様の魔法の話で持ちきりでした。」
ロリメイドが答える。続けてくっコロさん。
「そうですね、原理がわからないそうです。」
「おかしいな、単純な魔法しか使っていないハズだが。」
考え込む。
確かに量子力学はわけわかめだが、魔力と想像で力技できるはずだ。
とにかく、学園魔法使いの魔法を見て判断するしかない。
明日はまじめに授業に出よう。
心に誓う。
灯りが落ちてベッドにはくっコロさんとロリが来た。
よし!!
この後めちゃくちゃS○Xした。
(´・ω・`)農薬に萌えは要らない。(作者の個人的な感想です。)
殺虫剤 ディ○ナSCとかWDGで検索して下さい。




