番外地:帝国編3
我々アルカンターラ軍が帝都に入城した時には既に治安維持を目的として帝国教会騎士団が展開した後であった。
帝都の凱旋門を潜る前に、貴族軍の盛大な出迎えか、民衆の歓迎の歓声かのどちらかを期待したが帝都は閑散としたものだった。
門の前には厳つい教会騎士団の検問だけだ。
神官の出迎えを受ける。
「アルカンターラ伯爵軍第二軍団騎兵中隊、ジョゼ・シャルヴィエール大尉です。」
「教会騎士団の下級二位神官マフディ・モルテザです。」
本来なら顰め面の神官との挨拶だが思わず笑みがこぼれる。
「マフディ、久し振りだな。また出世したのか?」
「ああ、ジョゼも元気そうだな。シャルヴィエールなんて苗字を貰ったのか?随分と偉そうな名前だな。」
「言うなよマフディ。帝国風なんだ、お前は帝国風にしないのか?」
「おいおい、俺達、遊牧騎馬民族の誇りを忘れたのか?草原で神に誓っているから名前は変えないぜ?」
「お前は何時もソレだな…。変わって無くて安心したよ。」
旧友と出合い肩を叩き合う。
昔を思い出す。
俺とマフディ、小さなナウラと良く馬で草原を駆け抜けたのだ。
マフディは信仰心が強かったから良く巡教者が来ると話しを聞きに行っていた。
読み書きを覚えるのも早かった。
マフディは神学校へ入学して俺は軍学校に入った。
小さなナウラは族長の紹介で南方貴族の娘の従者として旧帝都の騎兵学校に入ったと聞いた。
皆バラバラになったがこうやって会う事も出来る。
「さて、仕事の話だが…。」
「ああ、そうだな。」
「連絡を受けた異端者は大部分を確保、監視下に置いているが…。」
「そのうち何人かをコチラに引き渡して欲しい。」
「ソレが難しいと言う教団の考えだ。」
「おいおい、今更、上で話は付いているだろう?」
マフディも苦い顔をしている。
「で、一部の警備を伯爵軍にお願いすると言う話になった。」
「それは引き渡すのと何が違うんだ?」
「教会の上は責任を取りたくないとさ。」
「酷いもんだな。」
「ああ、俺達は何時まで経っても汚れ仕事さ。で、どの物件が良いのだ?」
マフディはクリップボードに挿まれた紙束を出してきた。
中身を見る、相変わらずマフディは几帳面だ。
名簿に目を通し目標を探す。
「おい、この印は何だ?何故×印なんだ?」
「ああ?ソレはもぬけの空だ、家人も馬車も馬も無い。」
「そうか…。すまん。急用が出来た!中尉後を頼む。第一小隊、第二小隊は俺に続け。」
くそっ、獲物は檻から逃げた。
(´・ω・`)第二騎兵中隊は遊牧騎馬民族の出身者の編成で全員乗馬の革鎧の軽装騎兵です。




