番外地:帝国編2
「はあ?皇帝が倒れられた!!」
ただその一報で全ての男達が息を呑んだ。
薄暗い部屋には大きなテーブルが占領しており。
帝国の地図が広げられている。
テーブルの上だけに照明が当たっておりテーブルの周りの人影は多いが顔色を窺う事はできない。
「伝令、報告は正しく行なえ。」
「はっ!軍令部発。皇帝陛下、霍乱にて公務ご休養、主治医殿の見立て予断を許さず。」
たちまち嘆息する男達。
息を吹き返したように仕事に戻る。
「参謀、各隊の動きを報告せよ。」
「相変わらず北方辺境伯軍の動きが活発です。」
「正統派は伝令を出している様子です。一部の部隊は物資を収集しています。動く様子は無いようです。」
正統派はカルロス派といわれる、初代皇帝の子孫の集りだ。
南方に多い。嘗ての遷都も正統派と帝国教会の発言力を弱める為と言われていた。
「皇太子派の貴族に帝国教会騎士団の連中が合っている様子です。」
「皇太子派は新帝国派と名乗り始めました。纏めているのは北方辺境伯爵です。」
「元々、皇太子とは学友で親しい間柄です。共に新帝国思想の恩師に学んでいます。」
苦々しい表情のカイゼル髭の将官。
ブンカー思想、帝国の繁栄をもたらすには南方の製品を新領地での資源で賄い発生した利益を新領地への投資に使う。という帝王学の学者が書いた本の名前だ。
新領地は南方の工業製品の市場になる。
経済的新興貴族が多くできる。
開拓の為に農奴が多く必要に成る。
主に東の蛮族で賄っていた。
100年前に帝国が手に入れた北方地帯ソコの新興貴族たちの支持を受けている。
嘗ての北方地帯は遊牧民しか居ない広大な平原や森ので有ったが。
今は開拓も進み自力で経営が出来る様に成ったので労働力の確保の為の東征は行なわれてはいない。
「そうか…。皇帝陛下の容態を漏らしていたのは皇太子自らか…。」
「皇帝陛下の先週の公務は全てキャンセルでした。」
「おそらくその時点で倒れられたのだ…。今の皇帝は気分で一週間公務をキャンセルする事は珍しいことではなかった。」
「では北方伯軍の動きは?」
「反乱目的ではない。恐らく皇太子自らが命令しているのかもしれない。勿論独断で動いているのかも知れないが情報を提供しているのは皇太子派だ。」
「北方伯軍は一部の部隊が南下しています。」
「恐らく頭を押さえる為だ。南方はどうなっている?」
「4日前の日付の報告書ではカーレー伯爵軍が動き出しています。」
「そうか、おそらく。その時点で知ったのだな。帝国教会はどうなっている?
「動きはありません。帝都とその周辺の教会騎士団だけが動いています。」
教会騎士団は帝国教会の信者を蛮族から守るために結成された。
大司教の軍隊だ。開拓地での布教活動が多い。
単独で動くことは無い。
「そうか、皇太子はもう既に大司教とは話を付けたのだな。帝国を分けるつもりか…。我々は出し抜かれたのか…。」
我々帝国内務省秘密警察は貴族や農民の反乱を監視するための情報収集組織だ。
ここ数日、帝国領内の貴族軍は一気に活発化した。
各貴族軍は戦争を始めようとしている。
しかし相手は不明だった。
「ここに来て発表か…。元より俺達の相手が出来る状態ではないのか…。」
「旧帝国派は動いていない様子です。」
「旧帝国派は元々商業都市国家連合のギルドと会社の集りだ貴族の戦争には口を出さない。それより正統派はどうなっている?」
「正統派の動きは遅いです。どうやら他国から何らかの接触がある様子です。小隊規模で国境を越えた目撃情報があります。」
「正統派が他国と?ドコだ?東の蛮族か?」
「湖の向こうの連中です、東の蛮族は大人しいモンです。しかし、湖の向こうには蛮族から娘が嫁いでます。何等かの密約は在ると思います。」
「他国の大規模な介入、進攻はありえないのか?」
「現地の連絡員からはそういった情報は入ってません。」
「そうか…。各員、清聴!コレより我々秘密警察は帝国の安定を取り戻すための活動に入る、不穏分子の逮捕。第五列の捜索を主として活動する。」
「「「はい!」」」
「貴族同士、軍同士の戦闘には一切係っては成らない。コレを厳命する。わかったか!!」
「「「はい!!」」」
「我々はこの戦争に参加することは出来ない。これは反乱では無い。政権交代だ。」
(´・ω・`) 帝国教会騎士団のお仕事。巡教者の安全確保と。異端者を見つけて裁判を行なう事。
(#◎皿◎´)まさかの時の宗教裁判




