242.酒場1
親方とマイト先輩と共に錬金術ギルドへ行き契約書を作成した。
俺の口座を作り金貨1500枚を入金する。
ギルドの職員は驚いていたが。
工房一個買う金額にしては安い。
残りはマイト先輩が溜めるコトになる。
俺は銭を稼ぐダケだ。
コレで金貨1500枚が見せ金になった。
手数料が取られるがギルド間での口座振込みも出来るらしい。
なるほど。”報酬は俺のギルドの口座へ。”が出来るのか…。胸熱だな。
冒険者で稼いで錬金術の品物を買おう。だ。
親方とマイト先輩とギルドで別れて学校に…。
未だ時間が有るな…。
今日は普通科は実技の日だ。
教授も未だ教員室に戻っていないだろう。
そうなると…。正直行く所は少ない。
旅に出る前に大金を使ってしまった。
と言っても手持ちの金貨は285枚。
写本室の修繕代が金貨35枚を払う予定がある。
金に成るコトを考えよう。
先ずは情報を得る。
制服の上着を脱いで灰隠者姿になる。
この姿で町を歩くのはリスクが有るかもしれない。
セオリー道理に昼間から営業しているガラの悪い酒場に入る。
開け放たれた薄暗い店の中に入ると一瞬にして空気が変わる事が解かる。
店の中の男達は皆、眼つきが鋭く一癖も二癖も有りそうな荒くればかりだ。
コレは祭りになるな。
嬉しくなるぜ…。
「クククク。」
「何だ?新顔だが何か用が在るのか?」
カウンターのマスターが俺を睨む。
顔に傷があるコールマン髭で髪はブラウンだが白いモノが混じるフサフサだ。(ココ重要)
「ココは酒場だろ?酒を買いに来た。」
「おう良かった。客なら客らしくしろ。何が要るんだ?」
グラスを置きカウンターテーブルに両手を置くマスター。
ココは俺の城だという警告だ。
俺は軋む床を歩きカウンターのストールに腰を据える。
「ブレン・グランド25年だ。」
驚くマスター。
「チッ、金貨10枚置いて来年来な!取っておいてやるぜ!!」
「無いなら無いと言えよ。では、飲み頃のワインだ…。混ぜ物の無いヤツな。」
「それなら有る。但し銭次第だ。」
カウンター奥を顎で示すマスター。
樽が並んでいる量り売りらしい。
「ションベンで無いなら買おう。」
「杯は自前だ。持ってきてから言いな!量で売ってやる。」
蔑む声色だ。この店主俺が何も解かって居ないと思ってやがる。
「ほう、ではコノ杯にワインを満たせ。」
銅の水差しを収納から20個並べる。
12Lほど入るはずだ。
「チッ!」
店主が一つ取り容器に水を入れて秤に掛ける。
「一杯、銀貨1で全部で金貨2枚だ。」
「良し解かった。ソレで買おう。」
テーブルに金貨2枚を置く。
「ケッ、」
客が金を払うなら商売人の端くれだ。
大人しく働く酒場のマスター。
周りの酔っ払いは皆、俺に注目している。
誰かがケンカ売ってくるのを受け付けるだけだ。
楽な商売だ。
但し客は選べない。
客が選べるなんて貴族ダケだな…。
そんな考えが頭を過ぎる。
「ほらよ、注文の品だ。」
カウンターに並ぶワインを軽くサーチする。
よし!混ぜ物も水増しも重金属も無い普通のワインだ。
残念だが澱のロッシェル塩もソコソコだ。
「ほう、良い品物だ。」
「おう、用が済んだらとっとと帰りな!ウチの店には合わない客だ。」
マスターの指摘を受けて店内を見渡す。
テーブルの男達は誰も俺と目を合わせない。
なんだよ、歓迎会は延期か?ココで顔合わせだろ?拳が先だが…。
「そうか?俺は行儀も社交性もある。少し遊ぶ分には問題ないだろう?」
「おい!止めろ!!」
「大丈夫だ。今日は俺は機嫌がいい。迷惑は掛けない。」
カウンターの水差しを収納して驚くマスターの顔を無視して店内を歩く。
ミシミシと悲鳴を上げる床。
酒場の丸テーブルで酷く咳き込んでいる男の前に立つ。
痩せて目が落ち窪んでいる、顔色も悪い。
無精ひげの中の唇が紫色だ。
驚く男。
喉から耳障りな風を切る音を出している。
間違いないだろう、お目当ての男だ。
「な、なんだ、ゴッホッ、おめえは…。ゲホゲホ。」
「一杯どうだ?話が聞きたい。礼はする。」
「何をだ。俺を知っているの…か?」
なるほど。喘息の様子だ。
空に成っている男の鉄のカップに水差しのワインを注ぐ。
「おい、そんな男に飲ませる様な酒じゃないぞ!」
後ろでマスターが叫んでいる。
なるほど高いワインを買わしたのか?
いい仕事じゃないか?
「さて、話を聞きたい。お前は山患いだ。どこの山に居た?」
「ゲホゲホゲホゲホ。北の炭鉱の町だ俺が入っていたのは鉱山の方だ…。」
ビンゴ!




