234.発生器
路地からポーンで学園の校舎前に戻った。
何故かガーズの衛兵が敬礼して出迎えた。
返礼して図書室へ向かう。
図書室のドアーを潜ると既に。
鉢巻き少女隊がロリロリと一緒に席に付いている。
司書たんも居る…。
「さて申し訳ないが…。」
何故か壁を殴る音にかき消される。
そうだな…。
修繕作業中だ。
壁殴り代行が壁を崩す間に…。
イカンなうるさ過ぎる。
「全員揃っている様だな。ココは…。いや。壁側でやろう。少しは静かになるだろう。」
席を移動する…。
あまり変わらないが仕方ない。
「では今日は前回の続きを行なう。コレよりマグを配る、個人の物として名前と番号を書き管理せよ。」
「「はい!」」
目の前にマグと低級ポーションを並べてゆく。
水差しと種の袋を置く。
「各自、順番に水と種を必要な分量だけ入れろ。準備が出来たものから挙手、魔力を充填する。切れたものはその場で挙手すること。」
「「はい!!」」
うーむ、女子だけなので返事が良い。
21番の白銀赤目のオカッパちゃんが手を上げた。
たしか21番は…と。
クリップボードの紙を捲り21番の用紙でパターンを確認する。
コレは腹巻型の魔力発生装置に対応した魔力パターンの変換紋章の一部だ。
44人全てのナンバーズの変換紋章を書いておいた。
勿論確認作業はコレからだ。
うん、デコの鉢がねに魔力充填された。
「試してみよ。」
「はい、動きます。」
「よし、では訓練開始。異常が出たら挙手せよ。特に体調の変化にはな。」
「はい!」
上手く行ったので”動作確認OK”を紙に書き込む。
全員の充填が終わると
「各自試行錯誤を行い習得せよ。異常が出たら挙手せよ。」
全員マグを覗き込んで真剣だ。
さて、ロリロリと司書たんに課題を出さなければ…。
3人はもう既にマグの準備を終えている。
司書たんはもう既に俺の紋章で並の魔法使いと変わらない状態だが。
試すコトがある…。
「エレノア、手伝ってくれ。俺に付いてこの子達に魔力の補充を行なう。エミリーとマルカも手伝ってくれ。気分の悪そうな子を見つけてくれ。」
「「「はい、」」わかりました~♪」
さて、コレは重要な実験だ。
トライバル紋章には自分の魔力に変換する紋章は在っても他者の紋章に合わせる機能は無い。
司書たんタイプは発生器機能が無いのか変換機能が無いのか?の大事な切り分けだ。
勿論個体差が有るかも知れない。
思い込みは結果を歪める。
鉢がねの魔力切れで挙手する子が出た。
29番の緑色の髪のお下げだ。
ゲームっぽい。いや、魔法少女っぽいな。
顔色を見るが異常は無い様子だ。
「エレノア、魔力の充填をやってみるか?」
「は、はい!!」
嬉しそうな司書たん、眩しい笑顔で俺ははあはあしてしまう。勿論顔には出さない。
「では、鉢がねの石に手の平を合わせて。俺はエレノアを通して魔力を送るので感じること。」
「はい!」
お下げの鉢がねに手を当てる司書たん。
29番にの鉢がねに小量充填する。
「あ、解かります。」
「では続きを…。」
司書たんの肩から手を離す。
問題なく魔力は発動している。
自然の魔力を自分の魔力に変換できないが、他人の魔力に変換することは出来るのか…。
何か矛盾している様な気がするが…。
しかし。訓練された司書たんはパターンをずらしても追従するコトが出来た。
「10番、未だ魔力が在ると思うが補充を行なう。エレノア、パターンを読み取って補充して見てくれ。」
「はい」
「は~い」
司書たんが嬉しそうに魔力を読み取りパターンに合わせて充電している。
う~む、この様子なら全員のパターンを読み取ることは可能だ。
単純に生の魔力を変換する能力が無いのであろう。
汎用魔力変換機の道は開けた。
但し着用者は訓練が必要だ。
鉢がね少女隊は魔力コントロール能力には何等問題は無い。
司書たんレベルまで訓練すれば標準的な魔力発生装置で無限に湧き出す魔力を身に着けるコトが出来るであろう…。
アイテム型になるかトライバル型に成るかは別にして…。
「エレノア、大丈夫か?疲れたりしていないか?可能ならば他の子も補充してやってくれ。読み取って合わせる練習だ。」
「は~い♪」
俺はエレノアの肩に手を置きトライバルの動作を監視する。
やはりトライバルがエレノアパターンを発生させてエレノアが魔力を変換している。
他者の魔力を変換出来る様に成れば良いのだが。
効率が悪すぎる。
もっとパターンを収集できれば…。共通パターンが有るのかも知れない。
「あの。少なくなってきたような気がします。」
15番の黒髪ロングが手を上げてきた。
なるほど…。自分の魔力が分かるようになったのか?
鉢がねを確認すると確かに残り少ない。
どうすべきか?
次の段階に進んで良いだろう。皆マグの回転動作は問題は無い。
「よし、次の段階に進むので魔力が無くなるまで練習。無くなったら両手を机の下に。全員揃ったら次だ、エレノアは休憩。」
「「「はい!」」♪」
39番の赤毛のポニテが素早く両手を机の下に入れた。
確かに無くなっている。
何か、39番は消費が早いな。
効率が悪いのかもしれない。
考査に書く。
最後の21番、白銀赤目が手を下ろし。全員揃う。
この白銀オカッパは消費が少ない。
「では、揃ったので全員、マグの中身を半分だけ飲んで水を足せ。」
「「はい!」」
マグを呑む少女たち。
水差しが机を移動する。
コレで薄くなったハズだ。
制御が難しくなる。
「準備が出来たな?先ほどと同じだが、反応が悪くなる。細かい制御の練習だ。只の水で出来る様に成るのが目標なので家でも練習すること。」
「「はい!」」
21番、白銀オカッパは問題なく動いている。
39番の赤毛のポニテは苦戦している様子だ。考査に書き込む。
ポニテの肩に手を置き39番のパターンで操作する。
「あ。解かりました。」
「うむ、続けよ。」
ぎこちなく動くハーブの種。
魔力消費が多い者は魔力変換に何かクセが付いている様子だ。
外部から矯正してやる必要が有る。
見て回りクセがある者を見つけ考査に書き込む。
自己で修整できる範囲だな…。
時間が来たので解散の前に注意事項を話す。
「ココに居る者の殆どは課外授業の申請者である。明日の放課後この図書室で説明会を行なうので必ず来る事。今ココに居ない者にも伝えてくれ。未だ課外授業の単位を取っていない者にも声を掛けてくれ。」
「はい、解かりました。」
「予定では。明々後日の朝に出発する予定だ。」
「え?」「はい。」「急いで準備しないと。」
驚く鉢がね少女隊。
「うむ、必要な装備等は明日の説明会で話す。しかし、何故?こんなに固まったんだ?」
「あ、あの…。ある程度の魔法が使えないと参加資格が無いんです…。」
10番の金髪ショートが答える。
「はい、それで辞めて行った子も居ます。」
23番の金髪ウェーブ垂れ目の娘が続ける。
「そうか…。」
顎に手を置き考える。
残念だな。貴重な実験体が…。
「あの…、課外授業の開設ありがとうございます…。」
15番の黒髪ロングが胸に手をあて頭を垂れる。
「うん?ああ、問題ない。その為、来週の講習会は休みだ。なので皆に伝えてくれ。”各自で自習を行なうこと。目標は只の水で回転を完成させること。”と」
「はい、解かりました。」
「コツはポーションを徐々に薄めて練習することだが…。エミリー。留守中に困っている子が居たらアドバイスしてくれ。」
「はい、任せてください。」
エミリーが頭を垂れる。
よし、コレで身の周りの整理は出来た。
後は実行するだけだ。




