230.冥府の王1
騒がしい図書室を後にする。
時間が中途半端になってしまった。
どうすべきか…。
図書室で作成した、親父への手紙。決闘の経緯と結果、エレノア・ハントリーとの仲。結果メアリー・デービスと絶縁になったコトをそれと無く書いた物が手元にある。
国元に送るか…?
いや、公務で王都の屋敷に居るかもしれない。
入れ違いに成ると面倒だ。
とりあえず王都の屋敷に送ろう。
屋敷なら家の者が一番早く親父の手元に届くように手配するだろう。
学園の購買部へ向かう。
手紙の配達サービスが在ったハズだ。
学園新聞は剥がされていて何も無い。
依頼も無い。
俺の出した募集は未だ貼ってある。
購買部のメガネ女子に手紙の送付を依頼する。
「はい、承りました。あの。オットー様。募集に何人か応募している生徒が居ます。」
「そうか…。(こまった)明日の放課後の図書室で説明会を行なうので集るように言って欲しい。今週末に出発の予定なのでもう下げてくれ。」
「わかりました。今日までの有効にしておきます。」
「うむ、解かった。」
少々早いが教室に向かおう。
ケチが付いたのでマイト先輩に合うのは明日にしよう。
廊下を歩き教室に向かう。
オットー教室のドアーの前に立つ。
中では講義中の様子だ。
「失礼します。」
ドアーを潜り何時ものロビンの席の隣に座る。
相変わらずの謎の緊張感だ…。
授業の内容も宗教一色だ…。(無表情)
まあ、良い。旅の必要な資材を集めるコトを考えよう。
人数は明日解かる。週末の半ドンに馬車を受け取り資材を集めて休日出発にしよう。
ソレには一人頭の必要資材を割り出す必要がある…。
メモ帳に書き始める。
参加者、個人用非常食としての固パンとチーズ、干し肉を買い付けなければ…。
水筒は持って来させよう。自分用のコップと皿、カトラリーも用意させよう。予備はコチラで用意しておこう…。
夜は夜営のテント設営と食事の準備、野菜の類は在るので現地でシチューを作る…。
適当な動物を獲って食べる…。
果たして…。参加する生徒は蛇とか食べられる系の人だろうか…?
「さて…。ではこの後は質問を受け付けよう…。質問者は挙手すること…。」
ワリス教授が質問を受け付けるが誰も挙手しない…。
「では、コチラから指定しよう。生徒オットー。死んだ兵士をどうやって蘇生させた。」
いきなり指名されて驚く。
いや、貴族は驚かない。
でも内職していたのでやましいコトは在った。
「はい、死にたてで未だ暖かい状態で尚且つ身体の損傷が軽微なモノなら比較的簡単に蘇生は可能です。」
魔法なんか使わなくてもな。
「そうか、それは冥府の王との契約か何かか?」
冥府の王って…。ガチャ引かないと勝てないゲームのボスか?
「さて…。ソレは知りません…。」
冥府の王は知らないのでとぼける。
阪府の王将なら知っているが…。チャオズの方も好きだ。
「そうか…。では聞かない事にしよう。だが一つだけ教えてくれ。その魔法は何らかの…。代償は在るのか?」
ワリス教授の顔が何故か真剣だ。違う意味に取ったらしい。
「う~ん、」
腕を組んで顎に手を置き考える。
特に思い当たらない。只の空気圧縮と電撃パルスだ…。テクニックは必要だが。代償は無いコトも無い。
「答えられないのか?」
「代償は…。確かに在ります。使用者の身体の一部の…。」
戦友が散っていきます。
でもベッドの上での代償のほうが遥かに大きいです。
「そうか。解かった。生徒オットーその魔法はよくよく考えて使うこと。」
「はい。わかりました。」
友の為に使うのなら良いだろう。
「では早いがココまでにしよう。」
俺は立ったままだが教授が教室から出て行く。
さて、飯にするか…。
振り向くとミソッカス共を探そうとするが教室の生徒全員が俺を見ている。
誰も飯に立とうとしない…。
「あの…。オットー・フォン・ハイデッカー様。質問宜しいでしょうか?」
手を上げる男子生徒…。誰だっけ?名前が出てこないが。
基本科の…。幽霊のケツをガン見した少年の兄のハズだ…。
「俺に答えられる様な物ならば、どうぞ。」
「はい、申し訳ありません。今日の決闘で兵隊達を倒した魔法は何でしょう?」
「アレは…。うむ、何と言おう…。うん、エアーボールだ。」
言ってみてしまったと思う。
俺のネーミングセンスは最低だ。
ゲームには無い魔法だ。単純に高圧空気を開放して衝撃波で敵を気絶させるダケの技だ。大地球に優しい。
「エアーボール?何系なのですか?」
空気球では確かに情けない…。
しかし、圧縮熱をコントロールしないとダメなので意外に難しい。
狭い場所で使うと恐ろしいコトに成るだろう…。
「ウインドカッター系?」
首を捻る。確か高圧空気系だ…。
「風の系統なのですか?」
「以前、皆の前でやって見せたはずだが…。」
手の平の上でに空気を圧縮して2m上で開放する。
衝撃波が発生する。流石に前の時よりは小さくした。
教室内が”ざわ・・。””ざわ・・。”し始める…。”見たか兄弟。””見えた解かったぞ!!”
むっ!!どっかに乳タイプが潜んでいる!!
「あの魔法は攻撃用なのですか?」
「いや、そうとは限らないが使い方に寄って攻撃に使えるだけだ。」
丁度、昼の鐘が鳴った。
もう解散だな…。
ロビンの首根っこを掴もうとするが何故か逃げないロビン…。とサンピン達。
「オットー。飯を喰いに行こうぜ!!」
カールが教室の上から叫ぶ。
「解かった、行こう。おい、行くぞ飯だ!!」
「「はいっ!!」」
素直に従うサンピン共…。何か有ったのか?




