229.校庭の戦い2
ブリキ野朗に向かって吸い込んだ空気に喉を震わせ伝える。
「オットー・フォン・ハイデッカーの名に置いてこの決闘の勝利を宣言する。異のある者は剣を抜け!!」
はい、挑発です。
兵共での勝敗で決る決闘だ、立会人が買収されていた場合を考えて真っ先に立会人の脳を炭に代える準備をしていたが無駄だった。
コレを覆すにはバケツ野朗が剣を抜くしかない。
「オスヴィン・グリューンベルグが異を注ぐ。この決闘は未だ決着が付いて居ない。」
おう、ヤル気だね、流石男の子、口上を続ける。
「了解した、決闘の続きを行なう。剣に寄る物か?魔法に寄るものかを問う?」
バケツを睨むと答えが返って来た。
「け、剣での決着を望む。」
ほう、良い返事だ。
「解かった。ではどちらかの死か。降参を持って決着とするよろしいか?」
「そ。それで良い。」
”ぼっちゃん、相手のペースです。”
死体が囁くがぼっちゃんには届かない。
「では、当人同士の決闘を行なう。魔法の使用は無しとして剣と腕のみの決闘とする。どちらかが負けを認めるか、明らかな勝敗の決定の場合、立会人は勝者を選定する。意のある者は剣を持って正すこと。」
小隊長の宣言だ。
問題は無い。
「うむ、解かった。」
「お、おう、ソレで良い。」
立ち上がるブリキ男。
収納からツヴァイヘンダー型のロングソードを取り出して切っ先に布を巻く。
刃は入っていないが急所を突くなら殺傷能力に変わりは無い。
立ち上がりヘルムを直すブリキ野朗に準備完了したコトを伝える。
ブリキ野朗は剣の鞘を抜く。あの粗大ゴミでドコまで本気なのかが不明だ。
先に布の付いたツヴァイヘンダーを両手で持ち足と手を代え左右に構える。
うん、良いバランスだ。
そのまま肩に刀身を担ぎ余裕の笑みを送る。
バケツの下の目が合う。
良い感じだ。相手の目には恐怖が浮かんでいる。
「では、双方位置について…。始め!!」
「うわあああああ!!」
粗大ゴミをバケツが大振りな軌道で振りぬく。
フェイントに注意しながら半歩で身を反らす。
うーん、剣の重さを自分の物にしていない。
恐らくレイピアの剣筋なのであろう。
身体の軸がブレている。
横から相手の軸足、脹脛を蹴る。
簡単に転がるブリキ。
「立て!」
叫び肩に剣を担いだまま向きなおる。
うん、そんなに反射神経は悪く無い。
成れない鎧を着ているので重さに振り回されている。
転がるブリキは安全圏まで逃げている。
そんなに頭も悪く無い様子だ。
「くっそ~お!!」
起き上がり上から振り下ろす動作に出たので。
踏み込んで前に出たヒザの上を足の裏で踏んで止める。
動かなくなった下半身の為に上半身は剣を振り下ろすことが出来なくなる。
そのまま切っ先を鎧の首元に突き刺す。
相手の勢いを利用しているので俺は剣を両手と姿勢で固定しているダケだ。
首元の…。首鎧と言うか前垂が割れてバケツの喉に刺さる。
おい、こんなので割れるなよ…。
「ゲッッフ!ガッ!!」
ぬるぽしていないのにガッされてしまった。
喉元を押さえながら転がるバケツ野朗。
剣の先の布には血は付いていない。
只の打ち身で済むはずだ…。
起き上がらないバケツ…。え?俺のせい?
「ぼっちゃん!!」
死人のチビが走りより頭のバケツを取り外す。
武装を持っていない様子なので…。まあ良いか?
勝敗は付いた様なモノだ。
半身を起こされたブリキ野朗は…。なるほど革鎧の頭巾を着ていたのか。
革は切れていない。
首元を圧迫されただけだ。
苦しいダケで直に治るだろう。
転がって足元に来たバケツヘルムに腰のファルカタを叩き込む。
うん、刃がないが、帝国の鋼を突き破り刀身が中まで達している。
この鎧の浸炭、あまり精度が良くない様子だ…。鉄の鎧よりはマシだろうが…。
首鎧が割れる様では…。
バケツ男に近づき勝利を宣言する。
「この様に戦闘は不可能と認める。勝利を宣言する、宜しいか?」
ファルカタを振って突き刺さったヘルムを落す。
斬られたヘルムが地面を転がり裂けた面を晒す。
「主人に成り代わり敗北を受け入れます。」
「げええっふぉっげ!!」
チビが敗北を認める。
騒ぐバケツ、敗戦を認めてないが、俺が剣を下ろせばゲームオーバーなのは誰の目でも明らかだ。
「立会人殿よろしかな?」
「はい、勝者、オットー・フォン・ハイデッカー!!異のある者は申し出よ!!」
喋れず立ち上がれないバケツ意外は誰も異を唱えない。
「では勝者の権利を申し出る。」
地に落ちた粗大ゴミの剣にブーツの踵で踏み抜く。
簡単に折れる大剣。
やはり亀裂が入っていた。
バケツの腰のダルガンの剣を奪う。
「コレは勝利者としての正統な権利である、エレノア・ハントリーの身柄を賭けて戦った証の戦利品である、異論はあるか?」
「いえ、ありません。旦那、ありがとうございます。ぼっちゃんの命を…。」
チビが頭を下げる。
声が出せないバケツは恨みがましい目で俺を見る。
仕方が無いので引導を渡す。
「お前は、この決闘の中で一度もエレノアの名を出さなかった。お前の決闘は、お前の物で女の為の物では無い。俺は女の為に戦った。家など関係は無い。コレは俺の戦争なんだ。」
悔しそうに涙を流すバケツの中身。
敗者に掛ける言葉では無いのかもしれない。
死体のマネを止めた優男の兵達はバケツの中身を担いで学園を去った。
俺は俺の戦争の初の勝利を掴んだ。
どっかのNPC相手に…。
俺のゲームが今。始まったのだ。
さて、敗残兵を小隊長に引渡し。
野次馬の生徒達も解散した。
フェルッポが掘った穴を手早く埋めて教室に行ったらしい。
ミソッカス共ももう居ない。
俺は未だ校庭で後始末だ。
立会人の小隊長は報告書を書かなくては行けないらしい。
詳しく聞かれた。
なるほど。面倒だな決闘、巻き込まれると書類地獄かよ…。
やりたがらない理由が見えたのでコレからは自重しよう。
校庭で鎧の破片を拾った。
帝国の鎧の破片だ。
コレで帝国の技術の一部が解かる。
全てが終わると中途半端な時間になってしまった。
図書室へ移動する。
「おはようございます~♪」
司書たんの笑顔が眩しい。
ぷにぷにしたい。
「エレノア、面倒事は全て終わりました。」
「はい。」
「コレで貴方は俺の物です、誰にも文句は言わせません。」
「はい、ありがとうございますオットー様。」
エレノアの髪に触れる。
顔が赤くなり恥らうエレノア…。
目をつぶっている。
潤んだ唇に近づく。
誰も居ない午前の図書室で…。俺は勝利を味わうのだ…。
「まいど~!こんちわ~っす!!」
「「失礼しや~っす!!」」
元気に入ってくる笑顔の男達、学生ではない。
思わず飛びのく俺とエレノア。
「今日から部屋の壁をハツッて修理に入りますんで!!よろしくお願いしゃ~っす。」
「「お願いしゃっす!!」」
「はい写本室の修理のかたですね?よろしくおねがいします。」
「はい~。今日、明日は壁のハツリなので少々騒がしいですがよろしくお願いします。」
「聞いております。ではコチラの部屋へどうぞ。」
エレノアが案内して道具を担いだ男達が写本室に入っていく。
なるほど大工か…。
俺が発注したのか…。
何でこのタイミングなのかは不明だが…。
俺が立てたフラグなのは間違いない…。
コレではエレノアたんとイチャコラするコトが出来ない。
くそっ、なんてゲームだ!!
(´・ω・`)長かった…。決闘までの道程が…。
(#◎皿◎´)文字数的にはそんなに無いからな…。ダラダラしすぎ。
(´・ω・`)あっさり勝つし…。
(#◎皿◎´)相手は慣れないフルプレートに使った事無い大剣だからな?普通に勝つだろ?それより司書たんとのラブラブチュッチュは?
(´・ω・`)それまでも長いかも!!
(#◎皿◎´)おい!!




