226.保健体育1
時間になった様子だ。
マルカが呼びに来た。
イカンなもう既に全員集っている。
「ああ、すまない皆の者、資料の整理に手間取ってしまったが…。よし、全員揃っておるな?」
「「はい!!」」
目の前に座る少年少女…。少年が断然多い。
何か飴がもらえると解かっている子供達に見える…。
「さて、君達には今回は座学を行なう。一般的に発育と運動には密接な関係がある…。」
「あの…。魔法の授業は行なわないのですか?」
8番の少年Dが手を上げて発言してきた。
「ああ、そうだな。お前らは未だ発育途中で魔法使いには未熟だ。よって体と精神の発育を促す教育を行なう…。主に人体の構造と栄養学だ。あと…。運動法…?」
「え?は、はい。」
しぼむ8番。
全員が落胆した表情だ。
仕方ないな…。
「マグとポーションと種は最後に配布する。各自時間の空いた時に自習せよ。」
「「はい!!」」
現金な者だ。
途端に明るい表情のCD少年たち。(少女も居る)
「では何か筆記用具を出せ。無い者は支給する。資料として大事に保管せよ…。」
キャンバス型の移動黒板(イーゼル付き)が在ったので借りる。
全員がノートを持っている様子だ。
人体の構造と内臓器官、消化管の働きについて大まかに絵に描いて、説明する。
特に心臓の下りと神経管構造については質問が集中した。
エミリーと司書たんも真剣に聞いている。
マルカには以前に話した内容の講義だ。
「恐らく。人体の循環液体である…。君達のよく知っている血は体重の1割弱。8分程度と思われ。この循環液体の総量の1/3が失われると死にいたる。未だ捕虜で実験していないので、不明だ。志願者は申し出ること。」
時々冗談を言って場を和ますが。
何故か全員の顔色が悪くなる…。
悲壮な顔だ。
おかしいな、ココは笑う所なのに…。
講義の時間を半ばで切りあげると。
次は運動の講習。
みんなで自衛隊体操だ。
「机を退けて等間隔に並べ。運動の用意だ。」
並ぶ少年少女を前に運動の見本を行なう。
勿論、やりながら憶えさせる。
「その場駆け足から、イッチ、ニー、サン。シーおら声出せ!!」
「「は、ハイ。いち、にーさん」」
うむ、動作はバラバラだが悪く無い。
特にモモ上げの司書たんのスカートがすんばらしい。ペロペロしたい。
「もっとヒザを上げて!!」
フトモモフラッシュを脳内に焼き付ける。
CGゲット!!さり気無くガン見しているが直にばれて微笑みかけられる。
いかんいかん。
「ワンモアセッツ!!」
誤魔化す。
何故か自衛隊体操を二回やると皆フラフラになっている。
俺も息が上がる。
「さあ、全員で深呼吸だ。息が落ち着いたものから。瞑想を行なう。一日二回。時間の在る時に必ず行なうこと。コレは脳幹の神経系を安定させ。動きを活性化させる効果がある。」
全員がその場で胡坐を掻く。うん、司書たんぱんちらゲット!!
「目を閉じて。背筋を伸ばし~。ゆっり息を吸い…。止めて。ゆっくり吐く~。はい繰り返し…。」
皆が目を閉じてるが俺は司書たんのゆっくり動くお腹から目を離すことはない。
すばらしい動画だ…。一生忘れない。
ぜひ今度。二人っきりの時に…。
「あの…。もう時間が…」
エミリーの声で正気に戻る。
「ファッツ!そうだな…。思わず時間を忘れてしまった…。」
日暮里大砲手入れの笑みで清々しく答える。
何故かロリロリは非難の眼差しだ。
「げふん、げふん。ではコレよりマグを支給する。名前と自分の番号を書き込め。代えは無いと思え。」
一人ずつ手渡す。
たいした物では無いのだが受け取ると皆、両手で感触を確かめキラッキラッした目でマグを光りにかざしている。
最後の一人に渡すと。解散の宣言を行う。
「さて、君達は未だ魔法使いとしての資質を表していない。コレは病弱と言う意味では無く、未だ魔法使いとしての鍛練を受ける段階ではない。未だ魔法の鍛練を受ける程の身体的な成長が終わっていない者だ。」
「あの。それはどの様な意味なのでしょう?」
赤毛の少女が挙手して質問する。
確か3番の少女だ。
「君達は未だ学園に入るのが早すぎたのだ。後、2~3年。いや。人により5年ほど後に入れば問題が無かったのかもしれない。」
「あの…。魔法使いの…魔力の鍛練は早いほうが良いのでは?」
31番の茶髪のロンゲ少年が手を上げ質問を行う。
モチローン俺もそのセオリーは聞いている。
が。ココの少年達はその常識の外だ。
「うむ、座学的にはそうなのかもしれない。しかしソレなら魔法特性が在るのに一定数が単位を取れない理由は説明できない。体を動かしよく食べて寝ること、コレも魔法の鍛練と思い毎日行なうこと。あと好き嫌いは無くすこと。肉を食え野菜と果物を食べろ。」
「「「はい!!」」」
解散して元気に帰るCD少年たち…。
思わずコメカミを揉む。
果たしとコレで上手く行くのだろうか?
魔法で成長を促進して強化できるのでは?
実験体が少なすぎる…。
正直。あの冒険者”ムロ”を捕獲して解剖しマーモットと比較すれば…。
成長と魔力の因果関係、つまり。人体の不思議と魔力の世界が開ける。
あの、出所があやしい人体の不思議の検体スライス標本が…。




