221.錬金術(銭の方)1
時間を無駄にしたのでポーンで移動する。
節穴親父の武器屋の前だ。
収納から78本作った内の62本とマンゴーシュ4本、更に鋼ロンダの2本だ。
正直、100kgを越えている。
”ウェイ”で気張るが流石に肩に食い込み痛い。
さて、幾らに成るのか…。
店のドアーを潜る。
「おお、来たな坊主、待ってたぜ…。」
「持ってきたぞ親父。買取だ。先ず完成品から頼む。」
「どれどれ。ああ、何時ものヤツだな。2本か…。もっと持ってきてくれ。」
検分する親父。顔は渋い顔だが口元が綻んでいる。
商売人なら表情に出すなよ…。
「流石に柄に合うヤツが無くなって来た。もうそろそろ打ち止めだ。」
「おいおい、頼むよ。最近のウチのおすすめ商品なんだ。稼ぐような名の知れたヤツは皆欲しがっている。」
困った武器屋だ…。いや、この世界の…。王国の冶金技術がへっぽこなだけかもしれない。
「まあ…、考えておく…。」
「よし。1本金貨20だ。出来ればもっと持ってきてくれ。」
「そうか…。次はコレだ。昔の刺突剣だ。」
嘗ての押し売りババアのオマケ剣、4本をカウンターに載せる。
「おお、コレか…。俺が現役の頃は年寄りの冒険者しか使ってなかった…。こんなのが又、流行るとはなあ…。」
1本抜いて手首でバランスを確かめる節穴親父。
「使ったコトが有るのか?」
「ああ、駆け出しの頃だ…。青銅の安物が大量に有った。まあ直に使えなくなる様なモノだった…。コレは随分と良いモノだな…。俺の使っていたヤツよりずっと良い。」
「一応…、全部量産品の鋼だ。良いモノだが…。何分古い。地金の参考に使った。」
勿論嘘だ…。まあ売り口上だな。
「コイツは坊主が作ったヤツじゃないのか?」
「ああ、昔。数本同じ物を手に入れた。折れるまで使ったヤツと、鍛冶の練習で殆どダメにした。」
「そうか…。良いモノだが…。コレは駆け出ししか買わない剣だ…。高くは買えない。出して1本金貨3枚だ。俺は金貨5枚で店に出して気に入ったヤツには4枚で売るつもりだ。」
奇しくも、祖国の武器屋と同じ値段だ…。
しかし元はオマケ。全然OKだ。
肩をすくめる。
「まあ、そうだろうな…。俺も古道具で手に入れた様なモノだ。剣として使える程度には手入れはしたが…。正直。在庫処分だ助かる。精々見込みの在るヤツに売ってくれ。」
「ああ、解かった。そうするぜ。」
メモに金額を書き込む節穴親父。
「さて、コレからは俺の作った未完成品だ。先ずはショートソードだな。」
刀身のみの剣を10本並べる。全て鋼だ…、性質的にはSK鋼に近いが…、アレより粘りや強度は落ちるはずだ。
炭素量が個別に1.5%~0.9%とバラツキがある。
「随分と形が揃っているな…。」
「ああ、同じ型紙を使ったからな…。まあ量産品のショートソードだな。」
1本づつ確かめる親父。
まあ、バランスは柄が付けてからの話だ。
錘を足す場合もある。
刀身の亀裂や曲がりを中心に見ているようすだが…。
「随分と…。軽いな…。」
「あ?」
「いや、こんなに軽いと。折れないのか?」
おかしなコトを言う節穴親父。
「なら、1本折ってみろよ。」
「あ?」
「1本ダメにしていいぜ?折ってみな。」
最大肉厚5mmの鋼だ。簡単には曲がらない。
「おいおい、壊れたら金は払わないぞ?」
「俺はそんなヤワなモノは作らない…。どうだ?ソコの段差に置いて上に乗ってみろ。」
「おいおい、ソレは勿体ない。」
怖気づく節穴親父。
「まあいいだろう。全部ソコの鎧…。無いな…。」
親指で示す棚が空っぽだった…。
なんだよ…。恥かしいな。
「ああ、売れた。あの鎧はこの前の貴族の兵が買って行った。」
「いいだろう。帝国軍の鎧を貫くために作った剣ばかりだ…。」
「おいおい、物騒なモンだな。」
「当たり前だ…。命を預けるんだ。一番硬いモノを斬る様に作ったんだ…。」
「ドラゴンバスターでも作ったのか?」
「あ?ドラゴン見たのかよ?」
「いや…。見たことは無いが…。さっきの刺突剣を持った売出し中の冒険者が名剣を持っていて。ソレがドラゴンの鱗も貫くという話だ…。ホントかどうかは知らない。」
「うーん、ドラゴンか…。」
ティラノサウルス級だと剣だけでは難しいかもしれない…。
たぶん38mm速射砲なら打ち抜けるハズだ…。
「いや…。噂だ…。」
「そうか…ソコまでのモノでは無いが…。その昔の名刀よりは良いモノだぞ?」
並べたオマケの刺突剣を指す。
「そうか…。解かった。1本。金貨7枚でどうだ?拵えと砥ぎが要るからな…。そんなに高くは出せない。」
「あ?まあ良いだろう。」
正直もっと安いかと思った…。
この節穴いくらで売るつもりなんだ?
(´・ω・`) 武器屋の親父は”貴族の兵”に値段を吹っかけて売ってます。
(´;ω;`) 在庫処分。




