218.冒険者たち1
寮の部屋に戻り着替えて朝食を食べる。
今日はブランと共に昼まで町に出るつもりだ。
マルカはベスタと共に学園へ…。
断られた。
友人と共に登校するらしい。
困った。いや、困らないが…。
喜ぶべきコトだ。友達が居るなら問題はない、
「お小遣いをあげよう。昼はコレで友達と何か食べなさい。」
大銀貨一枚を渡す。
「いえ…。必要有りません。」
「まあ、次の…。いや、そろそろ課外授業の準備が必要だ…。友達も経験しているだろう。個人で必要な物を聞いてメモしておけ。買う物の足しにしろ。あと…。高額な物は相談しよう。」
「はい…。」
渋々受け取るマルカ。
「ベスタにも渡そう。何か…。旅…。で無くても良いが。個人の消耗品の調達に使え。俺は昼までには学園に戻る。アレックスに伝言を頼む。間に合えば一緒に飯を喰おう。」
「はい、わかりました。では私は昼前まで寮の仕事を行ないます。昼前にアレックス様達と合流します。」
メイド服のベスタと制服のマルカを見送る。
青隠者姿で寮を…。いや、ブランと共にポーンでエンリケの店の前に飛ぶ。
店は未だ開いていないが…。
冒険者の一団が店の門を叩いている所だった。
「おはようございます。山猫団です。買取お願いします」
なるほど…。若いが礼儀正しい者達だ…。もっと冒険者とは荒々しい者達だと思っていたが…。
店にゆっくり近づく。”おい、あんな男居たか?””やべぇ””この距離まで誰も気づかないワケ無い…。”
イレーネが店を開けた様だ。
「おはようございます。いつもありがとうございます…。あら?オットー様。」
「ああ。すまんな商売を進めてくれ。」
「はい。あの、オットー様。コチラの方が良く薬草を集めて来る冒険者チームの山猫団の方です。コチラが学生さんで薬草の依頼を出したオットー様です。」
「あ、ありがとうございます。はじめまして、依頼を受けた冒険者、山猫団のチームリーダ、アジルです。」
茶色の短髪ノッポが話しかけてきた。
なるほど…。いかにも冒険者だ。
装備がイマイチだが…。
「うむ、学園の魔法使いのオットーだ。何時も済まない。助かっておる。」
胸を張って偉そうに言う。
四人の若い冒険者チームだ。
ケガ人も居るようだ。
「「「おねがいシャッス」」」
開いたばかりの店で手早く開店作業をするブランとイレーネ。
「はい、おまたせしました、では買取を…。」
「では、ザーバ。品物を。」
骨太の赤毛の大男がリュックを下ろし草の束を出してきた。
「うむ、」
骨太赤毛はザーバと言うらしい。剣と木で革張りの大盾を持っている。革の鎧とヘルムだが…。タンク職か?
出した薬草束を検品するイレーネ。
ブランはスンスンして頷く。
「はい、ありがとうございます。問題ありません。」
「では、サインをお願いします。」
イレーネが書類にサインをする。
あの書類を持ってギルドで精算か…。
実物の冒険者を見るのはコレが初めてだ。アレほどゲームで行なったコトが目の前で行なわれるのは感慨深い物があるな…。
「薬草2の余りはないでしょうか?」
「今回は少なかったのだ…。」
ザーバが薬草2の束を積む。5束ぐらいか?
スンスン
頷くブラン。
「はい。御代です。」
イレーネが小銭をリーダーのアジルに渡す。
「はい、確かに。助かります。」
リーダーが確認して商売の話が終わり皆ホッとする。
「イレーネさんありがとうございます。」
「うむ、コレで黒字だ…。」
「ブランさんやべぇその服かわいい。」
ブランがその場で一周回るメイド服のスカートが膨らみしぼむ。
「「「おー。」」モーサには無い可愛さだ…。」
「うるせぇムロ!!あたいだって可愛いべべ着ればそんなに悪く無いんだ。」
「おいおい、店の中でじゃれるのは止めるのだ。妹よ。」
「兄貴。ムロがいっつも女扱いしないんだ。」
なるほど、紅一点、文字どうり赤毛のチビはタンク職のザーバと兄妹らしい。
同じ赤毛だ。そう思えば顔も…。似て無いな。
「あの、オットー様は学園の魔法使いと言うお話ですが…。失礼ですが…。どのレベルなのでしょうか?」
「やべぇ、ムロが敬語つかってら。」
「おい、モーサ失礼だぞ。」
「うむ、依頼主様だ、敬語が必要だ。」
ムロという男は痩せ型で白銀のロン髪で包帯姿だ、剣を装備しているが余り馴染んで無い印象がある。
しかし、レベルか…。困ったな。どうやらメテオストライクは一般では無い様子だ。
この世界でイオナズンは無い。
どうやって説明しようか?
「アイスジャベリンが使えます(棒)」
「すごい!!宮廷魔術師クラスだ!!」
「やべぇ、ムロが興奮してら。」
「む、たしかに珍しいことだ。」
「ムロ、あまりオットー様に失礼なコトは…。」
「すげー、見てみたい。オットー様、おれ、魔法使いの端くれなんです。ウォーターボールしか出せないけど…。」
「うーむ。見せるのは簡単だが流石に街中では迷惑が掛る。」
いや、正直-30℃の円筒形の氷塊80kgをマッハ0.9でぶつけるダケの魔法だ。
未だ他の魔法使いに見せて確認したことが無い。
違う魔法だと。見破られる…、俺がアイスジャベリンが使えないコトになってしまう。
サーチして患部を探す。
うむ、腕の裂傷ダケだ。
手当てが良いのか炎症を起していない。
クリーンの魔法を掛けヒールを行なう。
「これは…。」
「治癒魔法!!」
「やべぇ!!ムロが光る。」
「うむむむ、」
治療して誤魔化す。
「この程度の魔法使いだ。応急手当てが良い。適切に清潔を保てば時間で治るが…。まあ、良いだろう。」
「ありがとうございます。」
「やべぇ誉められた。」
「怪我をした時は患部を良く冷水で洗い流し。あの集めている草を揉んですり込むと化膿しずらくなる。」
「そうなんですか?」
「ああ、研究の為に集めているが…。未だ足りない。君たちの働きに期待しているのだ。」
「なるほど…。いえ、申し訳ありません。何であんな草集めているのかと…。」
「お金になるなら何でも良いんだけどな。」
「やべぇ!草をあんなに高く買うのは悪いコトに使うのかと思ってた。」
「おいおい、妹よ毒草も薬の内だ。」
「うむ、そのとうりだ。まあ、モノに成るか解からんが、学問は人の為に役立つコトをしなければならない。」
応用が大事だからな。
「おれ、魔法学園に入りたかったんです…。」
魔法使いのムロが告白する。学園に憧れが有るのか?
「まあ、学問はドコに居ても何歳からでも始められる。続けるコトが大事だ。ソレには目的を決める必要が有るが…。」
「よっし、おれ何時か魔法学園に入る。」
「やべぇ!ムロが抜ける気だ。」
「おいおい、辞めるのかムロ?」
「うむ、自分の道を進むのだ。」
「いや、未だ金が足りない。稼ぐ。でも、目標が出来た!!昔、試験には落ちたけど今なら行ける気がする。」
「やべぇ、ムロがやる気だ。珍しい。」
「実技で落ちたんだ…。昔は発動しないコトが多かったけど。今は失敗することは無い!!絶対行ける。」
「なるほど…。」
コイツはDタイプの成れの果てか?
今は魔法使いとしては正常の範囲だ。
恐らく訓練すれば並程度にはなるだろう。
やはり何らかの…。魔法使いとして成長が遅い個体が居るのは間違いないようだ。
店には、ねじっていないロープ30尋数本と蒸留酒を樽で注文した。
自分で手に入れても良いが。
商売をやっているなら手に入る先も知っているハズだ。
イレーネの用事は…。また今度。と妖しく微笑んで居たので。
また今度一人の時に行こう。必ず行こう。
(´・ω・`)オットー君の言う”並の魔法使い”は教授のコトです。(完成した魔法使いを教授以外、見たことが無い。)
(´・ω・`)ほら、町のラーメン屋行くと、偶にチャーハン小が他の店の大盛りみたいなことが有るでしょう…。
(´;ω;`)ソコしか行って無いと。他の店のチャーハンの量に衝撃を…。逆も又しかり。




