200.極地
食堂に向かうと未だ札が大半掛っている。
今日は随分と揃っているな…。
乳タイプ兄弟の札は無いがマルコとフェルッポ、アレックスの札が有る。
と言うコトは戻って居るのか?
サロンを覗く。
いた、3人揃って丸テーブルを占領している。
「やあ。オットー昨日ぶり。」
無駄な前髪が話す。
「やあ、アレックス。今日は随分と混雑している。このせ…。いや、形式は止めようどうせ直に順番だ。」
「そうだな。オットー。」
「僕たちさっき帰って来たんだ。」
マグを収納から取り出しポットのお茶を注ぐ。
「そうか、何か起きなかったか?」
「ううん、特に何も。」
「ああ、迎えの兵が多かったな。」
「そういえばそうだったね。」
「そうか…。」
一応こいつ等は良い所のぼっちゃんだ。
それなりに気を使っているのだろう。
「何か有ったのかい?オットー?」
「いや、特に…。街道が物騒だと言う話だ。」
「うん、ぼく。聞いた。東の草原で何か凄い魔物が出たって話し。」
「ふん、噂話だろ。天から光が落ちて草原を焼くなんて馬鹿げた話だ。」
「兄さん、空からの攻撃で草原が広範囲に焼かれて…足跡が無いんだよ?絶対にドラゴンだよ。」
「そうか…。ドラゴンか…。見てみたいな。」
確かにゲームでドラゴンは出てきた。
俺の魔法が果たして通じるのだろうか?
装甲があの世界の戦車並なら勝ち目は無いだろう。
「僕も聞いたよ、それでね?オットー。一つ聞こうと思っていたんだ。」
「なんだ?アレックス。」
「この前、学校を休んで旅に出てた時って…。ドコ行ってたの?」
「うん?依頼の話か?東の森の手前だ?」
「魔法使った?」
「ああ、熊と狼が出たからな。」
「なんてこった。」
「え~、ドラゴンじゃないの~。」
コメカミを揉むマルコに残念がるフェルッポ。
「いやいや、使った魔法は必要最小限の威力しか出してない…。連射はしたが。」
「そう、良かった、心配事が減ったよ。じゃあ、僕順番だから行くよ。」
「「いってらっしゃい、アレックス」」
アレックスが席を立ち嬉しそうに食堂に向かった。
「オットー、何の魔法使ったの?」
「何時ものリングと岩溶かしたヤツだ。何も無い場所だから遠慮しなかった。」
「遠慮しろよ。」
困った顔のマルコ。
「どうせ目撃者は居ないんだ。喋らなければ誰も知らないさ…。」
「なんだ…。オットーか…。ドラゴンだと思ったのにな~。」
「いやいや、フェルッポ。ソコは残念がるな。」
「そうだぞ弟よ。そんなモノ出たら大騒ぎだぞ?」
「もう大騒ぎになってるよ?オットーどうするの?」
「どうもしないさ。」
お茶うま~。
「え?」
「フェルッポ、どうせ皆何言っても信じない。このまま何も無ければソレで終わりだ、誰も思い出さない。」
「そうか~。」
「そうだ、弟よ、もうその話は無しだな。俺も忘れる。順番が来たから行くよ。」
「兄さん行ってらっしゃい。」
「お先にそうぞ。」
マルコが食堂に向かう。
「フェルッポ、ドラゴン出るのか?」
「オットー、昔話だよ?デイビスが倒したって。伝説。」
「そうか…。伝説か…。」
魔王が…。悪魔が出てくると中ボスで出てくるんだ。
経験値と金のボーナスキャラだ。
あと、ゾンビドラゴンも…。コイツは金にならない。
新鮮でないのが問題なのか…。
「もう人族で二百年倒した話は聞かないよ?北の山脈の向うの白くて闇の世界しか居ないって。」
「白くて闇の世界?」
「うん、物語の話。1年で…。いや、数年に一回しか日の出ない場所が北に有るんだって。」
なるほど…。極地か…。
「そうか…。」
「オットー?驚かないの?」
「あ?ああ、そういう場所も有るだろう。」
「うーん。皆にこの話をすると馬鹿にされるんだけど…。オットーは信じるんだ…。」
考え込むフェルッポ。
「条件が合えば起きる事だ。」
「そうなの?」
「その条件の場所を調べれば…。いや。ココからドレだけ離れているか計算できるかも…。」
「凄いねオットー。どうやって?」
他の生徒が迷惑そうな顔を向けている。
恐らくフェルッポの次のヤツだ。
「考えておく。次の講義の内容にしよう。フェルッポ時間だぞ?」
「うん?ああ、解かったよオットー約束だよ?」
「いってらっしゃいフェルッポ。」
手を振ってフェルッポが食堂に向かう。
その後を続いて、迷惑そうな顔の生徒が食堂に向かった。
やれやれ、極地か…。
数年で一度しか日の出ない土地。
高い山で遮られているのか、この惑星の扁平率が高くて日の当たらないのか…。
この世界のコトを知っても良いかもしれない。
ソレには証明が必要だ。
大掛かりな実験だな…。
「そうだ…。俺には協力者が居ないのだ…。」
最後の生徒が席を立った。
食堂に向かう。
そうだ、学校はコネを作る場所なのだ。
群れる仲間も。
ボッチの男も。
全ては社会と言う荒波に耐える仲間なのだ。
共に進む。心を許す。迷惑を掛、迷惑を受ける。
俺は誰を…。
協力者にすれば良いのだ?
この先生きのこるために。
(´・ω・`)きのこる。




