195.クレープ屋
武器屋を出て路地を進む。
隠者が剣20本担いでいると流石に目立つ。
俺は”ベンケイ”では無いのだ。
V・P”九郎”と会う前にコッソリ収納する。
1000体倒すとウィルスが出てくるなんて悪魔の仕業だ。
武器屋の親父と話が弾んで意外に時間を使ってしまった。
もう昼食の時間だ。
ドコで飯を喰うか?
俺は一人飯が多かったが流石に一人で見知らぬ店の暖簾(比喩的表現)を潜るほど度胸は無い。
困った。
丁度メシ時に並んでいる列が有ったので並ぶ。
屋台では無いが軒先で何か食い物を売っている様子だ。
どちらかと言うと荒っぽい外見の男が多い。
冒険者風の男や荷受屋等の体の張った気の荒そうな男達だ…。
さぞガッツリ系のメシなんだろう。
何故か皆静かに並ぶ。
恰幅の良い女将が銭を受け取り何かを渡している。
テイクアウトなのか?
受け取った男は嬉しそうにかぶり付いている。
なるほど旨そうだ。
注文する声に集中する。
「肉とチーズ。料金そのままで大盛りな?」
「あんた、いっつも言ってっけど大銅貨出しな!!」
「へへへ、小銅貨7枚でガルムたっぷり。」
「ちっ、大銅貨出しな!!ガルムの追加は銅貨8枚だよ!!景気の良い時に来な!!サービスしてやるよ!!」
随分と気風が良い客と女将だ。
なるほど…。普通が銅貨7枚でつゆダクが銅貨8枚、大盛りが大銅貨(銅貨10枚)か…。
近くなるほど客が無言になる…。
おい!何か話せよ!!情報収集できないだろ?
俺の番になった。
「アンタ何にするんだい?」
「大盛り二つだ…。」
恰幅の良い女将が廻す鍋の手が止まる…。
「大銅貨2枚です…。」
無言で大銅貨2枚を渡す。
女将が手早く鉄板に灰色の生地に肉と芋、チーズを乗せ鍋のソースを掛けて生地を包む。
熱でチーズが溶けるようだ。
なるほど…。クレープの様な物か…。
「どうぞ…。」
二つのクレープを受け取る。
「うむ、ありがとうございます。」
軽く頭を下げそそくさと立ち去る。
辻の角を曲がる時、店を見ると、客も店員も俺の方を見ていた。
俺は異物だったのか?
受け取ったクレープに齧り付く。
うん、悪く無い。
たぶん蕎麦のクレープだ蒸した肉と芋、溶けたチーズ。塩辛いソースに良く会う。
何の肉かは解からない。
生地はソバと麦の様子だ。
ハーブが有れば最高だ。
二つを軽く平らげる。
さて、インクを手に入れよう。




