192.会敵(タリホー)。2
「あんたスゲエな…。」
親方の賛辞に頷いて答える。
「まあな。アレを倒したのがウソで無いのが解かっただろう?」
干してあるブランの父親を示す。
「あ、ああそうだな。コレが魔石と牙と爪の類だ。」
書類にサインして受け取った巾着をそのまま収納する。
”巾着(魔石特大:1 魔石大:1 魔石中:12 支配者の牙:4 支配者の爪:20)”
よっし魔石大きいのゲット!!
しかし、ブランの父親だ使い道に困る。
オーガは100%魔石で中か…。コレは良い。見敵必殺だな。
オーガの里でも探すか…。
「たしかに…。」
「支配者の狼の毛皮は月の初めには出来上がる。出来れば早めに取りに来てくれ。正直、ああ言うのは困る。」
「俺が…。まあ、良いだろう。早めに取りに来る。」
俺のせいでは無いのだが…。
言っても仕方ない。
「ソレとアンタの取り分だ。」
新たに巾着を出してきた。
ああ、さっきの賭けか…。
受け取り重さを確かめる。中には金貨数枚は在りそうだ。
「余り気持ちの良い金では無いな。」
「そうだろうな、使っちまいな。パーッとな。」
兵士から巻き上げた金だ。
力で奪ったものでは無い、使っても気分は良くない。
収納する気にも成らないので手の平でお手玉してもてあます。
書類束を持って作業場を出ると未だ裸執事がorzしている。
ウザイなコイツ。
「よう、冒険者、なにしてる?」
「放って置いてくれ。俺は、もう何も出来ない、ドコにも行けないんだ。」
うん、主人公に絡むウザイ裸執事だが落ち込むとすごくウザイ。
右手の手首を手で握っている。
そのまま拳を振るえばマノウォーだ。
そうか、さっきので傷めたのか。
屈んで肩に手を置きサーチする。
「冒険者で稼げば良いだろう?」
「俺は…。冒険者だったが。ヒザに矢を受けてしまってな…。」
なんかその言い回し。ドコかで聞いたな…。
「そうか…。」
なんだったかな?
思わず首を捻る。
やおいの裸執事を詳しくサーチする。
確かに膝の関節。特に皿の骨に変形がある…。
勿論一発で直せるだろう。
この程度は問題ない。
俺、足ばかり直してないか?
でも…。コイツ直しても何もイベント起きないし。
「歩く事が出来ない冒険者なんて!!門番ぐらいしか仕事が無い!」
慟哭を大地にぶつけるやおい執事。
ソコラ辺もお約束なのか?
コイツが門番に成って冒険に出る度に聞かされるのもアホ臭い。
「そうか…。では直してやろう。」
はいはいヒールヒール。コイツ腰の軟骨も痛めてるからヒール。
コレで手首の捻挫も足の皿も軟骨も問題なし。
「何をいって…。」
驚いた表情のやおい裸執事。
膝を付いていても痛くない様子だ。
「直したぞ、お前のヒザと手首。」
「どうやって…。」
驚くやおい。ヒザを付いたまま、自分の身体の状態を確かめている…。
なんでポージングする?このはだか執事?
「俺は、魔法使いだ。怪我ぐらいは治せる。」
「あんた…。」
「冒険者のオットーだ。」
手を差し出す。
手を掴み立ち上がる。やおいの裸。
「元執事のマルダーだ。」
「コレで何でも出来る、ドコでも行けるだろう?」
「そうだな。この借りはどうすれば良いのだ?」
「ああ、そうだな…。」
考える。正直、コイツが学園に居るとウザイ。
100%主人公の味方をする。
どっか遠くに行ってくれないかな…?
「なあ…。」
ほら、必要ないのに上半身裸でポージングし始めた。
よし、決めた。
「俺は10年以内にデカイ仕事をする…。」
「なに…?」
「デカくて危険で…リターンの多い仕事だ。その時、腕の立つ冒険者が沢山必要だ…。」
「解かった。俺に任せろ。」
ポージングを替える裸やおい、殴りてぇ。
「未だ、先の話だ。その時、指名依頼を出す。まあ、受けるかはリスクを考えて判断してくれ。」
「そうか。必ず受けよう。クラスAの冒険者マルダーだ…。役に立つぜ。」
元冒険者では無いつもりらしい。いや、元やおい裸執事が受けとか言うなよ…。
「そうだな。期待している、しばらくはあのおっかない姫様の居ない所へ行った方が良いと思うが…。」
ほれ、学園から去れ。ウザイから王都から出て行け。
「その通りだ…。しかし、手持ちが…。」
金持ってないのかよ!!この裸!!!
「ほれ、持ってけ。支度金だ。」
手に持っていた巾着を投げる。
受ける裸やおい。
「いいのか?」
裸で言うな、その台詞。
「ああ、将来の依頼料から差し引くからな。」
「解かった借りておく。」
裸で立ち去るやおい冒険者の背中を見送る。
コレでウザイ敵キャラが一つ消えた…。
俺は未来を変えるコトに成功したのだ。




