185.馬匹2
馬屋に付いた。
ベスタに馬具を渡す。
「馬の予約をしていた者だ。馬を見に来た。」
暇そうな牧童は俺の顔を見て…。いや、コイツ。ベスタの胸で思い出しやがった。
乙π星人なのか?
「ああ、はい、馬は届いています。コチラにどうぞ。」
厩舎に案内される。
中は閑散としている…。
馬が居ないからであろう。
稲藁すら敷いていない綺麗に掃除してある。
しかし、獣特有の匂いが充満している。
ベスタは深呼吸していた。
肩に掛けた鞍が誇らしげだ。
馬に乗れるのがそんなに嬉しいのか?
「この馬と隣りの馬です。」
「ふむ。良い馬だな。」
何か性格が悪そうな目をしているが…。
馬のコトは良くわからんが。
取り合えず誉めておく。
「ええ。大きい方は男が触ると噛んだり蹴ったりします。女、子供なら問題無いのですが。」
「そうか…。」
馬のつぶらな目を見る。
「この馬は元々乗馬なのか?」
ベスタが質問する。
「はい、大きい方は馬車引きは後からですね。繋がれていると大人しいです。蹄の手入れや汗を拭く時は繋いでやります…。頭は良いので道具を見せれば大人しく男でも触らせます。下手だと蹴られますが…。」
なるほど…。よく解からんが馬としては問題無いようだ。
「牧童殿、乗ってみてよいか?」
「ええ、どうぞ。今、用意します。」
ベスタが馬の顔を撫で目を見ている。
担いだ馬具を見せ匂いを嗅がせている。
スンスン臭いを嗅ぐ馬。
興味を無くしたらしい。
牧童がハミを持ってきて馬に見せる。
大人しく口にくわえる。
ベスタが馬の背に布シートを敷いてその上に鞍を載せる。
見たこと無いな…。
「ベスタ、その布は何だ?」
「鞍敷です、作りました。」
「なるほど…。」
わからん。
「この鞍は乗せる重さに合わせて鞍敷の厚さや硬さを代えるのです。無いと馬が嫌がります。」
「あのビラビラの布か?」
「恐らくそれはカバーの方だと思います。装甲兵が乗る場合は鞍敷を何枚も重ねます。貴族は皆家紋入りのカバーで覆い固定して飾りを付けます。」
なるほど…。帝国騎兵は絵で見たこと在るがあの鞍の下の家紋布は只の飾りでは無いのか。
布に見覚えが在る。
テーブルクロスだ、廃棄する布をベスタが夜なべしてちくちく縫製したのであろう。
手早く真剣に鞍を付けるベスタ、ベルトを引っ張り固定を確認している。
「では、外に出ましょう。」
牧童が手綱を引き歩いて馬を誘導する。
ソレに付いてある…。
馬がちらりとコチラを見。
「むっ!!」
馬の後ろ足を避ける。
コイツ…。足癖悪いな…。
「なるほど噂どうりだな。」
残念そうな馬。
そのまま練習場に入りベスタが騎乗する。
牧童が手を貸そうとしたが一人で鐙に足を掛け綺麗に飛び乗る。
残念そうな牧童そのまま、柵の外で見ている俺に小走りで避難してくる。
人馬一体、走り出したくっコロ騎士。
楽しそうだ。
「いや、お連れさんなかなかの腕ですね。」
「ああ、馬とは長いと聞いている。」
「元々は騎兵の馬だったのでちょっと気が荒いんです。あそこまで乗りこなせるなら問題ないと思います。」
「馬車でもか?」
「ええ、馬は人を見るんです。言うことは聞くハズです。アイツもひさしぶりに人を乗せたので楽しそうだ。」
流石牧童。
馬の気持ちも解かるらしい。
小一時間ほど走ったベスタが戻ってきた。
ちょっと息が荒い。
くっコロ騎士もひさしぶりだったからな。
「良い馬です。問題在りません。」
馬から下りるベスタ。
手綱を預かる牧童が引く。
「そうでしょう。さあ戻るぞ。」
少し抵抗する素振りを見せる馬。
「大丈夫だ。又走れるから。」
馬に言い聞かせる牧童。
なるほど、馬との相性は良かったらしい。
馬屋につながれる馬。
「よし、商売の話をしよう。来週にも一度数日借りたい。と言うか三月ほど借り受けしたい。」
「はい。問題ないです。専属貸しだと、供託金一頭金貨10枚です、何時でもココに来てもらえば貸し出しします。その間は飼葉代、世話代馬房代が掛ります。一ヶ月、二頭で金貨5枚ですね。」
「解かった金貨35枚を一括で払おう。」
「え?持ってきてませんよ?、イタッ」
娘のデコに炸裂する。
収納から金貨35枚をだす。
「明日の日付からでよろしいですか?」
「ソレで良い明日から三月分だ。」
契約書を取り交わす。
裏表問題ない。
一ヶ月2頭で金貨5、木の割り符を持ってくれば期間中は何時でも馬が借りられる。馬が大きな怪我や紛失した場合は供託金が没収と言うコトだ。
さてコレで足が出来た。
経費は発生したのだ。
三ヶ月以内に何らかの利益を生む方法を見つける必要が有る。
そのまま馬車屋へ向かう。




