177.告白2
写本室で一番大きな部屋に入る。
大きいと言っても4m四方で壁が一面本棚のため、酷く狭く見える。
ムサイ男達が入ると息か詰まるぐらいだ。
中央の机を囲み椅子に皆が座る。
「オットー何を教えてくれるんだい?」
「今更座学ではなあ…。」
「そうだ…。」
「オットー何の話?」
「うむ、では。”物質”の状態から話をしよう。」
「”BUSI”って何だ?」
「先ず。例を挙げる。水だ水は液体だ、水を冷やすと氷になる。塊、つまり個体だ。沸騰すると消えて無くなる。正確には湯気、蒸気になって空気に溶け込む。」
「なんだ?今更そんな話か?」
「やれやれ。もったいぶってソレか…。」
酷く落胆する乳タイプたち。
「まあ、そう言うな。カール。ジョン。何故水を例に挙げたかと言うとイメージし易いからだ。冷えると、固体、加熱すると液体、さらに加熱すると気体。コレは良いな。」
「ああ、まあね。オットー。」
「そうだね。オットー。」
アレックスもフェルッポも呆れている。
「しかし、ソレは殆ど全ての物が当てはまる…。」
「全てとは?」
「水も空気も鉄も岩も金も全てだ。」
「…。それが…。どうなるんだ?」
マルコが口を開いた。
「俺は、ソレを利用して全ての魔法を行使している。」
「オットーは属性は無いと言っているのは…。」
「俺は7曜には分けていない。118の元素と4の力。ソレを魔力で各エネルギーに変換して魔法を構成している。」
「118も有るのか?」
「マルコそうだな。未だ在るかもしれない。無いかも知れない。」
「何ソレ?」
フェルッポは未だ呆れている。
「四つの力とは何だ?オットー。」
「そうだな。ジョン。重力相互作用、電磁気相互作用、弱い相互作用、強い相互作用。だな。」
「なんだ?よく解からないぞ?」
「まあ、下に落ちる力と、鉄が鉄にくっ付く力だ。あとは…物同士がくっ付く力。」
「何だソレは?」
「まあ、良いだろう…俺はそういう力を使って魔法を使っている。属性はあまり意識はしていない。では。無詠唱魔法の訓練を行なう。全員、マグをだせ。」
わかった、了解、は~い。
それぞれの言葉でマグが机の上に並ぶ。
「よし、では。マグに水を入れろ。」
皆、ブツブツと詠唱してマグに水を張っている。
そういえばそんな詠唱だったな…。
無詠唱ばかりだと詠唱を忘れるな…。
まあ、理論的には、鼻歌でもハミングでもタイミングと構成が正しければ発動するので問題は無いが…。
「よし、皆出来たな。では中の水を温めろ。まあ、スープの温度だな。」
それぞれが触れる程度の温度になった様子だ。
「よし、ではココからが重要な話だ。水が凍り始める温度を”0”としよう。沸騰する温度を”100”とする。正確では無い、条件により変わるが。コノ場の便宜上だ。」
「え?オットー何だって?」
「マルコ。便宜上の話だ。水が凍る温度が”0”で沸騰する温度が”100”だとすると、大体が平安時の人間の基幹温度は37程度になる。まあ、今、マグの中は40前後だろう。」
「…。」
「マグの中の水は量が少ないが、水に魔力で熱エネルギーを与えて水の温度を上げたのだ。」
実際は魔力で水の分子振動を加えている様子だがあまりイメージには関係は無い様子だ。
「では、マグの中の湯から加えた魔力を吸い出せ。さっき加熱した構成の逆を行なうのだ。回転をイメージしろ。」
「あ、冷たくなった。」
「うん。出来たな。」
「おいおい、出来たがこんな物何の役に立つんだ?」
「難しいな。」
「オットー、お湯にするより魔力を使っちゃうよ。」
アレックスと乳タイプは上手く行っている。
マルコとフェルッポは余り上手とは行っていない。
恐らく属性の…。苦手意識のせいだな…。
「マルコ、フェルッポ、ソコラ辺は、じっくり反復練習で熟れろ。イメージするのが大切だ。さて、今の使った魔力は体積応じて使用量が変わる。コレは…。まあ、結界の計算とほぼ同じと言っていい。係数が変わるが…。」
「ぼく、あの計算苦手。」
「フェルッポ。縦、横、高さ、四角で計算しろ。球形で計算するから面倒なんだ。勿論効率を考慮すれば球形の体積で考えた方が良い。」
「え?そうなのオットー?」
「魔力の無駄が増えるダケだ。魔法を多様する状況では危険だがシールドや結界は発動失敗するほうが危険だ。」
「オットーはどうやって居るんだい?」
「アレックス…。そうだな…。結界の発動点を前方に距離を見て右手に正立方体をイメージする。それの4.2倍の魔力だ。」
「え?そんなので良いの?」
驚くフェルッポ。
「そうだ、3.2で計算しているが実際は3.1415926と続く数字だ。乱暴な計算だから座学テストでやると失格だぞ?」
実際に球の体積は4/3πr^3だがこの世界は円周率を3.2で計算している。
建築関係は25/8を使っている様子だ。その為の簡単な計算表が有った。
車輪や水車等の回転関係は円周率と三角関数を理解していないと作ることは出来ない。
歯車はスプライン曲線だ。
まあ、およそ3では無いから問題は無いが。
この世界で精密な物を作るのが酷く難しい。
ドコかで職人を確保しなければ…。特に旋盤工を…。
「え??じゃあ、球の表面積は?」
「フェルッポ。球の表面積はウォータボールの発動でも使っているハズだ。両手で大きさを測って正四角をイメージして3.2の積だ。」
「え?」
「いや…。」
何故か全員が困惑した表情になる。
おかしいな?
そういう構成のハズだ。
「オットーは…。計算して魔法を使っているのか?」
「いや、計算しないと発動しないだろ?皆、お祈りの様に魔法を使っているが内容は計算結果の近似値ばかりだぞ?」
「え~。」
「いや、いや。」
「オットーの言うことだから正しいのだろうが…。」
「まあ、良いだろう。話がそれた。では同じ魔力を使ってマグの中の水から魔力を取り出してくれ。恐らく触れて冷たい程度なら…。20ぐらいかな?30引け凍るはずだ。」
実際は魔力で熱エネルギーを取り出しているのだが。
恐らく言ってもイメージできないだろう。
「あ、凍った。」
「凄い。氷が出来たぞ。」
「オットーはこんな事してたのか?」
「う~んうーん。上手く行かないよ。」
「むずかしいな…。」
カールは恐らく治癒魔法の素質が有るから出来るだろうと思った。
特に乳タイプ兄弟は俺の構成をよく観察している様子だ。
恐らくこの講習が終わるころには無詠唱は容易いであろう。
何せ毎回計算して結果を変えていると解かったんだからな。
器用なマルコが難しがるのは意外だった。
フェルッポは…、こんな物だろう。
アレックスは正直どうだって良い。
「さて、重要なコトだ人間は、いや生物は30~42ぐらいの間しか生きていられない。勿論魔法的な加護は無い状態の話だ。部分的なら問題は無いだろう。火傷になったり凍傷になったりする。」
「それがどうかしたのか?」
「生命の危険が及ぶコトになる良く気をつけて練習すること。沸騰した鍋を素手で触る様なコトになる。」
「え~。」
「そうなるのか…。」
「そうだ、何時か氷が出来ないと言っていたが恐らく心のどこかで危険を感じているのだろう。感覚だけではダメだ、計算を行なうのだ。」
「そうか…。計算か…。」
ジョンが考え込む。
「さて、解かったな?では話を進めるぞ、コレから話すコトは誰にも話してはいけない。俺の秘密の知識の一部だ。異端だとばれるからな。」
「いや、オットーが異端だとは全員知っていると思うぞ?」
カールが呆れて話す。なんだと…。俺はそんなに有名人なのか?
「そうか?誰にも文句言われたことが無いから皆知らないと思っていた。」
”言ったら消されるだろ…。”アレックスが突っ込むが無視。
嘗て記憶で書いた元素周期表を取り出しミソッカス共に元素の講習会を行なった。
自然科学、分子や原子、電子の話になる。
電気については何とか解かる様になった様子だ。
何故か電気はマルコとフェルッポの理解が早かった。
やはり、魔力系統が有るのか?
フェルッポは必死にノートを取っている。
おい、証拠を残すなよ。
まあ、一度に覚えるのは無理だから仕方ないか…。
(´・ω・`)参考資料:月刊ニュートン。




