166.父親代わり
さて、紋章はほぼ完成の域に達した。
俺はブランと店番をしている。
達したイレーネは奥で休んでいる。
歓声していたから疲れたのだろう。
身体強化も魔力拡張も別の拡張も思いのままだ。
すばらしい。感度も良好。俺に良しお前に良し。
個体差によって一部の変更は必要かもしれないが。
基本型でも効果は望める。
コレを持ってすれば司書ちゃん型の人も強力な魔法使いに…。
「あの、ご主人。」
賢者モードの俺にブランが尋ねる。
「どうしたブラン。」
「あのお母様の模様は何だったんですか?」
「アレは…。体を強化する呪文の紋章だ。」
「そんなモノ必要なのですか?」
「まあ、要らないな。しかし、俺の役に立つのには必要だ。」
「あの、ご主人、私にも…。」(パタパタ)
え?支配者クラスだから十分強いだろう?
それより獣に通用するのか?
ソレこそ実験の積み重ねが必要だ。
「まあ、ブランは今のままでも十分に俺の役に立っている。必要になったら授けよう。」
「はい!」
尻尾を激しく振るブラン。
ベスタのメイド服だったがやはり尻尾が窮屈だったらしい。
尻尾穴を開けてしまったのでブラン専用に成ってしまっている。
帽子で耳を隠したのが台無しだ。
まあ、良いだろう。寮にモノを届けさせるにはブランがこの服を着てこれば良いのだ。
”家の使いだ”と言っても通用するだろう。
黙っていれば。
「ただいま~。あれ?ブラン…。どこ行ってたの?ソレにその服。」
「トリーニアお邪魔しているぞ。」
「あれ?オットー様?お母さんは?」
「魔力切れを起こしているので奥で休んでいる。品物の草はもう既に受け取ったぞ。」
奥から物音が聞こえた。
「もう大丈夫です…。フフフ」
イレーネが出てきた。
「お母さん。大丈夫?」
「大丈夫ですよ。トリーニア、ブランも。心配をかけましたね?」
うむ、ツヤツヤしている。
「そ、そう。それなら良いけれど…。」
「お母様は凄いです。」
うん、凄かった。
「で、では揃ったので、薬草の姿絵を図鑑から写して来た。コレを使って覚えてくれ。」
「ああ、例の買取する薬草の話ね…。”薬草2”?」
「そうだ、薬師にも冒険者にもソレで通じるらしい。」
「わかりました。オットー様、コレで買取を持ちかけてみます。」
「うむ、頼んだぞ?」
「あ、オットー様聞いてください。ブランが夜な夜な家を抜け出してるんです!」
「そうですね、時々居なくなるんです。心配しますので注意してください。」
怒られるので耳がしゅーんとしているブラン。
「申し訳ありません。ご主人を探していました。」
「だそうだ、まあ、用事が有る時は必ずその服を着て訪ねよ。俺の配下の者には相応しい服装と言う物がある。」
正直、マッパで訪ねられても困る。
「はい、わかりました。」(パタパタパタパタ)
「ブラン、良い服を着てるわね。」
「おぼこは触らないで下さい。臭いが移ります。ご主人から頂いた物なのです。」
無表情だが得意そうな顔のブラン。
「まあ、まあ、ブランもオットー様から頂いたの?」
「はい、凄かったです。コレで私の群の順位も…。イタイイタイ、お母様、痛いです止めて。」
ペシペシ笑顔でブランをはたくイレーネ。
かなり怒って要る…。
「まあ、良いだろう。俺の女達なのだ。仲良くしろ。俺の役に立て。」
「えー。「「はい!」」」
うん、良い返事だ。
トリーニアは俺が父親代わりなのだ。
しっかりとした相手を見つけなければ成らない。
そうしないと草葉の陰のエンリケに申し訳ない。




