162.Ghost in the School V(高脂血症機動隊)
さて、食事が終わり皆一旦、部屋に戻って中庭に集合する。
アレックスは動きやすい服装に剣だが…。
マルコとフェルッポは通常の魔法使い装備だ。
まあ、良いだろう。問題は…。
「全員、集ったな?小便は行って来たか?それとカール、ジョン、戦争にでも行くのか?」
「え、敵だろ?」
「モンスターかも知れんのだぞオットー?万全の構えが正解だろ?」
乳タイプ兄弟はフル装備だ。
まあ、俺は何時もの狩りの姿にマントだが…。
「カール、ジョン。それにアレックス、夜は冷える。マントは必需品だ。」
まあ、マルコとフェルッポは魔法使いローブ(学園制服)を着ているので問題無いだろう。
「オットー僕、持ってないよ。」
馬で遠乗りする時どうして居たんだ?
「オットー。アレは動きづらい。」
「アレ付けて動くと汗を掻くんだ。」
「カール、ジョン、乱戦では無い。待ち伏せだ。夜風に鎧は体が冷える。マントを出せ。」
「「持って来てない。」」
くっそ。そんなモノ収納しておけよ。
急に雨が降って来たらどうするんだ?
仕方がないので防水布を適当な長さに切って3人に渡す。
白いポンチョに成るはずだ。
目立つかも知れないが、まあ動かなければ…。大丈夫か?
簡単に地形を説明して。
侵入者の行動予測を説明する。
合図等の事前の取り決めは集団での狩には重要なコトだ。欠伸をするアレックス。
おい!アレックス真面目に覚えろ!失敗するぞ?
ゾロゾロと裏庭に進撃する。
カールとジョンの鎧がガチャガチャと音を立てている…。
無論不用意に音を立てるのも問題だ…。
「カール、ジョン鳴り物を外せ。相手に見つかる。」
「コレは親父から貰った大事な剣だ。」
「オットー鎧に付いている。外せない。」
「カール、はばきか鯉口が磨り減っている、拵え屋に出せ。ジョン鳴り物に布を巻け。」
手でガタツキを押さえるカールと金具に防水布の裾を裂いて巻き付けるジョン。
「オットー、剣の手入れ位は自分で出来る。」
「ソレは日常点検ダケだ。有る程度使えば鍛冶屋か拵え屋に整備に出すのが普通だ。腕の良くて信用できる所を選べ。」
勿論、それなりの金が掛る。
冒険者の剣は使い捨てにする場合が多い様子だ。
多分ソレが節穴武器屋の樽に並んでいる。
中古で状態が良くないモノばかりだ。
高い剣が買えない駆け出し冒険者には丁度良いだろう。
俺のマネーロンダの元だ。
確かに節穴親父の発想は良い。
外装が良ければ高く売れるのだ…。
カールとジョンが布を巻き終えるを待ち再度出発。
所定の位置に分かれる。
マルコ&アレックスコンビ。カールとジョン。俺とフェルッポ。
カールとジョンは布の色が目立つので壁役だ。
退路の閉塞と捕獲は俺とフェルッポ。
マルコ&アレックスはバックアップだ。
アレックス…。イマイチ不安だがマルコが付いているから大丈夫だろう。
「オットー。」
「なんだ?フェルッポ。」
「虫が…。」
「虫除け塗ってないのか?」
「虫除け?」
「ああ、服にある種の草の煙で燻すと虫が寄ってこない。」
「…。やってない。」
「この匂いのヤツだ。」
袖をフェルッポに出す。
「うっこの匂いって。」
「そうだ、猟師や森に入る冒険者が良くやる。弱い魔物除けにも成る。」
単純にウサギや狼の鼻の良い動物は、コレを人間の匂いだと思っている個体も有る様だ。
猟師が偶に忘れて狩りに出るとウサギが良く取れる話を聞いたことがある。
但し、虫に喰われるのを覚悟しろと言う話だ。情報源は猟師仲間のタッポだ。
「この匂い、そういう理由だったのか…。」
「仕方ない。このタオルを使え。手や肌を擦って首に巻いておけ。」
洗って燻してあるタオルをフェルッポに渡す。
「うっ臭い。」
「我慢しろ、虫に刺されるとしばらく痒いぞ。」
「解かった我慢する。」
静寂が支配する暗闇に監視役のマルコとアレックスのボソボソ声が聞こえる。
内容は良く解からないが。
どうやらアレックスが飽きたらしい。
カールが頻繁に姿勢を変えている。
防水布は白色なので動くと目立つ。
カール。落ち着けよ…。
性格的にカールは待伏せには向かないらしい。
ジョンの表情が微妙だ。
暗くて解からないがたぶん微妙だ。
俺はGUIのマップモードでも監視しているが。
時々赤外線モードに切り替えている。
モノクルは暗闇だとぼんやり光る様子だ。
意外な欠点が出た。
改良しようが無い。
時間的にはもう現れても良い頃だ。
一応、寮の廊下の灯りが消えるまでの待伏せにしてある。
消灯時間で解散する、明日も授業だからな。
「オットー、」
「何だ?フェルッポ」
「喉が渇いた。」
水筒持って歩いてないのか?
仕方がないので飲料水用の水筒をだす。
「ほらフェルッポ。水筒だ。あまり飲むな小便が近くなるぞ?口に含ませてゆっくり飲め。」
「ありがとう。オットー」
一口だけだと言っているのに。
ゴクゴク飲むフェルッポ。
「オットーこの水おいしい。」
「ああ、”殺菌”と清涼用にハーブの葉が入れてある。」
「SAKINってなに?」
「あ~、水が腐らないように、ハーブが入っている。味も良くなる疲労が溜まると水すら飲めなくなるからな。」
水筒を見て考え込むフェルッポ。
「そうか…。」
水筒が帰って来たが随分軽い。
あまり飲みすぎるとイザと言うとき動けないぞ?
廊下の明かりが消えた。
時間だ。
マルコが合図したので集る。
「オットー来ないよ。」
非難がましいアレックスの目。
「どうやら待伏せがバレたらしいな。」
「どうやって?」
「カール、動くと、虫が驚いて鳴かなくなる。人の気配が有っても同じだ。待伏せは気配を消すコトから始まる。」
そうだ、気配を感じると弱い獣は逃げる。
殺気の場合は特に反応が早い。
「へ~なるほど。」
「そうか。解かった。」
「はやり獣人だったのか?」
「かゆい、虫に刺された。」
「まあ、待伏せされていると解かっているなら今日は来ないだろう。明日もう一度やってみるが…。」
「僕不参加で。」
「多分明日も外れだろう?」
アレックスの返答が早い。
カールは待つのに疲れた様子だ。
「カールそうだな、待伏せがバレた場合、もう来ない可能性が高い。明日は単独でやってみる。逆に良いかもしれない。アレックス。虫に刺された所はこの草を刷り込め。」
「ああ、僕にもくれ。弟よどうだ?」
「ぼく、オットーから虫除け貰った。」
「オットー俺達も刺された。必要だ。」
虫さされの草を渡す。
「じゃあ解散しよう。」
「「「了解。」」」
「ふぁ~オヤスミ。」
「では明日。」
アレックスの音頭で解散して部屋に戻った。




