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132.綿糸

興奮冷めやらぬ金物屋を出ると、少し悩む。

コレからドコへ行けば良いのか?

選択としては。

ゴミ屋街。

北の皮なめし屋と石屋。

エンリケの店。

の三択だ。

ゴミ屋街探索は時間が掛りそうだ。特に今、必要なモノは無い。ハズ。

北門近辺は二件回る時間が無い。

そうなると消去法で、エンリケの店だ。

エンリケの店に向かう。

店に着くと店内に誰も居ない。

声をかけると奥からイレーネが出てきた。

「おう、すまん、ブランの様子はどうだ?何か困ったコトは起きてないか?」

「はい、オットー様、特には。今、トリーニアとブランは納品に出かけています…。あの、オットー様お食事は?」

流石にコノ時間だ。

「済まない。もう既に食べてきた。」

「ああ、そうですか…。」

酷く落ち込むイレーネ。

「では帰って来るまで、お茶と菓子を貰おう。」

「はい、スグに用意します。」

明るい声のイレーネ。

ミルクをたっぷり注ぎ、甘い蜜を吸った。


賢者モードの俺。

約束された密溢れる土地とはどんなモノかに心を馳せる。

「ただいまー。あれ?オットー様。」

「おお、トリーニア。旅の準備は進んでいるか?」

「はい、進んでいますが…。」

不信な目を向ける娘。

「ご主人。このオボコが酷いんです!」

表情は変らないが尻尾は盛大に振るっている狼娘。

「どうしたブラン、何かあったか?」

スンスン匂いを嗅ぐ狼娘。

「あの…。あのオボコ。種付けもされてないのに偉そうなんです。」

「そうか。まあ、仕方が無い。ツガイが見つからない個体とはそういうモノだ。まあ、優しい心で対応するのが良い。」

哀れみの目を向けるブラン。

「お、オボコでわるいか~!!」

顔が真っ赤のトリーニア。

「あの、ご主人。やはり群の順位を決めるために私にも…。」

俺の袖を引っ張るブラン。

「あら、ダメよ?人の男盗っちゃあ?いけない子。」

ブランをペシペシ叩く笑顔のイレーネ。

表情レイヤーに青筋が立っている。

「ああっ、お母様。なんか怖いです、止めて。止めて。」


話が変な方向に行きそうなので話題を変える。

「そうだな、”凧糸”、いや、綿糸が欲しいのだが。」

「はあ?”TAKO”?綿糸は在庫はありますがどの太さでしょうか?」

「うーん、太さか…長いモノが欲しいのだが…。」

「トリーニア見本を持ってきて。」

「はい。」

奥に引っ込むトリーニア。

「大体のスピンドルの長さは30ひろぐらいです。それ以外は特注になります。」

「尋?」

「大人の男性が両手一杯に伸ばした長さです。ソコに印がある長さです。」

棚に印が付いて目盛りが振ってある。

1.8mぐらいか?

なるほど、ヤード・ポンド法なのか?尺貫法?意外に業界毎に使っている単位がちがうのかもしれない。

ソレも困った話だ。

まあ、一巻50m以上なら何とか成るだろう。

「はい、コレが見本です。」

トリーニアの持って来た見本は木の板に10cmぐらいの各太さの紐が打ち付けてある。

なるほど…。分かり安いな。どうやら線の直径ではなくより線の数で違っているらしい。

まあ、実験が必要だ。φ0.5、φ0.8、φ1.0の物を3個づつ購入する。

あまり高くない。いや、全部で銀貨一枚だから高いのか?

「あと、青い布が欲しい。黒でも良い。大量に必要だ。」

「あっ、青い布なら在庫が沢山在ります。」

喜ぶトリーニア。

「見せてみろ。」

「コレです。」

店の棚を示す、確かに大量に有る。見覚えの有る色だ。

「いたい!!」

「おおすまん、ムカつくデコあったので思わずやってしまった。随分と沢山在るじゃないか?こんなにどうした?トリーニアなぜ?こんなに沢山?」

「え、あの。」

目が泳ぐトリーニア。

「ご主人。これを染物屋に受け取りに行った時、オボコが”こまった”と言ってました。」

「ほほう、そうか、ブラン。トリーニア。詳しく話せ。」

俺は笑顔で質問する。

「あの、染物は出来るまでに時間が掛るんです。」

「そうか…。」(ロックオン)

「で、あの、包丁用の収納袋の材料に…。」(デコガード中)

「ハッハッハッハッ、大量発注したのか?だから包丁の最終発注の時に400と言ったのか?」

「え、あ、はい。そうです。(発射!)痛い!!」

デコガード如きで守れる物では無い。

床に屈むトリーニア。

「それ、痛い…。」

「イレーネ、包丁セットは何個売れ残っている?」

「70個ほどですね。今は偶に売れるぐらいです。」

「だ、そうだトリーニア、金貨350枚分の在庫だぞ?」

立ち上がるトリーニアに声をかける。

「ぎょ、行商で売り…。(ロックオン)止めて!!」

「まあ、良いだろう。残った包丁は油紙に包んで湿気の無いところに置いておけ。腐るモノでは無い。何年かすれば全て履けるだろう。」

「はい…。」

「布は全て…。いや、収納袋を買いに来る客が居るかもしれんな。一巻を残し全て買おう。」

「やった!!(発射!)痛い!!」

「ああ、すまない。生意気なデコが有ったので思わず…。まあ良いだろう。」

丈夫な青い生地を購入14巻購入した長さは19メートル無い。一個大銀貨1枚で金貨7枚だ。

今日は金を使ってばかりだ。早急に売れる物を開発しなければ…。

「さて、俺の用事を話そう。実は俺は今日、冒険者ギルドに採取依頼を出した。この店が受け荷と認定の場所にした。事後承諾ですまん。」

「はい、ココはオットー様のお店なので問題はありませんが?」

「確かにこの店には誰か居ますからね。」

「そうか、助かる。コレの採取依頼を出した。」

薬草辞典のコピーと実物を見せる。

「何ですかこの草」

不思議そうに紙を見るトリーニア。

「毒消しの草だ、ココでは検品して受領、冒険者ギルドの書類に数と完了サインをするだけだ。収納魔法で保管してくれ。」

毒消し草をスンスンするブラン。

「お腹が痛いときに食べる草ですね。」

「食べるのか?苦いぞ?」

「はい、食べてしばらく絶食します、二回寝れば直ります。」

「そ、そうか…。」

狼なら食べても良いのか?

「良く似た草に毒草は無い。少しむしって舌の上におけ、唾は飲み込むな。」

「うわ、何コレ…。」

「すごく苦いですね。」

「吐き出せ、コレが本物だ。冒険者は海千山千の者が多い。騙されるな。ブランは…まあ、匂いで分かるか。」

「はい、ご主人、匂いでわかります。」

無表情だが尻尾がパタパタ。

「収納魔法で保管してくれ、悪くなるのが遅くなる。ああ、イレーネには後で収納魔法のスクロールを渡そう。ブラン、お前は文字が読めるか?」

「はい、受け取ります、ブランは今、文字の勉強中です。」

答えるイレーネに尻尾と耳がショボーンするブラン。

あまり上手く行っていないのか?勉強?

「そうか…。一応渡しておこう。使える様に励め。」

「はい」

尻尾の振れが大きくなる。

「もし、冒険者が薬草を持っていたら買い取りを持ちかけろ。そのうち冒険者向けの道具を揃えれば何か売れる様になるかもしれん。」

「新しいお客さんですか?」

「そうだな、この店は御用聞き周りの仕事が多い様子だ、昼間しか来客は無い、冒険者と時間が被るコトは無いだろう。」

「やった!包丁セット売れ(ロックオン)…何でも無いです。」

「ギルドで聞いた相場では通常の薬草一束で小銅貨5枚だそうだ。数売ってくれるヤツには少しオマケしてやれ。まあ、一割割り増しで買取だな。」

「へ?良いんですか?」

「まあ、”学生さんが実験の為、集めている”と言えば向うも”ソンナモノだ”と思うだろう。」

「怒られないかな?」

「冒険者から直接買うことは黙認されている。が、多くは買い取れない。採取している冒険者なら薬草も採取しているだろう。全部は買い取らない。一部の買取だ。」

任務達成確認の後にギルドに向かうハズだ、多分未だ換金していない。

何時も入荷する冒険者がギルドに下ろすのを止めたらギルドもスグに気が付くだろう。

「まあ、それなら…。」

「無駄だと思うが、”ココだけの話。”と言えば口の堅い冒険者なら他の者には喋らないだろう。数は金貨2枚分で打ち止めだ。一応、金貨3枚分を託す。」

口の軽い冒険者は少ないらしいからな。

まあハゲが居ないだけマシだが。

「あ、はい、分かりました。お預かりします。」

イレーネに渡す。

「あの、その薬草ってドンナ形なんですか?」

トリーニアが聞いてきた。

そうだな。形が…。わからん。

「…。次までに調べてくる…。まあ、今日、貼り出したばかりだ。入荷し始めるのは明後日以降だろう。」

そうだ、今晩、フラン先生に聞いてみよう。


日が傾き始めたのでポーンで。

いや待て時間が有る。

イベントが起きるかもしれない歩いて帰ろう。


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[気になる点] 二回寝れば直ります。」 治ります
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