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130.拵え屋

冒険者の店を出ると。

気が重いが節穴親父の武器屋へ向かう。

路地で剣5本と刀身10本(布に包んである)を担いで武器屋のダャー★を潜る。

クソムカつく節穴親父の笑顔で出迎えられた。

「よう、丁度良かったな坊主。ダルガン。この方があの剣を打った方だ。」

節穴親父はカウンター越しの背の低い痩せた白髪交じり眉毛の太い頑固そうな爺に話しかけている。

おいおい、俺を有名人にするつもりか?

「親父、買取だ。」

ぶっきらぼうに答える。

「坊主、このへんつく爺がその拵え屋だ。」

「拵え屋のダルガンだ。お前さんの打った剣の拵えを作った。」

手を出されたので握手する、硬い職人の手だ。

「冒険者のオットーだ、学園の魔法使いでもある。」

「お前さんの打った剣はまあまあだな。」

肩をすくめるダルガン、それ程、機嫌が悪いわけではない、まあ、ヒネた性格なんだろう。一応合格点の様子だ。

「親父、どういうコトだ?」

「あ~、坊主が打った剣はダルガンに頼んで良い拵えにしてもらった。コレならもっと高く売れるぜ。」

親父が豪華に成った俺の売った剣をカウンターに出してきた。

検分する。

「チッ。」

「なんだ?話が通ってなかったのか?店主。」

「え?いや。」

睨む爺に焦る店主。節穴。信用できんな。

「ここの親父はイマイチ信用できない、趣味で剣を打ってる者だが腕の良い拵え屋を紹介しろと言った。」

「そういうことかい。」

爺を見る。納得したようだが、視界の外で節穴が”オイオイひどい言い分だな。”とボヤく

まあ、良いだろう。拵え屋としてはナカナカの腕の様子だ。

「おい親父、剣を買い取れ、」

剣をカウンターに置く。

五本並んだ剣に顔が綻ぶ節穴。

夢中で検分している。

「コレだ。」

呆れて話にならない。

「ああ、そうだな。お前さんの考えは的を得ている。若いがナカナカの者だ。」

同じく呆れる爺。

「人は若い古いは関係が無い。その場でミスを犯したかどうかだ。」

「おいおい、坊主、お前さんは見たままの歳だろ?まさか妖精種で俺より歳寄りってワケでも無いだろ?」

「そうだな、汎人種は寿命は同じだが成長は違うようだ。」

検分が終わり、ホクホク顔の節穴がカウンターに金貨100枚を並べる。

呆れる爺に語りかける。

「よし、本題に入ろう。ここに10本の刀身がある、サーベルだ。コレの拵えを頼みたい。加工賃材料代込で10本で金貨100枚だ。前金で払う、但し、他言無用の受け渡しはお前が俺に直接納品しろ。」

布に包まれた刀身10本をカウンターに下ろす。

1本を爺が拾い布を捲る。

「うっ、コイツは…。」

流石爺、一目で解かるらしい。顔色が変わる。

「そうだ、他言無用だ。」

「おいおい、俺にも解かる様に話をしてくれ。1本金貨10枚の外装なんてどうするんだ?金ピカにでもするのか?」

「コレをどうすれば良いんだ?」

驚く節穴を無視して爺に話す。

「5本は実用の地味なモノにしてくれ。そうだな軍の標準仕様で丈夫に作ってくれ。残りの5本は派手に作ってくれ。1本は赤で…。」

「ああ?赤?」

「そうだ、趣味が最悪のヤツが居るんだ。ピカピカにしてやってくれ。」

アレックスが赤い剣を欲しがっていたからな。

「好きに作って良いのか?」

「ああ、金の納まる範囲でな。あくまで実用の剣だ、お飾りじゃない。柄頭で殴ったら割れるようなモノは困る。戦地に立つ友人に送る剣だ。」

「解かった、この仕事を受けよう。何時までに仕上げれば良い?」

「そうだな…。年内。いや、年明け初めの月の終わりまでだ。届け先は札が付いているだろう。」

布に付いた札を読んで目が険しくなるダルガン。

「…。十分だ。良いモノを作ってやろう。」

「頼む。拵え屋のダルガン、腕を疑うワケでは無いが。コレは友人が命を預けるモノなんだ。」

「冒険者オットー、期待に見合った最高の仕事をしよう。」

節穴親父の前で爺と硬く握手をする。

置いてきぼりの武器屋の親父はタメ息を付いて肩を竦めている。

拵え屋は受け取った金貨100枚を巾着に入れ懐に仕舞うと刀身10本を大事そうに抱いている。

「さて。材料でも買うか…。」

安売りの樽へ向かう。相変わらず掘り出し物は無い。

「おいおい、また合わせて作るのか?拵え屋は紹介したんだ。刀身作って拵え作ってもらえば良いだろう」

「店主すまんが、しばらく仕事は受けない…。仕事が立て込んでいる。」

拵え屋の爺が言う。

「え?10本なんて20日も掛らないだろう?」

驚く節穴の親父。

適当に10本選んでカウンターに置く。

「親父、剣と言うモノは使う人と作った人の心が詰っている。親父の店で売るならココラ辺で十分だ。」

「ああそうだな。そういうモノだ。」

「おいおい、酷い言い分だな。」

納得する爺と抗議する親父。

「人が人に送る剣と売る剣は違うというコトだ。」

銀貨一枚を出す。

「そうか、人が人に送る剣か…。すまんな、店主、冒険者殿。用事を思い出した、ココで失礼する。」

爺が包みを抱えていそいそと店を出る。

「お~い、今度は…。いっちまった。なんなんだ?」

カウンター越しに背中に話しかけるがダァー☆が閉まり、諦める武器屋の店主。

「おい、店主。人の記憶は思い出すコトができるんだ。思い出したら止まっていられないコト有るだろう。」

俺の記憶も何時か思い出せるのだろうか?

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